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四章20話 十空


「いや、あのねマジで大変だったんだよ。あの人ヤベェのよスパルタもスパルタ。あ、厳しいって事ね」


「私もね、師匠が教えてくれてないことが意外と多くてビックリしたわよ。でもなんか、私しか知らない知識があったりしたから結果的には徳なのかもしれないけど」


「私もまた大変でしたよ。ずっと監視なんですよ。トイレとお風呂以外は基本監視、監視、監視、トイレ、監視、監視、お風呂、監視。ヴェーラは急にで始めるしで色々忙しかったです。

まぁその分色んな物を作れたから良かったですが」

 

 フツバ達が後ろで誰かが大きな声で喋っているがそれを無視して駄弁っている。

 

「アトラ、お前また変なの作ってないだろうな。前みたいに目を燃やす奴とか要らんぞ」


「分かってます。実用的なやつをちゃんと作りました。それもまぁすぐに分かりますから安心して下さい」


 後ろの音が邪魔で部分的に聞こえなくて非常に煩わしい。


「それからさ、」

「ってお前らは話を聞けぇぇ!!」


 フツバの後頭部目掛けて後ろで始まりの挨拶をしていたレイゼが飛び蹴ってくる。

 

「だって始まりの挨拶とかつまんないんですもん。あぁ、あぁ、血が止まらん。姫さん頼む」


 フツバが軽いノリで頭から血を流す。

 床材が頭に刺さっており血は止まる事を知らない。

 ライラが慌てて丁寧にカケラを抜き止血する。


「つまんないのは甘んじて受け入れよう、せめてコソコソ喋れよ。お前らの喋る内容聞こえてる範囲の奴らは全員そっちの方聞いちゃってんだよ」


 レイゼが話の長い校長先生の様な扱いを受けている。

 実際、折り紙が懐に入っていたことは内緒の話だ。

 

「せっかく、これからトーナメント表出そうと思ってたのに台無しだぞ」


 レイゼの話にまた集中を戻す為に仕方なく予定を早める。

 もうこれ以上喋ると影でコソコソあだ名を付けられそうで嫌だからだ。

 レイゼの狙い通り、トーナメント表という言葉に出場者、特に上位を狙う戦闘組の連中は集中をレイゼに戻す。


「はい、それじゃ。出場者は総勢360名、会場は例年通り20個の闘技場で10ブロックに分けて素早く行う。制限時間は10分。それまでに終わらなければその会場にいる代表者の判断で決定だ。

前回から一年以上経ってる。前回一回戦で負けた奴が準決まで残るのだって過去に何度もある。ひっくり返せ!上で胡座かいてる奴らを全員落として上がってこい‼︎十空テンクウまで全員、『潰しあいだ』」


 十空テンクウ、上位10人に残った強き者達のことを称えてそう呼ばれている。

 レイゼのその声は実用試験としてのみ出るつもりだった機械班更には過激派薬師達の心さえも揺さぶる。

 アトラの道具なんて必要ない。

 本能が負けてはならないと叫んでいる。

 ここから上位10人までは例え前の戦いが白熱の一戦だったであろうと次の試合の時間には必ず出させられる。

 10ブロックに分けられた36名の中でのトーナメント方式。

 

「正直言ってブロックのメンバー次第では予選落ちあり得るぞ」


 フツバが壁にデカデカと掲示されたまだ隠されているトーナメント表が捲られる瞬間を今か今かと待っている。

 

「「「「オオォォォォ‼︎」」」」


 一斉にそのトーナメント表が姿を現す。

 まずは自分の名前がどこにあるかを皆が受験生かの様に目をひん剥いて探す。


「ありました‼︎私はあのクソガキって呼ばれてる子と一緒です。でもそれ以外は、たぶん大丈夫そうです」


 アトラが自分の名前を見つけてそのメンバー振り分けを見て浅い知識ながらに一安心する。

 360人もいると中々見つからない。

 フツバの隣でライラも探してくれている。

 

「あった!良かったぁ。私のとこ強そうな人一人もいない‼︎」


「「え?」」


 自分の事よりもライラの発言が気になってしまう二人。

 

「出るの?姫さんも」


「出るわよ、姫さんも」


「どうしてですか?」


「まぁ、記念に」


「たぶんだけど記念で出ていい様なもんじゃないと思うよ」


 二人が出るとは思っていなかったライラが出ることに驚きつつも同時に不安になる。

 この祭りは容赦なく戦う奴が多い。

 そんな所にライラがそれも一人で出るのは気が気じゃない。

 

「大丈夫、死んだり復帰できない様な怪我はしないよう代表者が見張ってるから安心して。現に一人たりともこんな人達の中死人が出たことはないからね」


 そう不安そうな二人に話しかけるのはバンだった。

 バンはここに生まれた時からずっと居るらしいので伝聞などではない分信憑性が高い。


「そうか、それならまだ良かったか。お前は名前見つけれたのか」


 フツバがまたトーナメント表から自分の名前を探し始める。

 バンがフツバを見て口角を上げてニヤリと笑う。


「何だ気色悪りぃな」


「探す必要なんて無いですよ。フツバ君のブロックで一番強いのは決まってますから」


 フツバが腰の刀にゆっくり手を持っていくバンを見てこの後の展開を何となく察する。


「ま、さ、か」


「君は僕だけを見てるといい。君か僕、どちらかが十空テンクウに残れない」


「ですよねー」


 第三ブロックにバンとフツバの名前がある。

 10ブロックには前回大会の十空テンクウは必ずバラける様になっており、この予選とされるところの見どころは基本下剋上である。

 しかし、今回はブラックホースフツバの登場により確実に誰かがフツバとぶつかる。


「このトーナメントはね、僕が族長にお願いして変えてもらったんですよ」


「は?何だ俺よりぶつかるとめんどくさい奴でも居たのか?」


 急に自分が不正をした事を明かす。

 それにしては最も辛いブロックに配置されている。


「違いますよ。僕が被せる様にお願いしたんです。もし、十空テンクウにフツバ君が上がったとしても君と確実に戦えるわけでは無い。確実にそれも準備が万端でかつ早く戦えるというのなら、被す以外にでは無いしでしょ。

君と戦えなくては僕のこの一週間近くの努力が無駄になる」


 バンはこの結果が願ったり叶ったりのようだ。

 今、レイゼの方を見てみるとこっちを見て二人のやりとりをニヤニヤしている。

 この二人の対決がどうしても見たいのだろう。


「分かったよ。やってやるよ。こんな序盤でやりあうつもりは無かったけど用意されてんなら乗っかるさ。ちなみに言っとくけど、俺はあの力は使わず勝つからな」


「へぇ、なら10分もいらなかったね4分で充分だった」


ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーー


「第十ブロック!一戦目、ここに入ってまだ僅かしかし実力はあの五英傑に認められる程。いつもは癒す為の薬学を今日は倒す為に使う!

東、ラーズウェル・ライラ!姫ーーー‼︎」


「「「「姫ーーー‼︎」」」」


 まだ小さい子供達がお姫様を見たいと最前列に並び応援してくれている。


「その相手となるのは前回は二回戦負け、下剋上を起こせるのか⁉︎剣一本、相手が薬師など関係なくぶった斬る!目指すは十空テンクウ入り!

ロワルド・テイラフ‼︎」


 一戦目にしてライラ、ピンチを迎えた。


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