表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/217

三・五章7話 複雑

どうもビタミンです。

最近は忙しくて他の作者さんの作品も読みたいのに全く読めていない状態です。

書く側になってから読んだら絶対感想書こうと決めました。

僕の作風にあったオススメのダークファンタジーなど有れば教えてください。



「アイツら本当に只者だと思うか?」


 全身黒一色の忍者のような風貌をした男が帰り道でネマーに問う。


「アイツらってぇ?」


 まるで心当たりがないかのような反応をするネマーに呆れる。


「さっきの三人だ。サイトウの客だというから金も払われたし容易く見逃したがアイツらの特にあの男、並大抵の強さではなかっただろ。私は闘ってないが警戒の範囲の広さが異常だった。こっちの十数人の位置を完全に把握した立ち振る舞いだった」


 男は警戒した時のフツバの索敵能力の高さを評価する。

 そんな真面目に考察する男にネマーは


「君そんな喋り方だったっけ?いつもみたいにニンニンって言わないの⁉︎」


 ネマーが男をいじる。

 男はその発言に腹を立てて


「それを言うのは戦闘中のみだと指導を受けている。我ら隠術を易く見るな!」


 自分の戦闘スタイルを茶化された事に怒っているようだった。

 隠術、言い方が違うだけで忍術とほぼ同義だ。


「ハハッ、ごめんねー。そんな怒んないでよ。でもまぁ確かにあの男もだけどもう一人の女も中々のもんだったよ。あんな訳わかんない植物使う奴初めてみたよ」


 ネマーが真剣に受け答える。 

 二人の後ろから腕が伸びてくる。

 腕は二人共の肩を掴み、その腕の本人が間から顔を出す。


「その話聞かせてよ。面白そうじゃん」


 それは集会所にいた一人だけ異様に派手なメイクに格好をしていた男だった。


「か、頭!」


 人物に気づいた全身黒一色の男が腰を直角に曲げてお辞儀をする。

 ネマーは下げるつもりがないらしく堂々と立ち尽くしている。


「おい、お前何してる⁉︎」


 忍術男はその傲慢な態度に不快感を示す。


「俺が頭を下げるのは落ちてる金貨拾う時だけだから。賭ける用の銀貨を拾うときもだけど」


 金貨を高く上げてキャッチして金貨の光の反射を派手な頭と呼ばれる男に向ける。

 その舐めた態度にも一度笑いかける。


「別にお前はそのまんまでいい。俺様も頭下げろなんて言っ事ねぇしな。そんで!そいつは俺様とやり合えそう?」

 

 派手な男はシャドーボクシングをするかのように空想の男と戦い始める。

 注意する眼光でネマーを忍術の男は睨むがその視線も舌を出して笑い飛ばす。


「マジなこと言うといい勝負なんじゃないですか。俺もそこまでやり合った訳じゃないんで」

 

 ネマーは馬鹿正直に忖度なしで答える。

 その言葉をマズイと思ったのか、


「それはコイツの戯言ですよ。実際はアナタに勝てるわけもない雑魚です。私の飛んだ見当違いに違いありません。誠に、」


「もういい、ドロン。そいつと戦うって今俺様が決めた。何分耐えてくれるかな?」


 頭はネマーの評価で火がついたらしくフツバとの対決を辞めようとしない。

 

「今から呼んで来ましょうか?」


 頭はドロンの質問にしばらく吟味する。


「いや、今日はやめといてあげよう。あんな旅人を僕らみたいなヤバい連中が急いでやりに行く必要もないだろ。この一日はせめてゆっくり過ごさせてやろう。明日になったらこのメルドメル様が直々に倒してくれるわ」


 メルドメルは拳で戦うつもりなのかまた空想のフツバとのシャドーボクシングを始める。

 派手な服が激しく動くので目がチカチカしてとてもウザい。

 自分たちの腕に自信があるらしく、フツバを完全に舐め腐っている。


ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーー


「ヴェックション!」


 フツバが盛大にくしゃみをする。

 

「風邪でもひきましたか?」


 アトラが鼻を啜るフツバを見て心配する。

 

「いや、大丈夫だと思う」


 フツバが全身を一度軽く動かし異常がない事を確認する。

 するとそこにライラが走って駆けつける。


「ダメよ!風邪を甘く見ちゃ。ちょっと屈んで」


 ライラがフツバの額に自分の額を当て、体温を確かめる。

 三秒ほど付けた後


「大丈夫そうね」


 ライラがフツバの健康を確認する。

 ライラは突如に横から獣のような鋭い視線を感じる。

 

「ご、ごめんね」


 ライラがその先で嫉妬爆発させたアトラが物凄い形相で睨んでいる。

 アトラから闘気の様な何か怨念が出ているのがライラにもわかる。


「確信犯ですか?」


 アトラの一文字、一文字に恐怖を感じる。


「違うに決まってるです!私はただ体調管理ぐらいしか役に立たないから役目をまっとうしてるだけです!」


 いつものタメ口と鋭い視線で敬語が混じり、変な言葉遣いになる。


「……」


 アトラがジッとライラの目を見つめる。

 アトラはライラの脳深くまでもを覗いてるように見えた。


「なら、良いんです!」


 急にアトラがいつもの明るい声に戻り、笑顔をが溢れる。

 その様子にライラもホッと胸を撫で下ろす。


「その代わり、二度とあんなことしない様にしてください。次は飛び蹴りしますから」


 奥に闇を潜ませた人を殺す一歩手前の目をしている。

 笑ってはいるが中を満たしている憎悪が目からはみ出して来ている。


「二人で仲良く話してるのはいいけど、今はこの人の話を聞こうぜ」


 フツバが隣でなんやらずっと喋っている二人の話を遮る。

 現に今はそんな身内で仲良く喋っている状況ではない。

 今更だが、フツバ達は家の中にいる。

 サイトウに連れて来られた場所がこの小さく小汚い小屋のような家だった。


「それでここのどこに子ども達がいるんだ?地下室でもあんのか?」


 フツバがあまりに生活感のないこの家具を置いただけのような家に違和感を覚える。

 地下室があって、そこを主に使っているなら頷ける。

 更には約束の桃髪の子ども達の姿もない。


「ここにあの子達はいません。アナタ達も分かっている通りここはあの人達の支配下にあります。なのであまり自由に動き回っているとあの子達の事も感づかれてしまう。あの子達をあのような方々に会わせると危険なのも分かっているでしょうし」


 サイトウのいう事は的を得ている。

 確かにああいう奴らに桃髪の子を会わせると暴力を振るわれたり、誘拐されて売買されるかもしれない。


「アイツらをさ、フツバでどうにかできないの?」


 ライラがフツバに問いかけてくる。


「と言うと?」


「だってアイツらの所為で簡単に会えない感じになっちゃってるんならフツバが全員退治してこればいいじゃない。アイツら弱そうだし。それに金も払わされてるならこの町の為にもなるじゃない」


 ライラが自論を展開する。

 今までフツバ達は村や街、色々危険から助けた事が多々あった。

 外に出てからそんな事しか目にしていないライラならこの現状を見ればそういう発想になるのは必然だ。

 しかし、世の中はもっとめんどくさくて、複雑なのだ。


「あのな、姫さん。今回ばかりは俺はアイツらを倒せねぇんだ」


 フツバが困った表情で頭を掻いている。


「なんでよ?今までもあんな感じの奴らを倒してきたじゃない⁉︎それともあの中にめちゃくちゃ強い奴がいるとか⁉︎」


 ライラがフツバの倒さないという発言に反発する。

 この家にいる内のライラ以外は全員フツバの発言の意図を理解している。


「姫さん、今までは人身売買に人体実験それから魔獣。全部倒してきたのはあまりに酷かったからなんだ。この町は今までのとは話が別だ」


 その理由がライラの逆鱗に触れたのか、ライラが机をついて立ち上がる。


「ちょっととか、めっちゃくちゃとかそんなんで人を助けるか助けないかで判断するような人じゃないでしょ⁉︎困っている人が居るなら助けるべきだと私は思うわ!アンタ、」


「ライラさん!」


 アトラが勢いで発言してしまいそうになったライラを大声で止める。


「何よ?」


 ライラはフツバらしくない考え方に怒って冷静に判断できていない。

 

「最後まで話を聞いた方がいいと思います。ライラさんはまだこの町の全貌を掴めていない」

 

 アトラは怒りを冷ますように落ち着いた冷たい声で話す。


「どう言う事?」


 激昂するライラを見て、申し訳なさそうに苦笑いしているフツバの方に目をやる。


「今までは支配の悪い面しか見てこなかった。支配はな時にはいい方向に行く事だってあるんだ」


「いい方向に?」


「そっ。例えばここはアイツらの支配下にある。それによって他の奴らに支配されなくなるんだ。たぶんこの町の人達はアイツらの条件を飲んで、自分たちの身を他のもっとヤバい奴らから守ってるんだ。つまりアイツらの支配をこの町の人達は望んでいるんだ。だよな?」


 フツバが静かに話を聞いていたサイトウに聞く。


「はい、その通りです。あの方達は金貨三枚と他と比べればまだマシな金額なんです。酷いもので言うと金貨十枚なんて言う輩も居ますからね」


 サイトウも支配されるのを望むという悲しい現実を受け入れざるを得ない。

 フツバがまだ怒るか?と言った目で立ち尽くすライラを見る。

 黙って何も言わずに座った後、小さく


「ごめんなさい」


 ポツリと呟いた。


読んで頂きありがとうございました。

世の中は一個の考え方では通じないと言う事ですね。

ライラも徐々に徐々に学んできては居ますが、まだまだ足りません。

こういう面でも成長を感じていかせれれば良いなと思います。

それではまた次話でお会いしましょう。

良ければ感想、アドバイス、質問などよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ