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三・五章18話 山あり谷なし

最近サボりすぎててすいません。

こっから卍解して頑張ります。

午前と午後にあげるつもりではいます。

流石に章まとめもあるしヤバいんです。

夏休みって人増えやすかったりするんでしょうか。

わからないのでがんばります。

 月が出て、辺りの闇を照らしている。

 月光は舎の屋根に座る一人の少年に向いている。

 

「ほんとにここにいたか」


 その少年の後ろから梯子で屋根に上ってくるフツバ。


「フツバさん、何でわざわざこんな所に?」


 日中の出来事を忘れている訳はないのに忘れている演技を何故かしてしまう。

 これはきっと夢だと思いたい心理の影響だろう。


「そりゃあ、お前あんな風に泣かれたら先生としては来ざるをえないだろ」


 フツバはやはり日中のことを覚えている。

 そう、少年レグレスはフツバに全てを指摘された後泣き出してしまったのだ。

 もちろん戦いは中止、大泣きするものだからその後の諸々も中止となった。

 ライラ達曰く、サイトウが泣き止ませてくれたらしい。

 そしてサイトウから時々屋根上に上ると聞いたので来てみた訳だ。


「何であんなに泣いたんだ?」


「……」


 無言しか返ってこない。

 

「分かった、聞き方を変えるよ。何であの才能を隠してた?」


 まだ戦闘は初心者なのにフツバの殺気の中でも動けるのは稀だ。

 

「それはみんなが動けてなかったから」


 レグレスの顔は影でよく見えない。

 

「みんなが動けてなかったから自分も動けないフリをしたのか。いや、そんな話じゃないだろ?」


 フツバが何か思い当たる節がある様子だ。


「それは、その、あの」


「あぁ!もうゴニョゴニョ言うな!分かってるよ、お前は動けないどころか剣を学びたい所さえ合わせてるってことくらい!そうだろ?」


 フツバが言うか言わないかでゴニョゴニョ喋るレグレスに嫌気がさし、自分の今の考えを言う。


「……僕も、別に、」


 心の底では、そんなことないと言いたいのに言葉に出ない。


「レグレスは嫌われるのが怖いんだろ。特にスカーフに」


 二人の間には何か軋轢があることは間違いない。

 しかし、それはスカーフからレグレスへの一方的な嫌悪だ。

 レグレスはスカーフのことが大好きなのだ。

 苦痛の日々にいつも励ましてくれ、そして守ってくれた。

 レグレスは大好きなのに、スカーフはレグレスのことが嫌いだ。

 これ以上は仲が悪くなりたくないからレグレスはスカーフの好きな物を自分も好きになろうとするのだ。


「お前が本当にしたい事はなんだ?」


「……」


 また無言の返答だ。

 いい加減にフツバも飽き飽きしてきた。


「じゃあ、お前は剣を習いたいのか?ここにはスカーフもいねぇから好き答えろ」


「……」


「習いたいのか⁉︎答えろ!」


 フツバが二回目は語調を強めて言う。

 強く言うと、レグレスはもうこの事から逃げることができないと悟り、首を横に振る。

 少しは質問に答える気にはなってきたらしい。


「それじゃあ、剣じゃなくともなんらかの形で戦闘に関わりたいか?」


 これもまた首を横に振る。


「やっぱりお前、座学が好きだろ?」


 フツバは最初から目星はつけていた。

 レグレスの動きが止まる。


「変だと思ったんだよ。アイツらが外の情報を本から見つけたって。アイツらにさっき聞いたら図書室の場所さえろくに分かんなかったんだぜ。てことはあの時いなかったレグレスが見つけたってことは分かった。

そんで俺がさっき図書室に入って外の情報が書いてある本を探してみたがほとんど置かれてない。十分ぐらい目を通しただけだけどあの中から見つけ出すのは長く通ってないと無理だ。定期的に通ってたんだろ?」


 図書室には千冊程の教養本がある。

 外の情報を与えまいとしていたサイトウは相当糸を張っていたのだろう。

 その糸を掻い潜って忍び込んだ数冊をあの中から見つけだした。

 好きなじゃないとできるわけがない所業だ。


「僕は怖いんです。スカーフ兄さんと違う道を辿るのが怖いんです。今まで兄さんの後ろについて行くと気が安らいだ。兄さんが前を張って歩いてくれたから。こんな怖い世の中でもやっていける気がした」


 レグレスが重い口をやっと開ける。

 もう自分がスカーフ達に隠してきたことがフツバには見透かされていると思ったのだ。

 フツバにも少し共感できる感情があるからこうしてすぐに理解できた。

 

「だけどここに着いたら心が変わり始めたんです。保護されてみて初めて気づいたんです。僕は兄さんのやりたい事をやりたくないってことに。おにごっこや戦いごっこやどんぐりの投げ合い一番嫌だったのは竹槍おにごっこです」


 レグレスが落ち込みながら話すが最後の一つに関しては名前からしてフツバもやりたくない。

 どうせスカーフの考える事だからタッチではなく竹槍を刺されるのだろう。

 死者が出てもおかしくない。 

 フツバはその内心をグッと堪えてそのままレグルスの話に相槌を打つ。


「そんな嫌な遊びにも僕以外の二人の子はついて行けてる。リーレンスなんか寧ろ楽しそうだった。だからこれを僕も楽しまなくちゃいけないって無理してついて行ったんです。でもやっぱり嫌な事を全力ではできなくて中途半端になって。そん中途半端で乗り気じゃない僕を兄さんは嫌っていって。かと言ってやめるともっと嫌われる気がしたからやめれなくて。そんな日々が続いていた時、」


「アイツが来たのか」


「はい、氷野先生です。あの人が現れてみんなドンドン過激になっていった。木刀で戦い、鍛えて、血気盛んになる。それについて行けなかった」

 

 精神的に相当苦痛だったのだろう。

 レグレスの表情があった時の木陰に隠れていた時よりも恐怖している。


「それに氷野は何も言及しなかったのか?」


「気づいてなかったんだと思います」


 レグレスはそう返すがそんな訳はない。

 フツバ達の予想が当たっていた場合氷野は相当な手練れだ。

 レグレスが戦う事を嫌っていることくらい容易に気づけるはずだ。

 それを気づかないフリをしたのは演じているレグレスの為か、それともそれでも尚教えておきたかったのか。

 それは氷野本人に聞くしかないだろう。


「辛い日々は氷野先生と一緒に失踪してはくれなかった。みんなは修行に夢中になった様に打ち込みだした。嫌だったけど耐えました、ずっとずっと耐えました。そしたら急にフツバさんが現れた。その上一日で僕の嘘を見抜かれてしまうんだから、僕は嘘をつくのさえ中途半端だったってことに気づかされました。僕にはやはり何もできないんだって」


 思い詰めた表情のレグレス。

 それをフツバは横に座り、微笑んで見ている。

 この微笑みはフツバの性格の悪さという訳ではない。

 フツバはこうなると分かってここに来た。

 こうなる事が重要なのだ。

 人生山あり谷あり、なんて言うがフツバはその言葉には反対だ。

 だって人生の悲しい部分や辛い部分は全部バネになるのだから谷なんて存在しない。

 人間はドンドンドンドン高みへ昇っていくものなのだから降っている暇なんてないのだ。

 だから誰にだって思い詰めていいのだ。

 フツバはより強力なバネにしてあげるのが仕事だ。

 決して、抱えてフツバが飛んであげるのではないのだ。


「レグレス、お前にいい役職があるんだが聞くか?」


 フツバが落ち込んだレグレスに笑って話をふっかける。


「僕にできるんですか?」


 自信を喪失したレグレスの声は弱々しい。


「できるぜ。それもレグレスのスカーフ達について行きたいって思いも叶えれる」


「本当ですか⁉︎」


 レグレスはそんな夢のような役職に目を少し光らせる。


「待て、教える前に一つ誓わせなきゃならねぇ」


 フツバがレグレスの目の前に人差し指を立ててレグレスの顔を覗き込む。


「な、な、何ですか?」


 急に距離を詰めてきたフツバに慌てるレグレス。

 口を開くと同時にフツバの表情は笑顔から澄んだ黒瞳となり、真剣な物へと変わる。


「今後中途半端な事はせず、自分が今するべきことに全力を出して取り組むって誓え。目の前の事に全力でだ」


 フツバが真っ直ぐにレグレスを見つめる。

 レグレスは口がモゴつくが時間をかけて言葉を紡ぎ出す。


「全力でやります。もう周りに合わせず全力で取り組むって誓います」


 言葉はまだ弱々しいがレグレスの変わりたいという信念が伝わってくる。

 フツバの表情がまた笑顔へと変わる。


「よし、じゃあレグレスは明日から剣術の練習は参加しなくていい」


「え?」


 レグレスはフツバの発言に何故か耳を疑ってしまう。


「当たり前だろ。だって一つの事をやるって誓っただろ。参加しなくていいに決まってんだろ」


 フツバがレグレスのさっきの話を忘れたかのような反応がおかしくて笑ってしまう。

 レグレスはてっきり剣術は前提で別のことをするのかと勘違いしていた。

 フツバはスカーフ達について行けると言っていたのだから。


「参加しなくていいんですか?」


 もう一度同じ事を聞いてしまう。


「だからいいって。勿体ねぇ実力だとは思うけど別に来なくて大丈夫だ。別にやる事があるんだからな」


 フツバが脳の処理が追いついてないレグレスを見ては笑ってしまう。

 ちゃんと処理するまでに一晩はかかりそうだ。


「俺はもう寝るから、お前も早く寝ろよー」


 フツバがそのまま立ち上がり、上り梯子の方に歩いて行く。

 

「はぃ、すぐに」


 十年近く自分を縛っていた鎖から放たれた事に声が震えている。

 泣いているのかはフツバには分からない。

 ただレグレスの背中はあの時の様に震えていた。

 


 


 

 


読んで頂きありがとうございました。

最近後書きも書いてなかったので久しぶりに書こうかなと思います。

もう初投稿から一年以上経ち、想定以上に話が進んでいない訳です。

このままだと何年かかるか分かりません。

一年目は番外編を書けるほどキャラも居なかったので何もできませんでしてが来年こそは何か番外編を書きたいです。

サボり気味な僕ですか読んでくださってる方ブクマしてくれてる方改めてありがとうございます。

人生山あり谷なし、こっからの章がこの物語の本番に入っていきます。

定期的に書く癖をつけれる様に頑張ります

良ければ感想、質問、アドバイス、よろしくお願いします

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