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四章25話 フツバver.2.0


「アトラも馬鹿ねぇ。念願のフツバのお姫様抱っこを疲れて眠っちゃうなんて」


 ライラがフツバの腕の中に小さく収まり気を失っているアトラを優しく見つめながら言う。


「いや、姫さん。別に初めてじゃないぞ。今朝にコイツが落ちて来た時一回こうなったけどな」


 フツバのこの発言にライラが失望の眼を向ける。


「アンタ女心がほんとに分かってないわね。分かる?アトラが無理矢理やらせたりしたんじゃなくてフツバからしたということがめちゃくちゃ大事なんでしょ!今朝のは言うならば『全身横抱え』今のこの状況こそがこの子が望んでたそれなのよ!まったく」


 フツバが最初からこの思考回路になれるのは当分先の事だろう。

 そして話していると治療所に着いた。

 ここでライラとフツバは一時お別れだ。


「じゃあ、あとはアトラのことは頼んだ。俺は、試合に出ないといけないから」


「ん〜?試合に出るだけなのぉ?試合に?」


 ライラがフツバをおちょくった表情で聞いてくる。

 言うまでアトラを受け取ってくれなさそうだ。

 アトラには応急処置がされているので緊急性は特にない。


「勝ってくるよ。いや、圧勝してくる!」


 フツバの目がスイッチが入ったかのように戦士の目に変わる。

 最初にあの死体に囲まれてた場所で会った時とはもう違う。

 

「私達を守るっていうなら誰にもバンにもそのアンタの中のよく分かんない力にもあの悪魔にも全部に勝ってもらわないとこっちが困るわよ。

フツバ、頑張って来い‼︎」


 その心はアトラと交換にフツバに渡される。

 

「あぁ、やってくる‼︎オトメ・フツバver.2.0を見せてやるよ!」


 ライラにはニュアンスで伝わっている。

 フツバがやる気だってことは分かっている。

 フツバはあんな力に頼らなくたってバンに勝てる、そう純粋にフツバを信じれる。

 フツバにはもしかするとライラを信じさせるというヴェーラを持っているのかもしれない。

 フツバとバンの間に残る壁は一つ。

 その壁は今まで壊して来た物に比べれば頑丈だがバンに比べれば屁でもない。

 前回9位の敵を屁でもないと称せるのに竹一族内のインフレを感じなくもないが元々この世界はフツバの師匠の所為でバグっていると本人が言っていた。

 このインフレ度合いを甘える理由にして停滞するか、取り残されないように全力で前に進むか、もちろんフツバは後者を選ぶ。

 ここから先戦うのはその後者を選んだ奴らの集まりだ。

 これは最強祭だけに置いての話ではない。

 今後立ちはだかるであろう壁は無数にある。

 

(こっからはマジで気合い入れて行かなきゃな!油断してるとこっちがやられるだから!バン、お前が景気付けの一人目になってもらう!)


ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーー

 バンとフツバの戦いが近いと聞きつけた者たちが会場に溢れかえり、立ち見も満員電車状態だ。

 まだ一つ前の試合というのに凄い盛り上がりだ。


「さぁ、さぁ、さぁ、バンとの戦いを前にしてオトメ・フツバの前に立つのは、前回9位柔軟な発想によって生み出されたこの男の戦い方には誰もが悩まされる!バイソン・スズキだーーー‼︎」


(芸名かよ!ってめっちゃ言いてぇぇぇ)


 フツバが上部は真剣だが、内心ではいつも通りのテンション感である。

 ふんどし一つの男が勇ましく入場してくる。


「まぁ、逆に構えちゃうと固くなるタイプだから許してくれよな」


「何を言っているのかは分からんが貴様が私に勝てるつもりでいる事は分かっている!しかーし、このバイソン闘法の前に今まで通りいくとは思わぬ事だ!」


 バイソンは姿勢を低くし、頭の上に両腕を構える。

 まさにバイソンだ。


「モーーーー」


(お前はバイソンだろうがぁぁ!)


 フツバの心の中にもしかしたらめちゃくちゃボケていてツッコミ待ちなのかもしれないという雑念が湧き上がってくる。

 

「隙あり!」


 バイソンがその迷いができたフツバを見て真っ直ぐに突っ込んで行く。

 その突進スピードは50メートルを4秒台で走ってしまいそうな程の早さだ。

 普通の相手ならこれを横に避けて、避けて、体力が尽きて負けるのだろう。

 しかし、相手はフツバだ。

 いくら雑念が湧いていたとはいえ戦士の目はやめたつもりはない。

 こんなに真っ直ぐ素直に突進してくるのなら


「横拳合わせりゃ終わりじゃん」


 フツバが少し横に避け、もう止まる事のできないバイソンの無防備な顎に紙一重のタイミングで横拳を合わせる。

 バイソンが腕の位置はそのまま真っ直ぐに突進するのではなく進みながら崩れ落ちていく。

 一般人、又は大した腕前でない戦士には何が起きたのか分からない。

 突然、攻撃を仕掛けた筈のバイソンが地面に手はそのままで寝そべっている。

 ふんどしなのでお尻が綺麗に見えている。

 その状態からピクリとも動かなくなったバイソン。


「本気って訳ですか」


「俺があんな事言わなくたって大丈夫だったみたいだな」


「今日のモチベ維持の為にわざわざ決勝まで戦わないようにした甲斐があったな」


「容赦ねぇなあ!」


 どでかい声で叫んだメンドゥーサによってフツバが容赦なくあのバイソンを倒したのだということが伝わる。

 

「オトメ・フツバの勝利!」


「「「「「うぉぉ」」」」」

「いいって!」


 フツバの圧巻の勝利に盛り上がろうとした所をフツバの一声で静めさせる。

 

「そんな事より早くやろうぜ!決勝戦」


 フツバの視界がゆっくりとバンの方を向きそう言い放つ。

 

「僕は良いけど、君は休憩しなくていいのかい?」


「いいよ、逆にバイソン倒さなくて大丈夫?」


 フツバのその余裕の返しに笑いが溢れてしまう。

 

「それじゃあ」


 バンが観客席から一っ飛びで入ってくる。

 

「一狩り行くか」


 二人が同時に剣を刀を腰から抜く。

 その目の前で繰り広げられる怒涛の展開に観客は歓声を我慢するのがもう限界だ。


「「「「「二人ともやっちまえーー!」」」」」


 十空の予選史上最高の戦いが始まろうとしていた。

 その背景で整備班は急いで尻丸出しのバイソンを中央の外へ引きずりながら運び出していた。

 

 

バイソンはこれでも前回9位です

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