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三・五章21話 留守番

 フツバが来てから二週間が経った。

 スカーフはドンドン強くなってきており、切葉の修行もこなせる様になってきていた。

 

「いくぞっ!」


 フツバがその声と共に空へと葉を撒く。

 それにスカーフが刹那の思考で最適ルートを暗算する。

 あとはそれに沿って、


「剣を振るだけだ!」


 放たれた斬撃は三つ。

 それぞれがスカーフの思い描いた線をなぞる。

 スカーフの剣風で葉が地に落ちる。


「結果、十六枚!」


「ヨッシャァァァァァァ‼︎」


 スカーフが雄叫びをあげる。

 

「凄っ!」


 まだ八枚が最高のリーレンスが驚嘆する。

 同じく八枚のリィヤは笑って拍手してくれる。


「やってやったぞ!どうだ先生、見たか!」


 スカーフが額に汗水垂らして言う。


「見たよ。合格だ。朝から体力練すっぽかしてきてくれって言うから何かと思えば。でも、よく三日でここまで仕上げたな。努力の賜物だな」


 フツバ達はスカーフが早朝や夕食後に一人で修行してることは知っていた。

 しかし三日で仕上げるとは大した物だ。

 この基準がレグレスだった事がなによりもスカーフにとっては大きな事だったのだろうが。


(まぁこれを一発でやってのけたアイツも中々の逸材ではあるんだけどなぁ)


 実際の所フツバは十枚にするつもりだった。

 なのにあの剣術天才薬師は十五枚というバケモノ記録を出してきた。

 

「まだこれは難易度一だからあんま調子は乗んなよ」


 フツバがまだ興奮冷めやらぬスカーフに予め釘を刺しておく。


「それを言わないでくださいよ。次はどんな難しいことするんですか?」


 スカーフはどんな地獄が待っているのかと嫌がる目ではなく楽しみな目をしている。

 フツバは思わずその目を見て微笑んでしまう。

 

(強くなる事が楽しいですっ!って思いっきり伝わってくるな)


 そんなドM気質に気づきながらも次の地獄は伝えなくてはならない。

 

「正直言ってレベルは桁違いだから覚悟しても足んないかもしんねぇぞ」


 フツバの言葉を聞くと三人はなんだか目を合わせてアイサインで話し始める。

 フツバは何か言うことでもあるのかと黙って待っている。

 するとスカーフが申し訳なさそうに前に出てくる。


「何?」


「あの、れべるってなんすか?」


 フツバがそう言われて自分のミスに気づく。


「あれ、俺レベルって言っちゃってた?」


「はい、前までも何度か」


 スカーフの申し訳なさそうな態度は今までのフツバの話を完全に理解せずに聞き流していた事へなのだと分かった。

 

「あのだな、レベルってのは難易度みたいな感じだな。すまんな、母国語が出たわ」


 フツバも最近は抑えられていたと思っていたのだがふとした時に出てしまうのはやはり小さい頃に覚えた物は大事ということを分からせられる。


「まぁ、何はなんとも次の修行は、」


 フツバがそんな慣れから出たミスを再度反省しながら話を続けようとしたその時


「フツバさーーーーん!」


 森を登ってくるレグレスの声が聞こえてくる。


「今度はどした?」


 走って慣れない山を登ってくるレグレス。

 もう蟠りも小さくなりつつあるようでスカーフも嫌な顔はもうしない。

 レグレスは相当急いできたらしく着いても息があがっている。


「何?レベルについての話?」


 フツバが場繋ぎの為に茶化す。

 

「違います。サイトウが早急に来てくれってフツバさんを呼んでいます」


「俺を?分かった、お前達も一旦寮に戻るぞ」


「うすっ」「「はい」」


 二つに分かれる返事の仕方。

 フツバは早急にサイトウの元へと向かった。


ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーー


「サイトウ何?」


 レグレスに伝えられたサイトウの部屋に前で待っていたアトラとライラと共に入る。

 


「実はですね。昨日買い出しに行った時に村の人にですねフツバさん宛に依頼がありまして」


 サイトウが昨日フツバの強さを噂で知った人から依頼があったことを話す。


「それはなんで断らなかったんですか?」


 単純にフツバ達と村の人との接点を多くする必要性がフツバ達にはわからない。

 普通に断れば良いのだから。


「それはですね、報酬が良いんですよ」


「よし、行こう」

「そうね、行きましょ」

「ソンナニオフタリガイウナラシカタナイ、行きましょう!」


 という訳で満場一致で行くことになった。


ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーー


「お前らはお留守番だ。分かったか、別に修行は各自でしといてくれて良いから。ここはもう安全なんだよな、アトラ?」


 フツバがお留守番になる子ども達を集めて全員に話す。

 ここの寮に来るには正しい道を通らなくてはならない。

 間違った道を通ると反応する人感システムもアトラが点検してくれたらしく準備は万端だ。


「警備なんて無くても俺たちが警備してやるから大丈夫ですよ!」


 スカーフが切葉修行を乗り越えた程度でやはり調子に乗っているらしい。

 今だけは努力したのもあるし見逃すとしよう。

 

 この子どもたちだけを残して行くという判断はフツバがこの子達と親しくなりすぎ、教える立場が故にこの子達は戦えるから大丈夫という怠慢だった事に後に気づく。

 今までのフツバならきっと一人くらいこの場に残していたのに。


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