一章8話 姫様の居場所
「相変わらず、汚いなぁ、皆さーんお待ちかねの騎士様ですよ」
ボロボロのバーに響く。
ボロボロの荒くれ者が不機嫌そうに集まって来る。
「情報は集まったか?」
「おいおい、まだ一日だぜ。集まるかよ。ヘッ」
太々しい態度から嘘と伝わる。
「へぇ、そうか。もう一戦遊べるドンってやつだな。」
フツバがニヤッと笑いながら剣に手を持っていく。
荒くれ者達は傷が痛むかのような顔をした後、観念する。
「チッ、ここの先行ったところに姫様を見たやつが数人いたよ。誰かを探してたらしいぞ。今はそいつと一緒かもな。」
「それで以上か?」
フツバはいつの間にか座ってジュースを飲んでいる。
「あぁ、以上だよ。」
「本当に?」
ここの情報力ならば一人の情報ぐらいは一瞬で集まると聞いていた
故に嘘だと分かる。
鋭い片方の眼差しで睨みつける。
その眼光から本能的に危険を察知したのだろう
「ハァ、ここから少し西に行った所を教えた奴が居たよ。そこに向かっただろうな。それも昨日の夜の事だから、着いてたとしても、まだそんなに時間は経ってないだろうな。」
イラつきながら言う。
「そうか、ありがとな。じゃ、悪さすんなよー。君たち想像以上に真面目に情報集めてくれたしまた来るわ。」
ジュースを一気に飲み干し、手を振って歩きながらバーを出る。
「二度と来るんじゃねぇ!」
バーにいる大半の者が起こりながらもう誰もいない出口に瓶を投げる。
一人になったフツバは
「急がないとやばいかもなこれは」
フツバが少し屈み、足に思いっきり力を入れて本気で走り出す。
壁を蹴り屋根に登り、屋根を飛んで乗り継ぎながら詰所へ近道をする。
王都の西に集まるなんて、理由は一つしか無い。
そこは騎士団が最も手薄な場所更に、その近くには墓地がある。
アルバの情報が本当ならばそれも納得がいく。
この王都を出るなら、確かにそこに行くのが確かだろう。
だがしかし、姫ともあろう人がそんな所に行けば殺される可能性が跳ね上がるのは確かだ。
基地に着き大声で隊士を呼ぶ。
「おーい、だれかいるだろ。頼む来てくれ急ぎのようなんだ。」
「どうした、フツバ。今、丁度メルトが帰ってきた所なんだよ。で、そんなに急いでどうした?ルール上、手は貸せんぞぉ」
ガスが若干酔った状態で出てくる。
「じゃあガス、お前は俺の試験と姫様の命どっちが大事だ?」
一瞬にして酔いが覚める。
「なっ、お前の言ってた通り姫様と中佐の事件に関わりがあったのか。場所はどこだ?」
「あぁ、まだ騎士団が手薄のここから西に行った所だ。用意が出来たらすぐ来い。俺は先に行ってるから。」
フツバはすぐに基地を走って出る。
ただひたすらに急ぐ、一応は西エリア基地が担当している場所で姫様が殺されては一大事だ……否、フツバが急ぐ理由はそんな、くだらない事ではない。
「急がないと、アイツと姫様が出会ったら終わりだ」
ひたすらに走る。
普通の騎士なら10分以上はかかる所をフツバはものの4分で着く。
腐った臭いが当たり一体に漂っている。その臭いの根源は目に見えて分かる。
人だかり、いや死体だかりが出来ている。
フツバは急いでそこに向かった。