一章7話 ヴェーラ
やっと、特殊能力がでてきました。お楽しみに
「おい、フツバ調子はどうだ?」
アルバが聞いてくる。
「そこそこって感じですかね。」
剣の手入れをしながら何気なく答える。
「明後日には試験開始だ。お前に伝えておかないといけたいことがあってな」
「なんですか?」
一つ息を吐いた後
「『ヴェーラ』を知っているか?」
「…知ってますとも、最近一部の人しか持っていないだとか言われてる特殊能力的なことですよね?それがどうかしました?」
わざとらしい軽い口調で言う。
「そうか、実はだな、そのヴェーラを犯人が使える可能性があるんだ。」
フツバが一度目を深く瞑り、振り返って目を合わせる。
「どんな能力です?氷を出す能力?それとも武器を強化する能力?」
把握しているような態度で話す。
「残念ながら、全部ハズレだ。」
「じゃあ、なんです?」
「死体を動かす能力だ。」
フツバが目を見開く。
「なっ、そんな気持ち悪い能力ありましたっけ?」
「いいや、未確認だ。」
「じゃあ、どうして分かったんですか?」
「実はな、中佐が殺害された現場から殺される一昨日に殺された人のアクセサリーが落ちてたんだ。」
少し目を細める。
「なるほど、たまたま、そこに落ちてたと言う可能性は?」
「勿論考えた。ありえないと思ってな、しかしそれは親族が埋める時につけてあげていたらしい。そして、何よりの証拠に死体がまるまる消えていた。」
深刻そうな声で言ってくる。
その深刻さに打ち勝つべく、フツバが言い返す
「たとえ相手がヴェーラ持ちだろうと、問題ないでしょ。僕は必ず、そいつをぶった斬って見せますから。」
「そうか、流石だな…何度も言うが、任せたぞ。あと一つ言う事がある。」
途中テンションを無理矢理上げて、微笑みながら喋る。
「今度は何ですか?」
「実はだな、お前は知らないと思うが毎年この時期に俺は休暇を取るんだ。」
フツバが驚く。
「待って下さい。何の冗談ですか?それじゃあ、基地には主戦力がいなくなるじゃないですか、いくらあいつらが修行してるとは言え無茶ですよ。休みをズラせないんですか?」
フツバが真面目な声で聞く。
この緊急事態に星持ちも隊長も居なくなるのは危険だ。
首を横に振る、
「これは、残念ながら無理なんだ。俺はな、ある事情で絶対にこの時期に休みを取らされるんだよ。」
悲しそうな声で言う。
一つ唾を飲み事情を把握する。
「わかりました。一応気にかけておけばいいですかね。」
「本当にすまない。お前も試験に集中したいだろうが、頼んだ。ほんの片隅に置いとくだけでいいからな。それに、すぐにメルトの奴も帰ってくるだろうしな。」
「えぇ、分かりました。まぁ、この近くは僕が担当する事件以外はほとんど問題なさそうですし、大丈夫でしょう」
「あぁ、そうだな。だと…いいんだがな。」
(一体どんな事情だか、知らんがやはり重なり過ぎてる、怪しさ満天だなぁ、こりゃあ)
アルバが帰ろうとした所を振り向き
「おい、フツバ。ちなみに言っとくがメルトが行っている特訓だが、帰ってきた奴ら全員がヴェーラ持ちになってるらしいぞ。気を付けろ。」
「知ってますよ。正式な名前がない時に出来たから特異体質なんていう名前なんでしたよね。でも、大丈夫ですよ。ヴェーラを使えるようになったとてそう簡単に使いこなせる物でもないでしょうし」
「流石だな!三星を倒した奴の自信は」
これは試験二日前の会話である。