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四章8話 歓迎

どうも、ビタミンです。

最近明らかに投稿頻度が減っている事を自分でも自覚しております。

来週の週末辺りから一週間毎日投稿を始めたいと思います。最低でも一週間は続けるつもりですのでよろしくお願いします。

今回は一人になったライラとアトラのお話です。

 大きな機械音が鳴り響き、周りよりも一段とうるさく感じる。

 ここは「失敗研究所」、正式な名前らしい。

 

「おーい、お前達、新人を、」

「うわぁぁぁぁ」


 呼びかけてるメイハツの目の前を両手にジェット気流が吹き出て制御ができなくなった謎の男が飛んでいく。

 

「おーい、お前達、新人を、」

「やばぁぁぁぁい‼︎ちょっと離れてーーー‼︎」


 奥の方から女の人がヘッドスライディングで飛んでくる。

 直後に後ろで爆発が起きる。

 アトラ達の所には少しの爆風が来る程度だ。

 立ち込めた煙を手で払う。

 爆発で流石に少し静かになったので


「おーい、お前達、新人を、」

「くらえーーー‼︎点日焼け‼︎」


「あっつぃ!」


 水色の髪をボサボサにして保護眼鏡をかけた青年らしき人が細いレーザー状の物をメイハツに撃つ。

 そのメイハツの反応に清々しいほどの高笑いをする青年に色んなことが積もり怒るメイハツ。


「ん?それは」


 青年が怒ったメイハツが手に持っている謎のハンマーの様な物を見て顔を顰める。


「てめぇがやったんだからな‼︎」


 メイハツがその青年の頭にハンマーを振り下ろす。

 あまりの乱暴な光景に目を閉じるアトラだが聞こえた音の異質さに目を開ける。

 聞こえてきたのは衝撃音の代わりに銅鑼の様な音だった。

 アトラがそれに気づきそのハンマーのような物をよく見ると確かにハンマーの叩く部分は音がでるような仕組みになっている。


「あぁぁぁぁぁ、脳が、震えてぇ」


 至近距離での轟音は脳をも震わせる。

 青年が地を這い、気絶しそうになりながらメイハツから逃げるようにアトラの方へ這ってくる。

 そして人影でアトラの存在に気づく。


「ん?君は確か……先週ぐらいにきた子か」


「いえ、今日です」


 アトラがゾンビの様な青年を気味悪がりながらも冷静に返す。


「お前、人の顔なんて覚えないから誰か分かんなくてこの光景に慣れてなさそうだからっていう理由で最後に俺と会った時ら辺の日付言ったろ?」


 メイハツが僅か一秒ほどの間に考えたであろう思考を全て読む。


「ハハァ、バレましたか。それにしても今日来たって事は新人ですか。ここに入ってくるにしては少し遅めだけど黒髪で可愛らしいしイイね!僕は『ヒラガ・サキチ』よろしく、と見せかけて点日焼け!」

「鞄防御」


 アトラがノータイムで防御して見せる。


「へぇ、やるじゃん!」


「手がゆっくりとですがその点日焼けとやらに伸びていたんで。あと言っておきたいことがあるんですが」


 アトラがサキチ越しにメイハツの方を見る。


「うん、さっき言ってたやつね。それなら大丈夫、むしろ歓迎されると思うよ」


 メイハツが言葉とは裏腹に不憫そうな目で見てくる。


「私実は、」


「俺言ったからね‼︎歓迎されるって言ったからね‼︎聞いたね⁉︎」


 メイハツの態度が焦っていて言ってる言葉とは行動が合わない。


「聞きましたよ、歓迎されるんですよね。なら良いです」


 アトラにとってはむしろ有難い。

 なにをそんなに焦って言質までとっているのか分からない。


「私実は黒髪じゃなくて桃髪なんです」


 アトラがここにいる時間は一日だけなどではない事から予め言っておくべきだと考える。


「桃髪なの⁉︎」


 サキチが「桃髪」という言葉に妙に反応する。

 その言葉に反応されるとアトラはやはり少し怖がってしまい、一歩下がってしまう。


「みんなー‼︎とうとうここにも桃髪が来たよー‼︎」


 サキチが周りで実験してる者達にも聞こえる様な大きな声で呼びかける。

 すると皆はピタリと手を止め全員が足を揃えてこっちに向かってくる。


「な、なんですか」


 アトラは大勢に一斉に見られると良い気がしない。


「「やったぁぁあ‼︎何年待ったと思ってるんだーー‼︎バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」」


 全員が一斉に歓喜して、万歳三唱する。

 アトラは言葉通りではあるが慣れない反応に困惑する。


「「君に研究させて欲しいことがあるんだ‼︎」」


 全員が息ピッタシで喋り出し、テンポ、タイミング全て合わせてアトラに話を切り出す。


「何ですか?体をいじられるとかは嫌ですよ」


 アトラがセメラルトでの事を思い出し言っておく。


「「もちろん!そこまではしないさ。ただ、僕達に、『桃髪が危険を呼ぶ』というのは本当なのか研究させて欲しんだ‼︎」」


 アトラは桃髪を悪く思ってないのは伝わるがそんな人達からその言葉が出る事に衝撃を受ける。


「そんな眉唾な事を信じてるんですか⁉︎」


 アトラが現実では考えにくい事を全員がこぞって言うのに不気味さを感じる。


「なに言ってるんだ⁉︎眉唾かデマか嘘かを現実的ではないというだけで判断するのは我々らしくないんだよ‼︎情報を否定するならそれなりの証拠を揃えたいってのが我々さ‼︎」


 サキチが代表して言ったその言葉に合わせて全員が自分ではカッコいいと思ってるのであろうダサい決めポーズをしてくれる。

 

「ハハ、そうなんですね」


 アトラの口からは乾いた笑いしか出ない。


「アトラ、君はここを勘違いしているかもしれないから言っておくがここは機械専門の場所ではない。ここは機械よりも先に化学に魅入られた者たちが集まった場所だ!君には無い考え方や発想がある。それを君は避けるのではなく、」


「学ぶ!」


 メイハツの言葉の途中で言いたい事を理解したアトラが最後要点は自分で言う。

 その行動に満足気なメイハツは一言残して姿を消す。


「ここには一日中機械の実験やら何やらをしている馬鹿どもばかりだ!存分に学んでいくと良い‼︎……じゃ、あとは頑張って」


「はい!」


ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーー


 場所は変わり、傷だらけ製薬所、もちろん正式な名前だ。

 周りでは各々が薬の調合や資料の読み漁りに励んでいる。


「みんさーん」


 ヤイシが小さくか細い声で呼びかける。

 静かめな場所なのに誰一人として振り向いてくれない。

 

「みなさーん」


 気持ち声が大きくなったがやはり声が通らない。

 ライラがあまりの声の通らなさに心配になる。


「私が言いましょうか?」


「いえ、私は班長ですし、ここでまとめられなければ新人のあなたへの示しがつきませんので大丈夫ですよ」


 なぜこの人が班長に選ばれてしまったのかが謎である。

 頬がほんのり赤く、しっとりした唇、薄紫色の髪、痩せた体に大きめの白衣を着ており、ここにいるのが不思議なくらいに可愛い。

 やはり声は見た目通りで、


「みなさーん!」


 ライラの普段の声よりも小さいくらいの声で叫ぶ。

 返答が一切ない。

 ライラの方を目を潤わせながら見てくる。

 捨てられた子犬が助けを求めるときさながらの目だ。


「私が、言いましょうか?」


「グスッ、お願いします」


 鼻を啜りながら泣く泣くお願いするヤイシ。


「みなさーん‼︎」


 ライラの声で作業していた人も全員が手を止めライラの方を見る。


「凄い、全員向いた。班長なりますか?」


「なりません」


 声が通るだけでここの班長にされては困る。

 当たり前の様な顔で言ってくるあたり本当に思っている様だ、可哀想に。


「あの、今日入って来た、」


「おい!みんな班長の周り集合だ!なんか喋りたそうに口をモゴモゴしてる!」


 真面目な雰囲気で眼鏡をかけた若い男がなんのふざけた表情なしにそう割って言う。

 それに誰もツッコむ事なく前に集まってくる。

 いつもどうやってやりとりしてるのかがもはや気になってくる。


「はい、今日、入って来たライラちゃんです。お姫様と言っていましたがそう言う扱い方はしなくて良いとの事です。それから、前でも師匠が言ってた通りパナセアさんの弟子だそうです。あの人が作るなんてびっくりですねー。それじゃあ、皆さん仲良くしてあげてくださいね」


 みんなマジマジとヤイシの方を見て話を聞いているのに相槌一つ無い。

 文章の内容の割に反応が無い。


「あの、一応今言われた事も含めて全部自己紹介してもらって良いですかね」


 眼鏡をかけた青年が笑顔でそう言ってくる。


(あ、この人達絶対に聞こえてなかったな。どうりで反応薄いと思った。自分で言うのもなんだけど私経歴だいぶ濃いのにこの反応はないと思った)


 ヤイシがなぜ全部含めて言うのか不思議そうな顔はしているがこれ以上は可哀想なので説明はしないでおこう。


「んんっ、私はライラって言います。フツバっていうガーリンの弟子と一緒に旅をしている者です。本当に言ってた通りお姫様扱いはして欲しく無いです。一応、パナセアさんの弟子をしています。よろしくお願いします‼︎」


 ライラがハッキリとした口調で自己紹介をする。

 所々でさっき聞いたはずなのに騒めきが起きる。

 

「ライラちゃん、下がって」


 ヤイシがライラの服を優しく引っ張って後ろに下げる。

 するとライラが元いた位置に丸底フラスコが投げられ、割れる。


「ちょっと、なにこれ⁉︎」


 ライラが突然の事に驚きを隠せない。

 投げられて来た方を見るとオレンジの髪をした短髪で目つきが鋭い女が舌打ちをして去っていく。

 流石にライラも耐えきれず


「なによ‼︎アイツ‼︎私が何したって言うのよ!危うく死んじゃうところだったじゃない‼︎」


 その言葉にオレンジ色の女が顔だけ後ろを向いて言う。


「殺そうとしたんだよ」


 鋭い目つきと相まって殺気がより伝わってくる。


「な、なんなのアイツ」


 ライラはあまりの敵対視に物怖じしてしまう。


「ごめんなさい、ライラちゃん。これは私があなたを前に立たせたのが悪かったの。あの子が悪い反応をするのは予想できてた、でもここまでするとは思わなかったのごめんなさい」


 深々と頭を下げて謝罪するヤイシ。

 それに眼鏡をかけた男、それ以外の全員も頭を下げている。


「そんなあなた達が謝らなくたって、大丈夫ですよ。幸いにもヤイシさんのおかげで大事には至りませんでしたし」


 ライラもここまで謝れるとこっちが申し訳なくなる。

 ヤイシさんが頭を上げると眼鏡の男の方へ行き、男に一言残してオレンジ髪の女の後を追う。


「シバキタ、ライラさんの面倒を一旦見といてあげてください。私は少し、、、怒鳴り散らかし回って来ます」

 

 最後の言葉は今までと違い大きな声の様に聞こえた。

 これは声の質がそう思わせたのか本当に声が出ていたのか分からないが。

 いつも静かな人が怒っているのは普通の人が怒るより怖いものだ。


「やりすぎぬようにお願いしますよ」


 シバキタはそう一言釘を刺しておく。

 アトラと違いライラは最低な出迎えをされてしまった。


読んで頂きありがとうございました。

ライラにフラスコを投げつけた謎の女は一体なんなのか。

二人とも更なる成長の為にここで一人で力をつけていきます。

なんか大きな戦いもなく修行、修行、と多くてすいません。

ここは修行と銘打ってますがそこまで細かい修行法は描きません。

描くと長くなりすぎてしまいますので。

ここでの人間関係やフツバの事を深掘りできたらなと思います。

それでは次のフツバの回でお会いしましょう

良ければ感想、アドバイス、質問、お願いします

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