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四章21話 馬鹿なりの戦い方

どうもビタミンです。

ここから戦いが多くなると思いますが長くなってでも極力一話で描くつもりです。

今回はライラが戦います。

どうやって戦うのか、まず一対一で戦いになるのか。

少し長くなりますが読んでください。




「今すぐ棄権したほうが良いと思いますよ。今回の大会の私は本気を出すことに躊躇はしません。前回のような不甲斐ない結果にならぬ為にもあなただろうと確実に倒しに行きます」


 針のように細い剣を抜きライラに向けてくる。

 フツバが言うにはあれはレイピアというらしい。

 素早さに特化しており、一撃でやられる程の攻撃はできないらしい。

 

「それは良かった。私も舐められて戦うのはいやだから。それに本気の相手じゃないと実力が分かんないんだもん」


 ライラもこの大会に出るにあたって出場経験のあるヒスタに色々と聞いていた。

 まず、薬師は戦闘向きではない事が大前提。

 かと言って一切の戦闘方法がないわけでもない。

 それを駆使すればフツバやバンレベルには敵わないがそれ以下ならやれない事もないらしい。


(「まず、私達はその場で作る事なんて出来ないから予め作った物を持って入る。使っていいのは殺傷性が低く、どちらかと言うとデバフ系。つまり麻痺や睡眠が中心になる。持ち込もうとしても持ち物は事前にチェックされるから没収されるだけだから」)


 ライラは腰に巻きつける形の袋の中に多種の薬を入れている。

 

(「私達みたいに運動能力が普通の薬師が勝つには相手に気づかれずどれだけ身体能力を下げれるか。行動不能にはせず、自分より弱くしちゃうってのも手だから」)


 ライラにとって時間稼ぎではなく対戦をするのは初めてのことだ。

 ライラが脳内復習を終え、腰に用意しておいた薬から一つ選んで掴んだのを見たと同時にロワルドが動きだす。


(やっぱり速い‼︎)


 ロワルドが速攻で決めに来る。

 ライラは詰めてくる間に自分の薬を相手に使うではなく自分で飲みだす。


「あの馬鹿っ‼︎」


 観客席の一番後ろでその戦いを観ているフツバ、アトラ、ヒスタにバン。

 ヒスタがその様子を見て嫌な予感を感じとる。

 ヒスタは今回でないのだが他三人がこれを見れているのは三人とも出番がまだだからだ。

 

「何かダメなのか?あれ」


 フツバがヒスタの反応が気になる。


「あれはな、、、」


(「もう一つだけ私達には戦い方があるが……これは正直おすすめできない。というか私達がやるべき戦い方じゃない」


「どんな方法?」


「んん〜」


 気になっているライラの表情をまじまじと見て声を唸らせる。

 

「なにを悩んでんの?」


「だってお前が気に入りそうだから教えるべきかどうか考えてるんだ」


 暫く静かな時間が流れる。

 ヒスタが熟考している。


「別にアンタがなにに悩んでるか言っちゃった時点でアンタが教えなくたって別の人に聞くだけなんだけど」


「そうだ、しまったな。別の奴に教えられるくらいなら私から言っといた方がマシか。いいか!絶対にこれはするなよ!」


「分かった!やらないから!」)


「フツバがやるなはやれって言う意味だって言ってたから」


 薬を喉に流し込み瓶の中を空にする。

 ライラの髪が少し逆立ち、目が充血し、手の甲に血管が浮き出る。


「激昂剤で相手と運動能力で張り合うのだけはバカだって言ったろが」


「やっぱそうか」

「これはまずいね、フツバ君」


 激昂剤と聞き、フツバとバンもこれが悪手であることを悟る。

 アトラは聞き慣れない言葉だが単語があまりに分かりやすいので無駄に聞くことをしない。

 『激昂剤』、効力「使用した者の運動能力を一分間五〜十倍までに引き上げる。その代償として効力が切れると同時に一時的に視覚、味覚、触覚、嗅覚の四感が無くなる。更に身体への負担も大きい。この薬を連続で複数回使用すればするほど危険性は増し、致死率も上がる。


「何回まで使わせるんだい?」


 バンが代償承知で使った様子のライラを見てフツバに聞く。


「一回目で止めるに決まってんだろ。あんなの危険すぎて俺達でさえ使おうとしないのに。何やってんだあの人は」


「それに使うにしても最初から使ったって一分間じゃアイツは倒せないだろ。ライラは何考えてんだ」


 ライラの様子で激昂剤を知る者は全員危険を感じ取り、止めようかと思うがフツバが微動だにしていないのを見て抑える。

 

「そんな物‼︎飲んでも私は倒せませんよ!」


 ロワルドが初撃を避けたライラに言い放つ。

 ライラはロワルドと遜色なく動けるようになっている。

 

(凄い‼︎体も動くし、攻撃も見える‼︎でも私はここからよ。見てなさい、アンタら)


 後ろで四人が見ていることはライラも分かっている。

 ライラは手前から順に瓶を掴みロワルドに投げつける。

 追いながら避け切れるほど激昂剤を使ったライラの肩力は弱くない。

 

「クソッ!」


 ロワルドも全部を受けるわけにはいかず、少し距離をとる。

 ライラから投げられる薬をしっかりと一つ一つ避ける。

 効果範囲を薬を見ただけで見分けることはロワルドにはできない。

 どの薬がしっかり避けれていて、受けているのかは分からない。

 

「どれくらってんだ?分かるか、バン?」


「いぃや、僕も流石にそれは分からないね」


「三つよ。あの感じだと七割は投げてるわ。アイツがくらってるのは三つだけよ」


 横で見ていたヒスタにはどれがくらっているかが分かっている。

 あれだけ大量に無造作に投げられていたのに全て見分けていたのだ。

 ライラから聞いた以上の実力だ。


「効果はどうなんですか?決め手にはなりますか?」


 アトラがライラの異様な様子を心配しつつもこの戦いでライラに勝ってほしいと思っている。

 三人の様子だとライラは短時間で決めないといけないようだ。


「それが変なのよね」


「変、ですか?」


 投げても投げても中々当たらなくなってきた。

 薬の代償か分からないが息もあがってきた。

 

(今何秒たったっけ。三十秒くらいかしら。あと半分の筈なのに何でもう。使って分かったけど使う人の体力次第で効力も変わるのね。この疲労感だとあと二十秒くらいしかない!)


 自分の時間が無いことに焦り投げるスピードが速くなる。

 それをロワルドは見逃さない。

 ロワルドは激昂剤の存在は知らない。

 しかし、戦士として相手が焦っているという隙は見逃さない。

 これ以上投げられて様々な効果が乗っかり不利になるよりかは素早く終わらせた方が良いと判断する。

 それに、


「今のところ、私に一つも当たっていないとお見受けする‼︎あなたに投擲技術はない!」


 レイピアの先がライラの頬を掠め、血が流れる。

 急な詰めにもなんとか反応できたライラ。


「クッソ!ヤバい‼︎」


「なるほど、あなたには時間が無いようですね。そして最初に飲んだ薬の効力も切れてきたようで。初撃を躱せたあなたが今のを躱せないのはおかしい」


 明らかに疲れが溜まってきているライラの姿からももちろんだが今の攻撃を避け切れなかったのもライラの時間制限が迫っていることを示している。


「こんな短時間で私を倒せると思っていたなら見誤りましたね。今の所私の体にはなんとも無い。きっと私に当たっていたとしても何かと組み合わせないと意味がないような物ばかりなのでしょう。どうです、降参しては?」


 効力が切れて一方的な展開など誰も見たくはないならばその前に降参した方が懸命だ。

 この場にいる人のほとんどが降参をした方がいいと思っている。

 

「そうだ、やめておけ!それ以上は危険だ!」


 観客からも心配の声が上がる。

 竹一族は戦闘が好きではあるがそれで誰かが殺されたり、大怪我するのを見るのは好きじゃない。

 側から見ればライラが危険なのは分かる。

 会場全体がライラを心配するムードが流れている。

 

「ねぇ、お父さん。お姫様負けちゃうの?」


 最前列に並んで登場の時応援してくれていた少女が心配そうにしている。

 ライラはきっと目の前の敵に集中して聞こえていないような小さい声。

 そんな小さい声はこの場にいた三人のライラの勝利を信じる者に聞こえていた。


「大丈夫!姫さんは絶対勝つから」

    「ライラさんは絶対勝ちます」

    「ライラは絶対勝つわよ」

 

 その三人の声はその少女だけではなく周りの観客にまで届く。

 その声により会場の空気が変わる。

 

「がんばれ‼︎」

「諦めんな、いけるぞ!」

「負けるなぁ‼︎」


 空気に流され、抑えられていたライラへの応援がはじけだす。

 そのはじけた者達には非戦闘員が多かったという。

 みんな下剋上に期待しているのだ。

 前回から今回の下剋上だけでなく実力差をなんとか埋めて勝つという下剋上もだ。

 ライラにはこの声援が届いてはいないが、


(心がなんだか熱くなってきた!)


 思いは届く。

 ライラは残り一割を切った瓶をまた投げ始める。

 

「諦めないか。それなら!」


 ロワルドが決めに行く。

 

百刺びゃくし!」


 レイピアの特徴を活かした数による攻め。

 ライラがそれに反応して瓶を投げる。


「そんな物では止まらぬわ!」


 その瓶を刺し割り、攻撃をやめずレイピアはライラの左肩を刺す。

 ライラはそのまま無抵抗に攻撃をくらう。

 数十の攻撃がライラを襲う。

 ライラの服は刺された所が破け、血が出ている。

 なんの優しさか胸や顔は刺さないようにされている。

 しかしその攻撃をくらってもライラはなんとか立ち続ける。


「あと一つ」


 ライラは腰にある最後の一つを掴む。

 ライラにもう最初の様な強い気配を感じない。

 

「時間切れですか。だから言ったというのに」


 激昂剤の効力は切れ、もうライラの視界は真っ暗だ。

 ロワルドは勝ちを確信している。

 もう戦えないというのにまだ諦めないライラの心だけは戦士として尊敬する。

 その敬意を込めて完全に終わらせにいく。


「三、二、一、ピッタシよ。ライラ」


「ぬわぁぁ!なんだお前達は!」


 ヒスタのカウントダウンが終わると同時に急にロワルドが吹き飛ばされる。

 急な出来事に会場が騒めく。


(「変、ですか?」


「そうだ、さっきからライラが投げてる薬全部即効性のある物じゃないんだ」


「それってまさか‼︎」


「あぁ、たぶんだけどライラは一分間で勝つんじゃなくて一分後に勝とうとしてるんだ。変な戦い方しやがって、馬鹿なりに考えたのか」)


 ライラがさっきまで投げていた薬は効果までに遅延がある物ばかりだ。

 遅延があるということは効力が大きい物ばかりだ。

 ライラがくらわせた物はあの時で三つ、一つ目は前にも使った事がある時間感覚を狂わせる薬。

 二つ目は筋肉を硬直させる薬、体の動きがとことん鈍くなる。

 三つ目は幻覚を見せる薬、今ロワルドは急に巨漢二人が乱入し、自分を攻撃してくる幻覚が見えている。

 効果発動時間はどれも即効の物から数秒の誤差がある物とバラバラだがライラはそれを計算して手前から並べていたのだ。

 

「おい、コイツらは誰だ⁉︎誰かコイツらを退場させろ!おい!何で誰も反応しないんだ‼︎ぼへぁ」


 ロワルドの視界ではみんなただ眺めているだけでまだライラを応援しているように見えている。

 会場は困惑している、なぜならロワルドが助けを求めているのに自分自身で自分を殴っているからだ。

 

「コイツらを誰か止めろぉ‼︎俺は動きが何だか鈍いんだ‼︎おい!」


 存在しないコイツらを止めろと言われても誰も何もできない。

 それにこの行動の原理は分からないがきっとライラの仕業だということはみんな感じていた。

 

「なんでライラは動かないんだ⁉︎」


 ロワルドが自傷をしだしたというのにライラはジッと立っているだけで残りの一つを投げようとしない。

 激昂剤の効力を知らない物達が騒ぎ出し、ロワルドは自傷し、ライラは動かないという異質な様子になっている。

 ライラは激昂剤の効力によって残った一つの感覚を頼りに最後の一つを投げようとしている。

 しかしこれでは周囲の音でロワルドの方向がうまく掴めない。

 

「静かにしろぉぉ!」


 この場を静めたのはフツバでもレイゼでもなく、メンドゥーサだった。

 

「アイツ、見に来てたのかよ」


 フツバ達とは別の場所で見ていたメンドゥーサ。

 全員が口を閉ざす。

 ライラは怯えるロワルドの声から場所を集中して予測する。

 

(これは直撃しないと意味がない。落ち着いて、落ち着いて。なーんだ、静かになれば簡単じゃない)


 ライラが右手で真っ直ぐに最後の一つをロワルドに向かって投げる。

 その瓶はロワルドの口へ寸分の狂いなく投げられる。

 その瓶が割れるのと同時に会場のこの緊張感のある空気も割れる。

 ロワルドの口に薬が流れ込み、ロワルドが震え出す。


「ぁぁぁぁ!!!」


 口から泡を吹き、体を震わしながら気絶する。

 最後の一つは麻痺薬、体を動かなくさせ、更に飲んでしまった場合体の拒否反応により気絶する。

 それを見ると同時に判定員が白旗を上げる。

 

「「ラーズウェル・ライラの勝利!」」

 

 一戦目にして短時間で大激戦という最高の試合に全員が熱狂し、大歓声をあげる。


「ライラ本当に勝っちゃった」


 今回の祭りの初勝利を飾ったのはラーズウェル・ライラ、この国のお姫様だった。

読んで頂きありがとうございました。

見事ライラの勝利!

という事で今回の一話は何とたった一分ちょっとの出来事でした。

細かい解説をすると、激昂剤が聴力だけ残る理由はシンプルに聴力だけ強化されないからです。

他の四つは強化されるのでその代償に使えなくなります。

ここからもドンドン戦いを書いていこうと思います!

戦闘描写はやっぱり楽しい!

それではまた次話でお会いしましょう。

良ければ、戦闘描写でのアドバイスなどなどよろしくお願いします。

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