表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/217

四章30話 煽り仲間

今、章まとめや自分で全部の章のノートを作っていたりと色んな事を同時進行でしてるので一話一話に時間がかかるかもしれません。

その二つに絞るために新しい話を書くのを中断しようかとも思いましたが流石に開きすぎるという事で投稿もつづけます


「おい、クソガキ。お前昨日最後の最後まで残ってなかったのか?」


「え?だってバンが負けたからもういっかって。あれは夢じゃねぇよな。あんなド派手な夢があるわけねぇよな」


 クソガキの記憶では確実にバンはフツバに負けて落ちている。

 二人ともその時の怪我がまだ残っている。


「フツバとバンの戦いが終わった後一つ問題が起きたんだ。あそこにいる二人、分かるか?」


 レイゼが下の目、鼻、口の位置から何から何まで一緒な二人を見る。

 

「あの人達は双子のカクさんとガリさんだっけ?」


「そうだ。今回は奇跡的にあの二人が最後まで残ったんだ。そしたらまぁ同じ動きをするんだ。その結果どうなったと思う?」


 クソガキがカクには左頬、ガリには右頬に痣がある事に気づき、結末が見えた。


「まさか、相打ちか?」


「大正解だ。コイツら倒れるタイミングの何から何まで一緒。そんで終いにはな。お前らどっちが十空行くべきなんだっけ?」


 レイゼがこの不運な出来事の最後として二人に質問を投げかける。


「カクが行くべきです」

「いえいえ、ガリが行くべきです」

「いーや、カクです」

「ガリです」


 とお互い譲り合う。

 全く同じ顔の二人が言い合っているのはなんとも奇妙な風景だ。

 

「事情は分かったけどよ!なんでよりによってバンなんだよ⁉︎ジャンケンで決まったのか?」


 十空入りがほぼ確定したいたバンがその空いた枠に入ってきた事に何か力が働いたのではと勘ぐるクソガキ。

 

「残念ながら立候補したのはバン一人だった」


「は?なんでだ!せっかくの十空入りのチャンスをみんな見逃したのか!どこだ?どこにいるその腰抜け達は」


 クソガキの独壇場に他の九人は呆れている。

 それも腰抜け呼びをするという暴挙。

 いつも通りの態度ではあるがこの話の需要がクソガキにしかない以上その言動が少し気になってしまう。 

 惜しくも最後に負けてしまった者達は固まって凛々しく見上げている。


「お前達なんで立候補しなかったんだ⁉︎確かにバンの方が強いかもしんねぇけど同じ一回負けた者同士遠慮なんてせずにっ、」


 先程からの要所要所での言動に流石のレイゼも注意をしようとした時。

 クソガキの喉笛に剣の鋒が当てられる。

 そのぶっ飛んだ止め方をしたのは竹一族の三番手「メルティ」であった。


「何すんだよ?」


 クソガキが一歩でも前に出れば死んでしまうこの状況に声を震わせながら話す。


「さっきから聞いていれば気に入らん。言動の全てが気に入らん。この場で自分にしか利益のない話を長々と続ける、立候補をしなかった者達を見ずに腰抜け呼ばわり、これらをする阿呆がなぜ十空に居る?さしずめここで貴様の首を叩き落として枠を一つ増やしてやろうか?」


 剣から殺気が伝わってくる。

 本気なのだとヒシヒシと伝わる。

 

「貴様に最後の機会をやろう。あの者達に謝れ。幸運にも勝ち上がれた自分を棚に上げ侮辱した事を謝罪しろ。そうすればこの剣は下ろしてやる」


 浅縹色の瞳でギラリと睨みつけるメルティ。

 

「止めなくて良いんですか?」


 バンがこっそりとレイゼに喋りかける。


「今はいい。ある程度までは好きにやらせる。アイツが調子に乗ってたのは事実だしな」


「す、すいませんでした。もう言いません」


 クソガキが怯えながら細々と謝罪する。


「フン、貴様のような奴が上がってくるとは十空も落ちた物だ」


 メルティが剣をしまいながら嫌味を言い捨てる。

 剣の脅しがなくなればクソガキも黙っている口ではない。

 クソガキの中ではもう何袋分も堪忍袋が切れてある。


「テメェ、さっきから聞いてたら偉そうに!じゃあさっきのフツバとその青髪の奴が俺達を煽ったのは失礼じゃないのかよ⁉︎

敵を見て行動するとはまぁなんとも情けないな。俺はようここで一回戦おっ始めても良いんだぜ!」


 クソガキが背を向け去ろうとしていたメルティに殺意を全力でぶつける。

 しかし、返答はクソガキが思っていたものは冷たく鋭い物だった。


「だから貴様はクソガキなんだ」


 見向きもせず殺気に対抗もしてこない。 

 まるで眼中にない態度。

 

「これじゃあ、十空に入る前となんも変わらねぇじゃねぇかよ」


 クソガキがこの格下に見られるという最も嫌いで自分を成長させてくれたこの態度。

 クソガキがメルティの背中に飛びかかろうとしたその時。


「はーい、ストップ」


 フツバがクソガキの後ろに回り込み口を抑えて発言権と行動権を奪う。

 フツバの仲裁にライバル視しているメルティの足が止まる。

 

「なぁ、ガキよ。あの残った二位の奴ら見てなーんか気づかない?」


 フツバがクソガキの顔を力ずくで動かして視線を動かさせる。

 クソガキはジッと見つめて考えるが中々答えが出てこない。


「はい、3、2、1、終了。正解は、全員十空入りしたことが無いでしたー」


 フツバが答えを発表だけして両手を離しなんの補足も無しに元の場所へ帰る。

 この解説をするのはフツバではない。


「ガキ、お前がアイツらの立場になってみろ。もしお前が今回、最後の最後で負けて十空入りできませんでした。ってなってなんかトラブルで一枠空いたんで負けてるけど初めての十空入りして良いですよって権利もらって喜ぶか?」


 クソガキは事の全貌をやっと把握できた様子だ。

 なぜメルティがあんなに怒り、敢えて対抗してこの場を盛り上げようと当初はしたのに盛り下がっているのか。

 レイゼがソッとクソガキの耳元に近づいて囁く。


「バンはフツバに一度負けたのに上がってきた。それはバンのプライドを守る為の行動なのか、それとも真逆の自分のプライドを折っての行動なのか。お前なら、分かるだろ」


「なんか、色んな人達、すいませんでした」


 クソガキの一人芝居だった事を自覚し、無骨ではあるが謝罪する。

 

「まぁ、今回はクソガキの失態ではあったがこっからの十空戦での活躍を期待しとくぜ。さぁさぁ戻った、戻った。ほら、メルティも戻って」


 機嫌を損ねていたメルティではあったがレイゼの指示に加えクソガキが一度謝罪したことも含めて元の位置には戻る。

 クソガキへの視線の色は変えない。


「さ、一悶着あったがそのおかげで逆に見えて来ただろ。誰が誰をライバル視又は敵視しているか。正直言って今回は前回出てなかった実力者とかも出てて相当レベルが高い。この激戦が予想される十空戦の一回戦目一試合目を飾るのはこの二人だ!

『霊装使いのクトゥル』vs『バンを倒した男フツバ』!!!

盛り上がってけ!お前らーーーー‼︎」


 一試合目から観客が見たいカードの対決。

 さっきまでの静けさを忘れたかのように盛り上がる。

 フツバがクトゥルの方に視線をやる。

 クトゥルは大きな笑みを浮かべてこちらを見つめている。

 クトゥルの殺気とフツバの殺気がぶつかり合う。

 フツバは殺気を出しながらもクトゥルに近づいて行く。

 至近距離まで来るとフツバが片手を出す。


「煽った奴が一回戦で負けるとダサいよー。って事でよろしく」


「自分で自分の首絞めて大丈夫?一回戦目からダルそうな奴じゃなくて良かった」


 クトゥルがその手を握り返してくる。

 お互いの殺気が皮膚一枚を挟んで伝わる。

 十空戦開始。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ