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四章5話 『育』

どうもビタミンです。 

今回は前回の最後に出てきたあの人の回です。

フツバの前に出てくる人はフツバの師匠と肩を並べて戦った男、どれほどのものか。

ぜひ楽しみに読んでください!


「それじゃあ今から歓迎会をしまーす。って言いたい所だったんだけど」


 バンの鞘を握った手を離しフツバの方を見て眼鏡を白く曇らせる。

 バンと同じく和服を着て、茶髪は短く整えられインナーに緑色が入っている。

 身長はバンよりも高く、威圧感がある。


「あなたが、」


 フツバがその行動、風格から素性はすぐに分かった。


「そう、僕は『ウア・レイゼ』よろしくね」


 ニコッと笑い自己紹介をしてくれる。


「なんだよ。アンタ族長って呼ばれてたのに竹さんじゃないのかよ⁉︎」


 フツバが見当違いだったと落胆する。

 実の所フツバはもう一人の五英傑よりも自分が負けた事の方で心がいっぱいだ。

 決して自分が最強だとは思っていなかったが負けてみると話は別だ。

 フツバがそんな風に少し別のことを考えながら話していると後ろでバンが口を抑えて必死に口を閉じようとしている。


「どうしたんだよ、バン?」


「ぁぁ、やめて、今喋りかけると」


 口を歪めて、ベロを出し、手で太ももを血が出るほど握っている。


「俺もう我慢できねぇ!ブゥハハハハ」


 後ろのやつが地面に倒れ込み笑い出す。

 それに釣られてドンドン人が笑い出す。


「ギヒヒヒヒ」

「竹て、竹て、また言われてる」

「僕の技を止めても名前が違うからって、ニハハハハ、もう無理、もう無理」


 バンも堪えず笑い転げている。

 フツバがてっきり恐ろしいことが起こるのかと思っていたが笑っていてなんだか安心する、一瞬だけ。

 すぐに目の前の『レイゼ』と名乗った男の額にバキバキに血管が浮き出ている。


「あれ?もしかしてライバル的関係で言っちゃまずかったですか?」


 フツバが明らかに怒っているレイゼに申し訳なさそうにする。

 すると後ろが更に盛り上がって笑い出す。


「ライバルて、自分とライバルはオモロすぎるって」


「バカ!ネタバラシ早いとこれ以上面白い考察聞けなくなるやろが」


 涙が出るほど笑っている人が言った言葉がフツバの耳に止まる。


「自分?えっでも竹じゃなくてレイゼって。あ、偽名ですか?」


 フツバが五英傑にはいろんな事情があるのかと気を使うがそれがまた盛り上げてしまう。


「偽名、名乗ったら偽名って言われてるぅ」


 全員共通のツボらしく誰もフツバに説明してくれない。


「私は『ウア・レイゼ』そして巷で勝手に竹と呼ばれてるのも私だぁ‼︎」


 怒りゲージマックスのレイゼがフツバの耳元で怒鳴りつける。


「すいません。あれ急に静かになった。あれ、俺の声が聞こえない。あれ?」


 フツバが謝るが自分の声が聞こえない。

 鼓膜が破れ、何にも聞こえなくなる。


「おい、パナパナの弟子!治してやれ!」


 乱暴な口調になったレイゼがライラに命令する。


「パ、パナパナ⁉︎そんな呼び方されてるんですか、師匠」


 とんでもない呼び方をされている自分の師匠に驚きながらもフツバの耳に薬を塗りに行くライラ。


「まさか、アイツが弟子を。それもこの国のお姫様を弟子にするとはな。驚きだよ。ガーは弟子に嘘の情報をふざけて教えてるし。何百年経っても振り回られるよ、全く」


 前髪を掻き上げて二人がいる地上を見上げる。

 その反応を見て判断ができなかったライラは一応言おうとするが、


「知ってるよ。ガーは死んだんだろ。分かってたし聞いた。聞いて確信しただけさ」


 ライラの言いづらそうな表情で全てを察して答えるレイゼ。

 もう悲しそうな表情はしていない。


「そう、ですか」


 フツバも初対面の二人がこんな表情で話していたら内容が何かくらいは分かるが分からないふりをしておく。

 

「お前達、笑うのはその辺にしとけよ」


 後ろでBGMかのように笑い続けていたバン達がそのちょっと怒気を含んだ声にピシッと一切笑わなくなる。


「あのぉ、それで竹っていうのが嘘って言うのは?」


 ライラがずっと疑問に思っていたことを聞く。


「あぁ、それね。フツバ、聞こえる⁉︎」


 腹から大声を出してフツバに喋りかける。


「そんな早く鼓膜が治る訳ないと思いますが」


 アトラもフツバの近くに寄って来て言う。


「ん?あぁ。君もフツバの仲間か。大丈夫、うちのパナパナの薬を舐めちゃいかんよ。僕も最初はそう思ったんだけど」


「うっすら聞こえますよ」


「ほらね!」


 レイゼの予想が的中し、機嫌が良さそうだ。

 

「こんなに早く治るなんて」


 アトラも流石の回復速度の速さに驚かざるを得ない。


「私も治るのは一瞬って聞いてたけど比喩かと思ってたわ。ほんとに一瞬だったわね」


 ライラもパナセアの比喩表現かと思っていたらしく感心している。


「じゃ、話すけど僕がなぜ竹と呼ばれているかなんだけど……んー、どこから話そうかなぁ。毎回迷うんだよねぇ」


 レイゼが丸眼鏡の縁を八の字に指でなぞりながら悩む。


「昔ある戦いの時に偶々僕だけがさっきの『戦』を使ってたんだよ。そしたらガーリンはめんどくさくて使わなかったから僕だけが使える技とその時の人は勘違いして技名の竹はつまり自分の名前だと勘違いして文面にしちゃったの。その戦いは僕達が名乗る前の奴だっからそれで広まっちゃって。

後に訂正はしたんだけどどうも根づいちゃってて。それをあの四人がイジるから僕がムカついてその四人にもあだ名を付けて、それが『ガー』で『パナパナ』。二人ともちゃんとこの呼び方を嫌がってくれたからずっと呼んでるんだよ。いいあだ名だろニハハハハ

コイツらが笑ったのも来る人来る人みんな『竹さんはいますか?』って聞くからもう面白く感じてしまう、ら・し・い!」


 レイゼが説明中に後ろでまた笑っていたバンとその他の数人の頭を拳骨する。

 

「なるほど、だから師匠はパナセアって呼んでたのにあなたはその呼び方をするんですね。でも、パナセアさんは……なるほどなんとなく関係図が分かってきました」


 フツバが過去の会話から脳内で図を作り、パナセアの発言から五英傑達がそれぞれどういうキャラだったのか分かってくる。


「まぁ、僕達三人がお喋りだから三人と話したなら分かるかもね」


 レイゼがなんだか嬉しそうに笑いながら言う。


「ま、雑談はこのくらいにしようか。最初にも言った通りフツバ、君をただ易々と入れるわけにはいかなくなった」


 レイゼが手を叩き話題最初の物に変える。


「はぁ」


 フツバからすれば当たり前の事だった。

 むしろ急にこんなパーティーみたいな事をした方が不思議だった。


「レイ、族長、別にガーの弟子なら入れるって言ってませんでしたか?」


 バンが話に入ってくる。


「そのつもりだったんだが、どうやらコイツはまだ叩いていけないみたいなんだ」


 レイゼがフツバに向ける視線が急に鋭くなる。

 フツバもさっきまで笑顔で会話できていたのにそんな気は一切なくなる。

 

「叩くって確かに今回は僕が押してましたが次は分かんないってレベルじゃないですか」


 バンがフツバのフォローに入る。

 

「次やってコイツに負ける可能性があると本気で思ってるのか?だとしたらお前は相当目が衰えているぞ。お前から叩きなおそうか」


 レイゼがそのフォローの言葉を言及する。


「それは、その、お好きにどうぞ」


「おい!」


 バンが威圧に負けたのか三下のような弱い動きで元の位置に下がっていく。

 フツバの方へ近づいてくるレイゼは一歩ずつ真剣な表情になり、フツバの目前に来る時には別人かのような鬼の目つきになっていた。


「安心しろ、バンは別に俺の威圧で下がったんじゃねぇ。本当に負ける気がしねぇから下がったんだ。言ってやるよ、お前なんで本気出さない?体の動き見てたら分かる。まだ全身をフルで使ってないだろ。そんな温いことしてる奴を易々とこの中には入れらんねぇな」

 

 フツバの目の奥の奥をぐっと覗いて言い放つレイゼ。

 フツバは何も言い返せない。


「フツバだって、本気で」


 ライラがフツバに気を遣ってフォローに入ろうとする。


「アンタらはコイツが本気で誰かとやり合うところを見たことがあるのか?」


 レイゼの言葉はライラ達にも共感できるところがある。

 フツバはいつも余裕綽々といった感じがあった。

 だから負けないと思っていた。

 何も答えられない。


「フツバ、ここに入る条件を教えてやる。簡単なことだ」


 レイゼが眼鏡を外し懐へしまう。

 フツバもここで何の手柄もあげずに帰ることはできない。

 

「何ですかそれは」


 フツバも真剣な面持ちで聞く。

 レイゼがそれにニヤリと笑い、バン達に命令する。


「お前ら最終試練を最初から行う。分かったら準備しろ!」


 レイゼの命令の内容を聞き、騒めきが起こる。

 全員が渋々用意にかかる。


「なんかヤバそうじゃない?フツバ」


 ライラが耳を疑う表情で用意にかかった人達とレイゼの威圧的な態度で不安になる。


「そりゃあ、ヤバいだろうけどやるしかない。俺が招いた結果だ。俺がきっちりやり遂げる」


 フツバがそう答える。


「きっちりやるって言ったぞ?お前。それでもやらねぇならお前、ガーの弟子って名乗んなや。そんな状態の奴が名乗んのはガーが許しても俺が許さねぇ。勝手に死にやがったんだ。こっちだって勝手にやらせてもらう」


 レイゼのその表情、言葉、全てに嘘はなく本当に名乗れなくなることくらい誰にだって分かった。

 下手すれば殺されてもおかしくないくらいだった。

 宴によって発生したゴミや後片付けは総出でやるとすぐに終わる。

 

「それじゃあ、条件を教えよう。条件は一つ!俺に一撃でも、一擦りでもいいから当ててみろ。それだけだ」


 レイゼが指を立ててそう話す。

 ライラはどんな無理難題がくるのかと緊張していたが思いの外いけそうで安心する。

 いくら五英傑とはいえフツバもガーリンの弟子だ。

 一擦りができないわけはない。


「そのくらいフツバさんなら余裕ですよ!ねっ⁉︎」


 アトラがそう元気いっぱいにフツバに聞く。


「あぁ、俺はいけそうとは思うんだけど。でも後ろの奴らが、ほら」


 フツバも聞いた限りではそこまでキツイ内容には思えない。

 一擦りなんてガーリンにもよくやってきた。

 そこまで問題はないはずなのだが、


「マジでそのままだしちゃったよ」

「いくらなんでもキツすぎんだろ」

「これは積んでんな」


 後ろのレイゼを知る人達の反応があまりに絶望していてその絶望を無視することはできない。


「よし、じゃあかかってこい!フツバ!『逆らえぬ摂理、絶対なる流れ、時須く顕現せず。我七の秒の後、千里を見る!森羅暫見!」


 威風堂々たる詠唱を唱えるレイゼ。

 地面が震えだす。

 レイゼの両眼が糸で縫われたかのように閉じられている。


「来いっ!」


 フツバ達は忘れていたのだ、前にあったのは戦闘特化ではなかったことを。

 水が震え、地が震え、空気が震え、目の前にある生命に自分が格下だと理解させられる。

 これが竹一族の長、「ウア・レイゼ」である。

 



読んで頂きありがとうございました。

フツバという人物に今回は焦点が当たってもいます。

分かっての通り、レイゼさんが見破っているのはあの力のことです。

フツバに一擦りもさせないと言うレベルの実力はいかに⁉︎

あと、竹一族が横文字を使っているでしょうがミスではないのでご安心ください。

それではまた次話でお会いしまょう。

良ければ、感想、アドバイス、質問、お願いします

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