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四章31話 剣対柔


「えっと、フツバが強い人に当たるのは、」


 ライラがトーナメント表を見ながら指でフツバから決勝まで指でなぞっていく。


「って、あれ。アンタ決勝までは安泰じゃない」


 ライラが誰を強い人として扱っているのか分からないがライラ目線ではフツバは決勝まで余裕らしい。


「簡単に言ってくれるなよ」


 フツバが手首足首を回しながらライラの甘い未来予想図を否定する。

 

「あんな青髪やろうに負けるフツバさんじゃありませんよ!コテンパンのボッコボコのブッチブチのぷっちょぷちょです」


「なんか最後は美味しいお菓子になってたけど、マジでアイツは強いらしいぞ。前回は出てなかったらしいけど強いみたいだ。まぁ、明日になっちゃったけどな」


 フツバが安心のため息なのか残念のため息なのか分からないため息をする。

 そう、実は十空戦一回戦一試合目はまさかの延期である。

 その理由は、


 二人が握手し、殺気を飛ばし合う。

 そんな時クトゥルが口を開く。


「本番は明日にしようよ」


 煮えたぎっていた観客に冷水をかける。

 

「逃げんのかよー」


 観客から先延ばしにしようとするクトゥルを挑発する声があがる。


「お前達は本当にバカだよな。お前達も見たんじゃないのかあのバンとフツバの戦いを。あんな激戦の傷が一日で治るとでも思っているの、か!」


 クトゥルが空いている方の手の人差し指をフツバの腹へと突き刺してくる。

 それは昨日バンに風穴を開けられた場所だ。

 フツバがその場に膝を突く。

 

「どちらかと言えば助かるのはコイツの方だよ。俺はこんな穴が楽器のように空いたコイツと戦おうとは思わないよ。わざわざこの大会に出たのにコイツの本気と戦えないってのも一周回ってダルいからね」


 クトゥルのこの意見には賛成の者が多く一試合目の延期は多数決により決まった。

 本来十空まで勝ち上がって来たのなら予選がどれだけ苦しかろうと戦うのが基本ではあった。

 しかし、今回の損傷は天井は無くなり地面はボロボロに砕ける程だ、不利なんてレベルの物ではない。


「それにしてもアイツ絶対に腹突く必要なかったよな」


 フツバが腹を指で抉られた事をぶり返しクトゥルを愚痴る。


「確かにあれやる必要は無かったですね」


 アトラもクトゥルのあの行動が延期に必要なかった事を理解する。

 そして今回は特別に全組み合わせがもう発表された。

 ここに載っている時点でフツバが苦戦を強いられるレベルなのは間違いないだろう。

 

「一試合目(二試合目)始まるから行こうぜ。こっから全員強ぇぞ」


 フツバ達は試合が行われる場所へとゆっくり向かって行く。

 その会場の方向から歓声が湧き上がっている。


「まっずい!もう始まっちゃってるんじゃない」

「あぁ、急ぐぞ」


 フツバ達が喋り過ぎて着くよりも先に試合が始まってしまっている。

 会場は十空戦専用会場。

 この広い空間にも一つしかない。

 予選の物よりも二回り程大きく、外周の壁からは水が垂れ下がっており天井も高い。

 内装は緑を中心とした鮮やかな色合い龍や角と牙、翼も生やした謎の生物に、白い羽を生やし頭上に光の円が付いた顔面は醜い謎の生物。

 内装の凝り方も何段階も違う。

 それでも戦う場所が会場の中央というのは変わらない。

 戦場も二回り程大きくなり、そこでは今前回三番手のメルティとソウジロウが熱戦を繰り広げている。

 刀身が1メートル以上もある長刀を縦横無尽に振り回す。

 それにソウジロウは硬手術を使い弾き返しながら自分の間合いに入れれる隙を伺う。

 二回り大きくなった会場を有意義に使い、会場の端から端まで使う。

 メルティのあまり大柄でもない体格からは考えられないその刀捌きに加え美貌、男達は虜である。

 しかしそんなメルティがソウジロウに真っ直ぐ刀を振り下ろそうとした時ソウジロウが今までの躱す動きとは別の動きを取る。

 片手を前に出し、縦に振り切ろうとするメルティの刀を摘み止める。

 突風が吹き、戦いは新たな展開を迎える。

 ソウジロウが手首を僅かに曲げると、メルティの体ごとソウジロウが曲げた方へと持っていかれる。

 その全力で曲げた訳でもないにも関わらずメルティは抵抗できない程の力が加わる。

 そして次なる一手は一瞬の間だった。

 ソウジロウの張り手がメルティの顔面に直撃。

 そのまま反対側の壁まで飛ばされるメルティ。

 刀はソウジロウの手に残ったままだ。

 摘んでいただけのはずのソウジロウ、恐るべき指力である。

 メルティの顔面の張り手は美しい美顔を損なわないかと男達は心配そうに見るが、メルティは難なく立っている。  

 ただ頭からは少し血が流れている。

 

「やるではないか、ソウジロウ。噂に聞いていた通り素晴らしい技量だな」


 メルティは嘘偽り無くソウジロウを称賛する。

 防御無しに一発食らわされたというのはやはり認めざるを得ない。

 

「私なんてそれ程の者ではありませんよ。上には上がいます。これでやっと柔術家としてはスタートラインです。弱い三十の男が二十にも満たない少女を痛ぶるのはなんとも大人気ないですしね」


「ふん、容赦ない張り手を顔面に一撃食らわせておいてそこまで謙遜されてもこちらとしてはムカつくだけなのだがな」


「おや、アナタはあれが全力かとお思いなのですか。だとしたら三番手の名が泣きますね」


「ふん、安心しろ。私もまだ本気どころか自分の流派さえ使ってはいない。ソウジロウも本気で来い。後悔するぞ」


 水斬流として紹介されていたメルティだが確かにまだ一度もそれらしき物は見せていない。

 フツバとバンの時もそうだが最初から本気でぶつかり合うことはそうそうない。

 

「刀は返すとしましょう」


 ソウジロウは摘んでいた刀を上へ投げ柄をキャッチする。

 そしてそのままメルティに向かって投げつける。

 それは渡すというよりも攻め渡すと言った感じだ。

 メルティは首を横に曲げ横に刺さる刀を避ける。

 これといって焦った様子はなく避けている。

 メルティは抜き取り、刀を体の周りで振り回し、ソウジロウに鋒を向けて構える。


「水斬流、メルティ参る!」


「しがない柔術家、ソウジロウ参る!」


 剣術と柔術がぶつかり合う。

 

 

 

ちなみにソウジロウが最強祭に出だしたのは前回からです。それまでは修行の身として籠っていました。

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