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三・五章最終話上 最後の一日

最終話が想像の三倍長くなったので三分割します。

たぶん五千字オーバーか余裕でそれ以上になりそうだったので分けさせて頂きます。


「お前ら!大丈夫か⁉︎」


 フツバが全速力で森を道順なんてガン無視で帰って来る。

 寮内は静まりかえっていて返答が返ってこない。

 扉の前に広がる光景に自分の愚かな行動に激怒する。

 突き破られた天井、割れたガラス、壊された扉、黒焦げになっている床、廊下と中庭に残っている血痕。

 この場の痕跡は誰がどういう経緯でつけたのかフツバには到底検討もつかなかった。

 失踪した四人の居場所さえ分からない。

 自分の弛み切った考えに怒りが湧きがり続ける。

 

「グスッ」


 自分を罰している時間はない事は分かっているが手詰まりな状況に立ち尽くしているフツバの上階から鼻水をすする音が聞こえる。


「誰かいるのか⁉︎」


 フツバが階段を駆け上がりすぐにすする音の音源へと辿り着く。

 扉を勢いよく開けるとそこには丸まり泣いているレグレスが居た。


「レグレス‼︎」


「フチュバしぇんしぇい」


 フツバがレグレスを抱き込み泣くレグレスを必死に抱き抱える。

 フツバも思わず涙を流してしまいそうになるが、まだ一人しか確認できていない。

 ここは師匠の教えを守り、涙をなんとか抑え込む。


「他のみんなはどこだ?」


 フツバが唯一襲われた現場を知っている号泣するレグレスに話を聞く。

 レグレスはなんとか要点をまとめて必死に伝える。

 

「兄さんが、僕は隠れてろって。それで僕は必死に隠れたらみんな変な能力使う奴らにやられちゃって。それでそれでそいつらは東倉庫に連れて行くって言ってました。僕は兄さん達を守らないといけないからぁ」


 泣きながら必死に必死に伝えてくれるレグレス。

 目の前で兄弟や友人が痛ぶられていくのを見るのはさぞ辛かっただろう。

 フツバも目の前で大事な人を無慈悲にも殺されたのでよく分かる。

 声を出さずに耐える事がどれだけ辛かったか、信じてる先生が中々来てくれないことがどれだけ不安だったか。


「ありがとうな。もう安心しろ、レグレス。東倉庫だな。ごめんな、レグレス。遅れちまって。

ちょっと一掃してくるからここで待っててくれ」


 フツバはこの自分の中で煮えたぎる怒りをアイツらにぶつける事に今決めた。

 フツバの最後の一声にはかつてない程の怒りが感じられてレグレスは少し怖かったのに何故かもう何の不安もなかった。


「フツバ先生、一人で突っ込むのは危険だと思います。せめてお二人を待たれた方が」


 レグレスは切磋琢磨に修行していたみんなが一瞬でやられたのを目にしてしまった。

 そんな奴らの中に一人で突っ込むのは危険だと思ってしまう。


「大丈夫だ、レグレス。俺はお前らの先生なんだぜ。それにアイツらは動けてちゃんと戦えてたんだろ。ちゃちゃっと終わらせて来るからそこで二人を待っててくれ。そんで二人が来たら東倉庫に一緒に来てくれ。俺は教え子達迎えに行ってくるわ」


 フツバレグレスに笑ってそう呼びかける。

 内心の煮えたぎる怒りを抑えて、抑えて。

 レグレスはその敵地へ赴くフツバの背中をこの先一生忘れる事はないだろう。

 その背中は人生中で誰よりも大きかったのだから。

 フツバは地面を一蹴りするとこの村の東にあたる部分へ飛んでいく。

 


ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーー


「何やってんだよ‼︎ガキ相手に三人が伸されてさぁ!」


 色とりどりで派手な格好をした男がスカーフ達に負けた三人を怒鳴りつけている。

 一度舌打ちして唾を一人に吹っかけた後、後ろを向き十字架に吊るされる三人の子どもの方を見る。


「お前たちにはオトメ・フツバを討伐する際の人質になってもらうから」


 男が作戦の順調な足取りにニヤつきが止まらない。

 

「あの人は俺達なんかに影響される訳ないだろ」


 スカーフはその浅はかな考えの男を睨みつける。


「アイツはきっと躊躇うさ!なんでもお前らに必死に剣を教えていたらしいじゃねぇかぁ!笑っちゃうねぇ、追われる身でありながらガキに剣を教えるなんて!そんな馬鹿はきっと躊躇うさ!」


 睨みつけるスカーフを笑い飛ばし、フツバをとことん馬鹿にし続ける。

 

「それ以上言うのは許さない!」


 意識の無いリーレンスの代わりにリィヤがそう吠える。

 リィヤの表情は何かを迷っている様で決めきれない表情だった。


「許されなくて結構だ。後で売り飛ばされるんだから勝手にしてくれ」


 男にはリィヤの声はノーダメージである。

 部屋に一人の下っ端の男が入ってきて男の耳元で何かを伝える。


「良かったな、お前達!お前らが大好きなフツバ先生がこっちに向かっているらしいぞ!どうやって場所を知ったかはしらんがまぁ良い。この周りに全員を潜ませておいた。入ってしまえばもう逃げる事は不可能だ!」


 男は予め付けておいたフツバの行動監視係からの連絡をスカーフ達にバカ笑いをしながら伝える。

 

「先生舐めてんじゃねぇよ、お前達は終わってるぞ」


 スカーフがフツバに喧嘩を売った者の末路を予言する。


「終わってるだ?こっちを舐めてんじゃねぇよ!分かるか⁉︎この世において最も強い力は数の力だ‼︎アイツ一人が突っ込んで来ても俺達がすぐに沈めてやんよ!

ほれ、来いよ!オトメ・フツバ!お前の大事な桃髪のクソガキどもが危ねぇぞぉ!ほれ、こ、い、よ」


 その瞬間、巨大な斬撃が凄まじい轟音と共に倉庫を真っ二つに割る。

 

「こ、い、よ」


 一瞬の間に起こったことに脳の制御は追いつかずそのまま煽りを言ってしまう。

 男の幹部達が寝ていた者も全員が剣を抜いたり拳を構えたりと警戒態勢に入る。

 その目の前で起きた人間ではあり得ない様な威力の攻撃にスカーフ達も男達も声が出ない。


「来ること分かってんならもっと対策しとけよ。ほら、周囲の奴らが全員やられちゃってんじゃん」


 砂煙が立ち込める室内に一人の青年の影が浮き出てくる。

 

「な、何しやがった⁉︎」


 男が規格外の威力に怯える。


「俺を倒すつもりなのに俺の手の内も知らねぇのかよゴミ共。全員でいいからかかってこい全員潰すって決めてあるから」


 現れたフツバの表情は鬼よりも怖く、優しさという物がフツバの中から消え去っている。

 いつも怒りながらも優しさがあったフツバとは思えない表情だった。

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