三・五章最終話中 格の違い
どうもビタミンです。
最終話を三分割にした矢先にリアルが忙しくなるというなんともめんどくさいことをしてしまいすいませんでした。
最終話の上中下を一話で納めようとしてたんだから驚きですよね。
書いてみると膨らんじゃうのがよくあります。
怒りきったフツバをあの四人で止めることができるのでしょうか。
フツバはもう一つの人格のようなものになる度強くなっていきます。今はどこまで強くなっているのか⁉︎
男がポケットからナイフを出しスカーフにナイフを押し当てようとフツバに背を向けて走る。
「お前の大事なガキ共は、」
話しながら振り向くとフツバの鉄拳が眼前にあった。
「ぬぉぉぉりゃゃぁぁぁ」
フツバの高速移動の勢いを利用した全力の拳が男の顔面をめり込む。
「嘘だろ、シンブ隊長が一撃でやられたのかよ」
横で構えていたネマーが一切反応できずシンブ隊長、つまりは先ほどまでフツバを煽っていた男が一瞬でスカーフ達にやられた男達の様に伸される。
(なんだ、今のずっとフツバさんを見ていたのに何も見えなかった。早過ぎる)
リィヤは瞬きもせずずっとフツバを見ていたなのに一切分からなかった。
自分なりに目には少し自信があったのに何も見えなかったことに衝撃を受ける。
自分達を教えてくれていた時はどれだけ手を抜いていたのかよく分かる。
「ごめんな、お前達。怖い思いさせたな。スカーフはよくレグレスを残してくれた。そのおかげでここにすぐ来れた。危うくこの村の全部の家探し回るところだったぜ」
フツバが剣で吊るされているスカーフ達を解放していく。
ネマー達幹部とされる者達も油断してたわけではない。
なのに一切動けなかった。
仕掛けたら殺される気がした、特にスカーフ達と接するフツバには。
「いえ、フツバ先生ならすぐ来てくれるって分かってました」
スカーフが安心して笑いと涙が溢れてくる。
「スカーフ、コイツらもこれで解放しといてやってくれるか?俺は後ろでびびって動けない奴らもぶっ倒さないといけない」
フツバが剣をスカーフに渡す。
「でも、フツバ先生戦うなら剣が」
今から戦おうとするフツバが剣を渡すことを不思議に思う。
「コイツらには剣は使わなくて大丈夫だから解放したらリーレンス抱えてなるべく後ろに下がってろ」
もうこれ以上はフツバに何も言わず言われた通り残りの二人を解放して下がる。
「さっ、来いよ」
フツバが安全になった事を確認してフツバの背後でずっと構えていた幹部達に冷徹な目を向ける。
「もう行っている」
フツバの背後からヴェーラを使い忍び寄っていたドウヤが斬りかかる。
この一撃はスカーフ達を襲った時の様な甘い斬撃ではない相手の生命を絶つ一撃だ。
「甘過ぎるわ」
フツバが目の色一つ変えず少し振り返りドウヤと目が合う。
「マズイッ!」
フツバの横ぶりの攻撃が先に届くはずのドウヤの攻撃よりも早くドウヤに届く。
「なぜ気づけた⁉︎俺のヴェーラは『隠密』人に気配を感じさせない筈だ」
ドウヤが自分のヴェーラがフツバに通用しなかったことに驚き瞠目する。
「良いヴェーラなのに使う奴が勿体ないな」
フツバがドウヤを殴った右手をグルグルと回して調子を確かめる。
「おい、お前。周りは敵に囲まれてんのにのうのうとしゃべってんじゃねぇぞ!」
イヨウが手に炎を纏い熱拳を放つ。
「囲ってんなら一斉に来ないと意味ねぇだろ」
フツバがその熱拳を右手で受け止める。
どれだけ引いてもイヨウの拳がフツバの手から離れない。
「なんで掴める⁉︎熱さとか感じねぇガイ野郎かよ‼︎」
イヨウが素手で熱拳を握り続けるフツバに感覚の無いヤバい奴だと思ってしまう。
「熱いに決まってるだろ。我慢してるだけだ」
フツバがジリジリと焼ける右手を苦としていない表情だ。
「なら火力アゲアゲだーーーーー‼︎」
右手に加わる力と共に火力も比例して大きくなる。
「いや、普通に熱いわーーーー‼︎」
フツバが我慢してると言ってるのに火力を上げるイヨウに腹を立て、我慢で競おうなんでせず普通にイヨウをドウヤの方へと投げ捨てる。
もちろん「隠密」を武器とするドウヤは体が細く受けきれず、重いイヨウの下敷きになる。
「よく時間を稼いだ二人ともぉ!これで殺れるぅ!」
遠距離攻撃の筈がなかなか援護して来なかったネマー。
ネマーはずっと金貨に自分のヴェーラを付与していたのだ。
ネマーのヴェーラは触れた金を自由に操るヴェーラ。
しかし一度に多くの金を操るのは負担が大きく時間がかかる。
時間を稼いで貰ったネマーが今操れる金貨の数は四百と二十枚。
四百二十枚を宙に浮かせ、フツバへの一斉攻撃を始める。
「お前の後ろには必死に守ろうとしているガキが居るぜぇ!避けたらお前の代わりにそいつらが死ぬだけだずぇぇ」
後ろに今の所ネマーが分かっているフツバの唯一の弱点を狙う。
というフツバの思い通りになっている。
「お前ら見ておけ、これがお前らの修行の最終形だ!」
この状況、大量に浮く金貨はまるでフツバの修行の葉の様だ。
「こんな時でも修行修行言ってんじゃねぇよぉ!」
その声を合図に金貨がフツバを総攻撃に向かう。
「金貨の一枚一枚がどの方向から向かってくるのかを考えて、到着が早い順に全部掴み取る!」
フツバの目が小刻みに動き金貨の動きを観察する。
フツバの手が増えたかの様に見える高速の手掴み。
一枚たりとも避ける事はせず雨の様に金貨が地面に落ちていく。
「おいおい、嘘だろぉ!もう二百枚は行った筈なのに傷一つ無しかよぉぉ!」
自分の攻撃の半分が終わった筈なのに一つのミスも起きていないことに驚愕する。
枚数が少なくなった事もあり金貨の速度をより上げることができる。
「ス、スゲェ」
スカーフは目の前で起こる人間離れした技にただただ呆気に取られる。
「あれ、私達にも、できるかしら」
目覚めたリーレンスがそう憧れる。
「できるよ、リーちゃん。私達でも頑張ればいけるよ!」
リィヤが憧れるリーレンスに笑って答える。
リーレンスは状況を詳しく知らない筈だがフツバの姿を見ただけで安心しきっているようだ。
「みんなーーー‼︎」
その時後ろからレグレスの声が聞こえる。
振り向くとそこにはライラとアトラとサイトウを連れて走って来るレグレスの姿があった。
「全員無事じゃ無いけど無事そうで良かった。それでフツバは、って何やってんのよアイツ⁉︎」
めちゃくちゃな動きをするフツバの後ろ姿を見て改めてフツバがおかしい事を実感する。
「相変わらず凄いですね」
フツバの足元に落ちてる物とやっている事を見ればなんとなく想像できる。
夥しい数の金貨が全てフツバの足元に落ちている。
「スカーフ!リィヤ!リーレンス!レグレス!」
サイトウが少し遅れて走ってきて四人を抱きしめる。
「すいませんでした。これは私が招いた事態なんです。本当にすみませんでした。君達が無事でよかった」
号泣して泣き噦りながら自分の失態を告白するサイトウ。
「僕はさっきから居たでしょ」
先に会ったレグレスも一緒に抱きしめられて少し気まずそうな傷一つ無いレグレス。
「でも、ほんとに三人とも大事になってなさそうでよかった」
「ありがとな、俺たちを守ってくれて。この結果はお前のおかげだよ」
スカーフが鋭い目つき一つせずレグレスを見て笑う。
ここに着いてから初めてスカーフの笑顔を見たレグレスも積もったいろんな物が涙として流れる。
「うん!どういたしまして!」
レグレスがこんな事堂々言える立場じゃない事ぐらい分かってる。
(でも、きっとこれ以外の返しをしたらまた怒られちゃうから)
スカーフの事が怖いわけではない。
レグレスが笑顔でスカーフが怒る事を考えられるのもこれが初めてだから。
「そろそろ治療に入って良いかしら?」
ライラがそれぞれの感情に落ち着きがついた事を窺って三人の傷の治療に入ろうとする。
その頃ちょうど金貨が落ちる音が止んだ。
「なんでだよぉ、なんでだよぉ、クッソゥだよぉ」
フツバは一枚も金貨を逃す事なく四百二十枚を防ぎきる。
「お前達は全員勿体無いんだよ」
ヴェーラの限界ギリギリを使用したので立つ気力がない。
「今度はちゃんと一斉攻撃か?」
フツバが背後で一時的に行動不能になっていたドウヤ、イヨウ、そしてシンブ全員が死に物狂いでフツバに一泡吹かせてやろうと攻撃を仕掛けてくる。
「最終奥義!炎界解放『火躙格子』」
イヨウがフツバの身動きを制限する為に最終奥義と位置付ける『界解放』をする。
まずこれを最終奥義としてる時点で強さが知れている。
しかしフツバもここにずっといれば体が保たない。
「数の力は全てを捻じ伏せる!」
シンブもどうやらヴェーラを使えた様だ。
能力は『分身』
シンブが一人から二人、二人から四人、四人が八人と人数が増えていく。
そしてドウヤに関していつの間にかフツバの後ろに回ってきている。
後ろに来た時にフツバに気づかれるのが難点だ。
これは実質十対一である。
「先生!」
その戦況に気づいたスカーフがフツバに向かって剣を思いっきり投げる。
フツバは左から飛んできた剣の先を左手の指で掴み、剣を振り子の様に回して柄を右手で掴む。
フツバがそのまま剣を構えたタイミングで三人も同時に仕掛けてくる。
まずは体が細くて弱いドウヤから左脚で飛び跳ねて右回し蹴りを顔面にキメる。
そして後頭部目掛けて熱拳を撃ってくるイヨウの拳を剣でノールックで受け止める。
フツバが弾き返してそのまま回転してイヨウと正面から向き合う。
イヨウの少し後ろから突進してくる八人のシンブが見える。
さっきから足音なども聞いているが誰かが先に動いているなどの本体を捉える特徴はコレと言って無さそうだ。
「「「「「「「「どうやって見分けるんだよ?」」」」」」」」
八人が同時に同じ事を喋る。
フツバの返答は単純で
「分かんねぇなら全員倒すっ!」
次はフツバから仕掛ける。
「竹の四『繚乱散華』」
これはフツバの必殺技の無力神殺の基礎でもある。
体に力を特に加えずただ木から散る花びらの様に不規則に斬りつける、極度の瞬発力が対応するには必要だ。
一歩目を大きく踏み込み一歩で剣の間合いまで入ってくる。
イヨウが斬撃を警戒するもフツバは斬りかかってこない。
斬りかかってこないそう思った瞬間にフツバの剣がイヨウを斜めに裂くように斬りかかる。
この技において最も厄介なのは通常の戦闘時では必ず繰り出されないタイミングでの攻撃。
タイミングさえ不規則なのが厄介で仕方ない。
「あぁ、そうだ。軌道だって斬華の気紛れだぜ」
斜め上に振り上げられた剣は直前で軌道を変えて右から腹を横に切り裂いてくる。
これは筋肉の動きを見ていないと反応できない。
「華」という名前が付いてはいけないほど地味な技だ。
イヨウも左へ飛んで真っ二つにされる事は避ける。
「クッソ!結構深傷になっちまったな」
想像以上に腹を斬り込まれてしまい出血が止まらない。
フツバは避けたイヨウを深追いはせず目の前の八人を千鳥足かのような足取りで斬りつけていく。
抵抗して殴りかかった腕が五本、体を真っ二つにされた物が一体、両足首を斬られて一切歩けなくなった者が一体。
一瞬で人体をも切り落とすフツバの技に一人が声をあげて泣き喚く。
「あぁーーー腕も痛い!体の真ん中が割れるほどに痛い!足首は斬られて足が動かねぇ!」
胸の辺りを掻いて体の中に感じる痛覚を吐き出させようとする。
服を破り、胸と爪から血が出てくる。
どうやら痛覚は一人に集約されるようで一斉に訪れる失禁して泡を吹いてしまう。
その一連の狂気な動きをフツバは狙ってやった訳ではないが申し訳なくなる。
幸いにも息はしているみたいで死には至ってないようだ。
次の瞬間、辺りを包んでいた炎界が突如消え去る。
「今度は何をするつもりだ?」
フツバが炎が消えた先、つまりはイヨウの左手に注目する。
「最終奥義は『炎界解放』って訳じゃねぇんだよ!炎界解放は熱気をここに充満させるためだ!貯めた熱気をこの左手に集中させる。名付けて「集火拳突」」
周囲の空気さえも焼いてしまいそうな燃え上がる左手、先程までとは比にならない火力だ。
「名付けてって事は今考えたのかよ」
フツバがイヨウの戦闘ポテンシャルの高さに感服する。
「お前を倒す為に考えてやった技だ」
「これゃあマズイな」
フツバも流石にもう手では受け止めきれない。
「オトメ、フツバ、お前を、殺す」
後ろで立ち上がり殺気に体を奮い起こすドウヤ。
前にイヨウ、後ろにドウヤ。
同時に降りかかる攻撃。
(どうすんだよ、先生!)
その状況が危険なのではないかと思うスカーフ。
しかしこれには起死回生の一手がある。
それは
「後ろに跳ねる事っ」
フツバがピョイと後ろに飛んで避ける。
そしたら後は勝手に二人がぶつかるのみだ。
「お前、なんでそんなとこに居んだよぉ⁉︎」
イヨウが目の前に現れたドウヤにもう止められない最終奥義がぶつかる。
ドウヤの斬りつけようとしたナイフもイヨウの腕に突き刺さる。
イヨウの技は予想通り爆風を起こす。
熱風が周囲を駆ける。
瞬間的に温度は二百度を超えた。
「おぇほっ、おぇほっ!埃が凄いんだわ」
フツバが立ち込める砂埃の中から咳払いをしながら出てくる。
「お前の弱点は味方も気づけないことだな」
よく爆ぜなかったと褒めてやりたいがドウヤは右頬が腫れて気を失っているのに無意味に話しかける。
この戦いの時間僅か十五分弱。
スカーフ、リーレンス、リィヤが本気で戦っても圧敗してしまった相手を右手の些細な火傷、それと埃でくしゃみが止まらなくなるという被害だけで勝ってしまった。
その大爆煙により崩壊している倉庫に一人の男が拍手をしながら入って来る。
「素晴らしぃ!オトメ・フツバ!」
読んで頂きありがとうございました。
これにてフツバ対四人は終わりです。
今回は敵にヴェーラ使いが四人もいるというもうインフレしだしたのか?と思われるかもしれませんがまだインフレさせる気はありません。
次で説明しますがこの「鷹の牙」っていうのがなんなのか。
最後に入ってきた男は悪魔野郎ではありません。
次回ちゃんとした最終話をお楽しみに。
それでは次話でお会いしましょう。
良ければ、感想、アドバイス、質問、よろしくお願いします