一章4話 決意の理由
「聞きづらいけど、その僕が担当する事件ってなんなんですか?」
フツバが疑問に思った事を口にする。
急に騒ぎ出し、なんの事情の説明もないに揉め出されてもこちらも困る。
「そうか、お前にはまだ説明していなかったな。」
悲しげな顔でアルバが言う。
「実はだな、この基地にはお前が来る一週間前に「スノルマン中佐」が殺されたんだ。それもそいつは三星だった。それが殺されたとなれば一大事だ。」
(中佐が殺された!何者何だそいつ⁉︎まさか…)
「でも、そんな噂一度も…」
「そうだ、まだ情報を出していないんだ、国は一切な。」
「待ってください。三星がやられるほどの敵が現れたのにそれを何も言わずに放置してるんですか?」
(こんな事ありえない。やっぱりアイツが)
「嫌、放置はしていないお前は思わんかったか、この部隊が何故こんなに強くなりたがってるのかを?」
フツバは首を横に振る。
「まぁ、無理もない初めての所属だ。違和感を感じないだろう。ここの基地は他と比べるとかなり修行に力を入れている。」
「そうだったんですね。ただ、強くなりたいと言う意志は伝わっていましたが、それがそんな理由だとまでは流石に」
一ヶ月修行する中でなんとなく熱意的な物は伝わった。
ただ、その理由がここまで酷な物だとは。
「でもな、そんな中でこの事件で唯一国が取った対処がある。」
「なんですか⁉︎」
メルトが驚き急に入ってくる。
あの様子だと聞かされていなかったのだろう。
「それはな、お前だ。フツバ」
「俺ですか⁉︎」
「お前も不思議に思っただろ、そこまで優秀と言われているお前がこんなボロい基地に配属された事を。」
「確かに、最初は不思議でしたが、隊長が何か手を回したのかと思ってましたが、そう言うことでしたか。」
「みんな、よく聞いてくれ。この事件は我々が解決するべき事件だ…だがしかし相手は三星を殺すほどの強さだ。我々には残念ながら今そいつを倒す力は無い。」
皆悔しそうな顔して下を向いている。
特に隊長は唇を噛みそこから血が出ている。
「この事件の解決は三星を倒せるフツバに託そうと思うんだ。悔しいとは思う、だが皆の知ってる通りフツバの強さでさえ、三星とギリギリだったんだ。すまない。こんな隊長を許してくれ。」
心の底からの謝罪だった。
「何も、隊長が謝る事ないですよ、僕たちが弱いからいけないんです。」
いつも、軽い口調のガスでさえ悔しそうだ。だかそこに、
「待ってください!僕はもう犯人を倒せるレベルまで強くなっているはずです。二星とは言え、きっと倒せます!この一ヶ月間そのクソ野郎を倒すために修行してきたんです!」
メルトが声を荒げる。
「あぁ、言いたい事は分かる。お前がこの事件解決のためにどれだけ修行してくれていたか我々は見ていた。正直に言おう、お前なら倒せる可能性は十分にある。」
「なら、私が」
「だが、しかし国は我々のこんなボロ部隊の敵討ちなど気にしてはくれんのだ。」
「どう言う事ですか⁉︎今すぐに出発し、探し出せばまだ試験に間に合うはずです。」
「あぁ、間に合う。だがな、お前には別の命令が出ている。」
「なんですか?その命令って!」
「特異体質特訓だ!」
その名を口にした瞬間皆が驚愕する。
「トクイタイシツトックン?」
フツバがキョトンとした顔で聞く。
「あぁ、これはなここ数年前から始まった特別任務だ。選り優れの騎士以外参加はできない。お前にとっては苦痛かもしれんが、この任務だけは絶対に断れん。」
「なんで、よりにもよって唯一断れない任務が俺に下されるだよ!!」
メルトが床に剣を叩きつける。
怒声が基地中に鳴り響いた。
------------- ------------ ---------------
それから、みんなは解散することになった。
それぞれが悔しい思いを胸に抱きながら帰っていく。
そんな中フツバは隊長と二人きりで残らされた。
「フツバ、分かっての通りお前の今回の試験はみんなの思いがこもっている。俺からもお願いだ、あいつを中佐を倒した奴を倒してくれ」
頭を下げる。
「ちょっと、そんなことやめてくださいよ。皆の顔を見てたら、最初からその気になりますよ。僕は中佐の事を何も知らない、けどアイツらがあんなに必死で修行するほど慕われていた人なら迷う事は何もありません。きっと、嫌必ず倒して、その首討ち取ってやりますよ。」
静かな声で力を込めて言う。
「あぁ、頼んだ…頼んだぞフツバ」
自分の不甲斐なさを憎むように彼は言ってくる。
フツバ、初めての事件にして、初めての星認試験。
迷う事は何もないただ、必ず成し遂げると言う決意はできた。
みんなのために必ず、必ず。
だが、フツバは誰も知らない。
この事件が全ての始まりであることに、まだ知らない。
世界の歯車はもう狂い出している