三・五章14話 視聴覚紛失
どうもビタミンです。
この章はもうあと六話ぐらいで終わる予定です。
ズレで長くなることがあるかもしれませんが終わったら四章に入ります。
これは予言通りあの人の話です。
この章でフツバの戦いに関する考え方を書けたらなと思います。
「俺はやっぱ納得してねぇぞ!」
木刀片手にフツバへ不満をぶつける少年。
「まだ言ってんのか⁉︎もう中庭まで来たんだしいいだろ」
しっかり集まった全員の前で口論を始める。
「俺は氷野先生が好きなんであって、お前を好きな訳じゃない‼︎」
頑なに氷野先生を大事にする少年。
「それも言ったろ。後悔するかもしれないのはお前らだって」
さっきの話の起こりうる未来の話をする。
「その言葉には納得はした。だからここまでは来たけどここからは別だ」
何か狙いがある様な素振りだ。
「んだよ、めんどくせぇ。じゃあ、何して欲しいの?」
教える気持ち万端だったフツバは早く修行を始めたい。
「俺と戦え」
「はぁ?お前昨日のこと覚えてる?昨日は瞬殺だったじゃん」
少年は昨日、奇襲で負けた時のことを思い出す。
「今度は本気でいく」
意地でも戦いたい少年は有りもしない「本気」とやらを作り出してしまう。
「昨日も本気みたいだったけど、」
フツバは普通に昨日の言動から少年が本気だったことを掘り返す。
奇襲の方がフツバのことをよく知らないので本気も出しやすいとさえ思う。
「うるせぇ!その代わり俺は一発でもお前に当てたら勝ちだからな」
理詰めをされる前に早々とルールを決めていく。
「その代わりって何の代わりだよ。まぁ、いいけどもっと面白くしてやろうか?」
フツバが不敵に笑い、余裕を見せる。
「何するつもりだ?」
明らかに良いことではない匂いがするその笑顔に少しびびってしまう。
「俺は手足を縛るし、目も見えなくする、更に耳も聞こえなくするっていう条件付きだ」
「そんな事していいのかよ?」
思ってたのとは裏腹にちゃんと自分が有利になる条件で安心する少年。
「いいよ、俺は」
フツバは特に問題はないと言った表情だ。
「じゃ、じゃあ、それでいこう」
少年は勝ってしまいそうな好条件に逆に躊躇してしまう。
用意されたロープや目隠し、耳栓でフツバの手足、視覚、聴覚は無力と化す。
条件の所為で不気味な見た目になってしまったが到底戦える状態とは見えない。
「りゃったりなさい!あんな状態の奴なんてボコボコよ!」
フツバの惨めな格好に勝機を見出したのか少女が独特な言葉を使って応援する。
少年はもうフツバの目の前で木刀を構えている。
勿論フツバには聞こえていない。
他二人は何かを観察する様に二人の様子を見ている。
「いつでも来ていいぞー。開始の合図とか俺聞こえねぇから」
フツバが首を左右に鳴らしながら余裕な様子。
「よっしゃーーー‼︎いったりなさい!あんなのグルグル動き回れば勝ちよ」
飛んで応援する少女のツインテールは揺れており可愛い髪型目立っている。
しかし、少年は一向に動こうとしない。
警戒してるのか一切動かない。
筋細胞一つも動かない。
「どしたー?早く来いよー」
フツバが暇で暇で仕方なくなり、ベロを出して煽り出す。
「何やってんのよ⁉︎」
応援しても、応援しても動かない少年に怒り出す少女。
「まさかフツバ!」
遠くでその一連の流れを見守っていたライラがその異変にいち早く気づく。
今のあの少年に親近感が湧いたのがその証拠だ。
少年は一切動かず、汗がドンドン吹き出してきている。
「ぅ、ぅ」
少年の口が僅かに動き出す。
「何?なんて言ってるの?」
小声のあまり聞き取れなかった。
「ぅ、う、うご」
「何言ってんのよさっきから。うごうごって舐めてると負けるわよ」
「うご、動かないんだよ!」
少年が気合いで聞き取れる程の声を出す。
「動かないって何で⁉︎」
その言葉に何か足元に細工をされたのかと疑う少女。
もちろん何も見つからないし、まず体全体が動いていないので細工されているとしても足元ではない。
「フツバがやったのよ」
ライラが迷宮入りしそうなのを見て、説明の為に少し前に出てくる。
「フツバって、アイツがズルしたのか‼︎」
「ズルじゃない。れっきとした戦い方よ。アトラ、フツバの耳栓取ってきてあげて」
ライラがもう勝負の勝敗が決したと悟る。
「まだ終わってない!」
ツインテールの少女はこの状況を理解しきれていないので反発する。
「もう無理よ。君も動こうとするよやめときなさい。無駄に疲れるだけだから。これは経験者の私から言っといてあげる」
フツバの耳栓をアトラが取る。
「フツバ、もう終わったわよ」
ライラが呆れ半分でフツバにそう告げる。
するとフツバは嬉しそうな表情になる。
「よかったー。失敗したらどうしようかと思った」
フツバも失敗していたら負けていたので一安心する。
「もう解いてあげなさい」
「あぁ、忘れてた」
突如、少年がその場で崩れ落ちてへこたれてしまう。
「何をしたのよ?」
少女はどれだけ時間が経っても当たり前に理解できない。
まずこの少女はこの状況の一番肝心な所を知らない。
「殺気って言ってね、人と戦う時にでちゃう奴があるらしいのよ。それを自分よりも格下の人に当てると格下の人は一切動けなくなるの。私も少し前にキモい奴にやられたわ」
「さっき?」
初めて聞いた単語の説明を受けてもイマイチ理解できない。
ライラも実際の所フツバに説明されただけでそこまで理解している訳ではない。
「つまりフツバとあの子には触れずに勝ち負けが決まるほどの差があるってことよ」
ライラが最も簡略化した意味を教える。
その言葉が聞こえたのかフツバが少年が居るであろう方向を見て、
「俺の勝ちだ、少年。少年って言うのもなんだ。名前をこの際教えてくれないか?」
フツバが今まで敢えて聞かずにいた名前を聞く。
物を教える上でそういった信頼関係は必要になってくる。
「トラトス・スカーフ。どっかにいるクソ親が付けた名前だ」
「よろしくな、スカーフ」
読んで頂きありがとうございました。
ここで一つ言いますと氷野先生はこの章より前に出ているという事に気づいている方はいるのでしょうか。
前の話は本当に一瞬だけだったので覚えてないかもしれません。
この作品は伏線が何個もあるので以前に違和感を感じた部分が有ればそれは伏線かもしれません。又は僕のミスかもしれません。
どちらでもいいので不自然な所があったら教えていただけるとありがたいです。