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四章10話 真体術


「バンが押されるか」


 レイゼの前では今二刀で攻守共に有利なはずのバンがフツバの見た目をした者に防戦一方になっている。


「ねぇ、ほら、楽しもうよ、もっとさ」


 フツバに似た何かはバンとのこの攻防を楽しんでいる様だ。

 

「バン、風界解放していいぞ!」


 この合図によりバンの周囲で常に発生していたバンの身体能力を底上げする程度の風が大きく吹き荒れだす。


「風界解放!『蒼々千風ゆきかぜ』」


 室内だからと考慮をして使わなかったが所有者本人が許可を出したのだからあとはどれだけ荒らしてもいい。

 室内なのに風が吹き荒れ、家全体が揺れている。

 そしてバンが界解放をした事は室外も風が強くなってしまう事から竹一族全員に伝わる。

 フツバと戦った時もそうだがバンは安易に界解放を行わない。

 界解放を使った事は本当に使わないと不味い状況になったという事を意味している。

 闊戦宮、特に戦闘区域の空気がピリつく。


「そんなに、使って、うれしいよ」


 仮フツバはこの状況を妙に喜んでいる様子で風などもろともせず攻撃を仕掛けてくる。

 身のこなし方が柔軟で厄介だ。

 バンは仮フツバに風を集中させて猛風を起こす。

 流石の仮フツバでもそれは邪魔になる。

 目が風で乾かぬ様に左手で風が顔に当たらぬ様にする。

 が、そんな注意散漫になっているのはバンにとってはチャンスだ。

 身を翻してそのまま踵で仮フツバが剣を持っている右手を蹴り、剣を手から離させる。

 剣は風の勢いに乗り反対側の壁まで行ってしまう。


「これで決める!」


 この絶大なチャンスを逃さぬ様倒し切ろうとするバン。

 しかし、仮フツバが起こした行動は想定外であった。

 腰を落とし、右手は顔の横で構え、左手は前に構える。


「剣がないなら拳でって事か」


 バンは単なる独特な構えに考えているがレイゼは一人驚いていた。


「あれは真体術じゃねぇか。何故あんなのをアイツが使える。それは、」


 仮フツバとバンが今度は拳対刀となりぶつかる。

 仮フツバの硬手術は一端の武闘家よりも洗練されており刀よりも硬い。

 仮フツバが使う真体術は一撃、一撃を重視する戦闘スタイル。

 それに仮フツバの見のこなしは相性がいい。

 一撃の威力でバンの脇腹に隙が出来たところをもう一発で殴りを入れる。

 バンの体は弧を描いて飛ばされ、背中から大胆に着地する。

 脇腹に入った一撃もまた重く防御の面が薄いバンには大ダメージだ。


「当たり前だろ、真体術それもあのレベルまで使いこなせると今のバンじゃ無理だ。あれは軍技だぞ。なんでアイツが使えるんだよ」


 真体術、軍が築き上げた一つの完成形。

 完全に修得するまでには五年以上かかると言われる。

 今の仮フツバが使っているレベルは二年以上といった所だ。

 それでも十分に脅威ではある。

 この真体術を使う事に驚く理由はまだある。

 これは当たり前の事だが軍に入った全員が教えて貰えれる訳ではない。

 一部の抜粋された天才だけだ。

 もちろんレイゼもフツバが軍に属していた事は知っている。

 しかし一年もいなかったはずであり、教えて貰えるような環境でもなかった。

 これは流石のレイゼも理解不能だ。

 悶えるバンに追撃する事なく仮フツバは向かいの壁に刺さっていた剣を取りに行く。

 

「これは、あなたに、使うものじゃない。あなた、とは、剣」


 フツバがバンに鋒を向けて剣での対決を申し込む。


「いいだろぅ、やって、やるさ」


 バンが立ち上がり顔を歪ませながらも戦いの構えを取り、受けて立つ。


「じゃあ、行くよぉ」


 仮フツバが右手を真っ直ぐに上げる。

 バンはすぐに仮フツバが何をしようとしているのか分かる。

 まるでフツバに皮肉を言われている様だ。

 「戦」がある事を忘れるなと。


「竹の一『(ゼツ)』」


 そのまま綺麗に振られた剣から離れたれる斬撃の威力をバンは知っている。

 家を裂きながら迫る斬撃を二刀で思いっきり振って出来るだけ威力を相殺するも止まらない。

 前動作があんなに少なく放たれたのに威力は絶大だ。

 バンは二刀で受けているが体はドンドン押されていく。


「クッソ」


 激しい衝突音が響いている。

 バンが辛うじて防ぎきったがもうレイゼの横にまで押されてしまった。

 バンが反撃をしようと仮フツバが居た場所を見るがそこに姿はもうない。

 着地音と共に姿を現す仮フツバ、レイゼとバンの間の前に現れ、構えていた。


「竹のニ『流転突』」


「二連ぞっ」


 レイゼも完全にバンが抑え切れるか否かの方に目がいっており仮フツバを見る事を忘れていた。

 本来なら死ぬ可能性があるため止めなければいけない事だったが気づけなかった。

 バンは一歩だけ下がれた事により顔面ではなく腹に戦をくらう事になる。

 下から突き上げられたバンは元々外ギリギリまで押し出されていた事もあり家の外、戦闘区域まで飛ばされてしまう。

 バンも着地時に受け身は取るが先程の拳撃もありもう痛みが限界に達している。

 バンが落ちた場所は絶賛戦闘中だった場所のど真ん中。

 

「バンが落ちてきたぞー‼︎」


 一人が叫ぶと周りで戦っていた者もそっちのけでバンを見にくる。


「なんで飛んできたんだ?」


 ずっと戦闘音はしていたが戦闘相手が見当たらず困惑する野次馬達。


「お前ら!どいてろ‼︎」


 バンがこっちに迫ってくる気配を感じまた体を無理矢理叩き起こす。

 殺気はバン一人に集中しているので周りに手を出す事は無さそうだがぶつかれば被害は出る。

 詰める時に急加速し、またもや突如として姿を現す仮フツバ。

 バンもそれに合わせて刀を振る。

 仮フツバとバンの単純な力だけで言えば拮抗している。

 お互い一歩も譲らず、刀や剣に力を加え続ける。


「お前らーー‼︎フツバがバンを押してるぞーーー‼︎」


 その声に反応して戦闘狂どもが騒ぎ出す。

 フツバが負けたという噂が立っていたこともありこの大逆転の展開に熱狂する野次馬達。

 仮フツバ対バンの対決が公の前で始まった。

 

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