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1章2話 二星

 つい先ほどまで誰も喋ってくれなかったが、二人の若い騎士が喋りかけてくる。


「お前なんであんなに強いんだよ?どこで修行したんだ?俺にも教えてくれよ」


 まるで、野球少年のような見た目にあった声と性格の黒髪の坊主頭だ。

 全てがうるさい。


「やめときなよ、ガス。ご、ごめんね急にこんなガツガツ喋りかけて。僕はシャス、よろしく。僕たち二人もつい半年前に入ったばかりなんだ」


 貧弱そうな体付きの金髪の短髪で今度は逆に真面目なのが目に見えてわかる男が喋りかけてくる。


「あ、そうなんですね。こちらこそ、名乗らずすみません。僕の名前はオトメ・フツバといいます」


 遅めの挨拶をする。


「もう、知ってるよ。お前はもう俺より有名だからな。よろしくな、フツバ。俺のことはガスって呼んでくれ。敬語なんて使わなくていいからな」


「はい、じゃなくてわかった」


 敬語を使うのは苦手だから、この人とは仲良くなれそうだ。


「それでいい、いきなりなんだがお願いがあるんだ」


 ガスが前のめりになって言う、その言葉を引き継ぎシャスが、


「僕たちは見ての通りこのボロい基地にしか入らないぐらいの強さなんだ。隊長に気に入られて入った君と違ってね」


 寂しそうな言い方から、用件が伝わる。


「なんとなく、言いたいことは分かった。つまりは、鍛えて欲しいってこと?」


「そうなんだ、騎士になった以上はやっぱり一星は欲しいんだよ。うちにも、一応一人隊長以外に星持ちはいるんだけど、自分の事ばっかりで全く鍛えてくれないんだよ」


 ケチなのがいるものだ、強いなら教えてやればいいのに、だが


「そうなんだ。多分ですけどここにはいないよね?」


「なんで、わかったんだ?」


「見た目で強さぐらいは分かる」


 ある程度の強さを持った人、それも星持ちなら見た目で分かるものだ。


「さ、流石だなそうなんだ。今はいないんだ、そいつはこの時間は修行中だからな」


「その人もね、実は僕たちと同期なんだ」


「そうなんですか?」


(同期でもやっぱり差があるんだな)


「特に、最近は機嫌が悪いんだ……何でかって言うのはな……」


 ゴンッ!

 喋っている途中に凄まじい爆発音…ではないと気づいたのはすぐだった。

 ガスが涙目になって倒れている。


「また、俺の事の悪口を言っているのか、ガス」


「ご、ごめんっていくらなんでも全力で殴んなよ」


 いつの間にかシャスは敬礼している。

 いや、食堂全員がその男に向かって敬礼をしている。

 メガネをかけていて青髪の少し長髪で高身長、いかにも仕事が出来そうな見た目だ。

 気に食わない。


「誰だ、お前は?迷子でも拾ってきたか、ガス」


「違いますよ。その子は期待の新星オトメ・フツバ君ですよ。メルト『二星』少佐」


「なっ、お前がオトメか?」


 一瞬、動揺の目になるがすぐに持ち直す。


「あんたがさっき言ってた、鍛えてくれないケチな星持ちか」


 口が滑る。

 少し怒りながら、


「おい、貴様話を聞いていなかったのか?」


「聞いてましたが、何か?」


 メルトとが鬼の形相になる


「俺は『少佐』なんだぞ『少佐』それも二星の新人の中の天才と言われていた、ハーウェン・メルトだぞ」


「言われていた?…あぁ、俺に新人の天才の肩書きを取られたからか」


 またもや口を滑らした。

 

(これは不味い)


 修行を毎日欠かさずし、勉強もでき、上下関係を重んじ、プライドが特に高い性格のメルトの前でフツバはことごとく地雷を踏んでいく食堂の騎士全員が青ざめていた。


「おい、オトメたまたま三星を倒せたからと言って、調子に乗るなよ。今から、本当の星持ちの強さを教えてやる。中庭にこい!」


 冷静を装いつつも確実にメルトは怒っている。

 今の発言は気に食わないが、普通のテンションで返す、


「やめといた、ほうが良いですよ。あなたじゃ僕には勝てない。というか、星制度ってすごいですね。的確に強さの指標になってる。このメルトさんは本当に丁度二星のレベルだ」


 事実を述べただけのつもりだ。

 コルトスープを飲みながら言う。悪気があるのかないのかは分からない。

 だが、確実に嘘はついてないと分かる口調で言う。

 メルトの怒りが頂点に達し、今すぐ切りかかろうとした、その時一人のガタイのいい中年男性が止めに入る。


「やめておけ、メルト。コイツは強い。態度は悪いかもしれんが後にきっと良くなる」


「隊長!」


「フツバもそれ以上はやめろ。礼儀良くしろと説明しただろ」


 忘れていた訳ではない、ただここ数年敬語なんて使わなくていい環境のせいだろう。


「すみません」


「なっ、貴様覚えておけ。隊長がいなければ、貴様は確実に切られていたぞ」


「へぇ、そうなんですね。怖い怖い」


 この日、フツバは最悪の出だしを迎えた。

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