表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒスヴィル-HISVIL 〜そのためならば何度でも〜  作者: ビタミン
プロローグ・話のまとめ
11/217

二章後編〜新たな旅立ち〜

※この内容には多分なネタバレが含まれています。本編をしっかりと読みたいという方はこの話を読むのはお勧めしません。

 長々と読むのは疲れるのでサラッと最新話まで読みたい人におすすめします。

 この話には伏線や細かい設定、描写、セリフなど省かれている物も沢山ありますのでご了承下さい。

 悪魔の事が完全に無い過去の話を話し終えた、トルタ。

 ライラはトルタを軽蔑するが、アトラは知っていた事だった。

 トルタは外ではタロンが勝っていることを確信して話を進めている。

 そして最後のわがままとしてアトラの質問に答える。

 アトラが最後の一つに選んだ質問、


「あなたはいつまであなたではないの?早く戻ってきて」


 それはアリーからの遺言だった。

 アトラが自分の声をアリーの透き通った声に近づけて言う。

 ライラにはそんな様子のアトラがアトラには見えなかった。

 それはトルタも同じだった。

 アトラは続けて喋る。

 アリーが子供の時から自分に話をしてくれていたことを、トルタのことをずっと信じ続けていた事を。

 例え、こんな酷い目に遭わせた本人だろうと恨みもせず、ただひたらずらに信じていた。

 そうして揺らぎ始めるトルタの心。

 アトラは何も言っていないのに自問自答を始める。

 自分の意思でやったんだと唱えている。

 トルタも心の中で本当の自分と今の自分の差に違和感を覚えていたのだ。

 自分の決断だったという過去によって繋がれていた精神が綻び始め、崩れ出す。

 そこに悪魔の一声がかかる。

 部屋一帯が緊迫感、恐怖、嫌悪感で満たされる。

 三人ともが動けなくなる。

 ライラはこれを起こした者の正体を知っている。

 脳に響くような気色の悪い声。

 フツバとライラが敵対している悪魔である。

 悪魔はトルタに嘆きの念を呟いた後アトラの顔を見ると笑って謝罪をする。

 お母さんには悪い事をした、と。

 悪魔が指を弾き、アトラが喋れるようにする。

 アリーが死んだのは十年程前、悪魔にとっては最近の範疇であった。

 悪魔はこのタイミングを伺っていたのかは分からない。

 しかし、恐らく、わざと完璧なタイミングで来たのだろう。

 そして一つの事実だけを言い残し、去る。

 

「トルタ君の気持ちをあの時ちょちょッと遠隔操作したって感じかなぁ!」

 

 自分の母を本当に殺した奴が目の前にいる。

 その悪意が全て真実だと物語っている。

 アトラは動こうとするも動けない。

 悪魔はトルタのその後の成長について酷評し、期待はずれだったと悲嘆の思いを告げる。

 そうして、悪魔はフツバが来てしまいそうというのを理由に逃げていった、今日は会う気はないらしい。

 深い傷だけを残して、闇の中へと消えていった。

 悪魔が消えると体の自由は効くようになるがそれでも誰一人として動かない。

 そんな空気を突き破ったのは扉が突き破られる音だった。

 木片散る中現れたのはタロンの右腕をぶら下げたフツバであった。

 生身の人間が勝ったという事実に驚愕するトルタ。

 フツバは一度負けたことは内緒にし、機械と人間の歴史の差について少し自慢げに話した。

 ライラがすぐにフツバに悪魔が来ていた事を伝えるがフツバは全く驚いた様子を見せない。

 認識はしていたがフツバはあまりの見せかけの殺気に騙されわしなかった。

 そしてフツバはアトラ達にあいつがした事を聞きフツバの中でその見せかけの理由に納得がいった。

 しかし、その行動はアトラがフツバ達と旅を共にする理由となった。

 フツバ達がアイツを倒すべく動いている事を話す、アトラの返事は決まっていた。

 アトラの凄いところは切り替えである。

 あれだけ心にくる出来事が起きてもなおそれは健在だった。

 ライラはそんな立派で頼れるアトラと自分を比べ自責してしまう。

 そんな事は気にせずフツバはライラに映像探しを手伝わせる。

 そしてトルタの処遇についてはアトラに一任する。

 アトラは理由がどうであれ許さない事は前提として、償う事を命令する。

 アトラ達を見捨てた事はアリーが最後まで信じていたので償わなくていいとし、アトラは地下の人達にした仕打ちを償えと命令する。

 アトラがそう伝えると奥歯でまだ残った思いをすり潰し、もうトルタには何も言わない。

 アトラからトルタに映像の場所を聞くが、トルタは何も思い出せない様子だ。

 騎士団が登ってくるまでの時間との勝負になる。

 アトラは時々全く関係ない資料を興味深そうに熟読しているのをフツバが口で注意する。

 アトラは口では反省の意を示すが本をゆっくり閉めながら内容を覚えようとし続けているので結局変わらず効率低下だ。

 資料の山の中からライラがなんとか見つけだす。

 しかしもう一階は騎士で埋まっており、来た道を変えるのは困難のようだ。

 フツバが何かを考えつくと二人を両脇に抱える。

 そうしてフツバの向いている方向は窓ガラスの方向だった。

 ライラはすぐに気づき口を手で押さえる。

 フツバが走り出したタイミングでアトラも真似して口を押さえる。

 ライラには見覚えのある高所からの飛び降りである。

 一階で待ち構える騎士達にとっては晴天の霹靂である。

 フツバ達の落下に周囲を囲んでいた騎士達が集まってくる。

 その中には騎士の指揮官として外から命令を出していたセバルドもいた。

 フツバは二人に映像を持たせてカルロの元に向かわせる。

 フツバは全ての準備が終わるまで時間稼ぎだ。

 周りの高所からもフツバを狙撃しようと試みる者もいるが一人が見せしめとして返り討ちにあった事で全員安易に手を出さなくなる。

 フツバがセバルドと狙撃手を警戒しながら戦い続ける。

 そしてライラ達はカルロ達の元に着く。

 フツバの考えた作戦では映像を流す場所としてこのセメラルト社の建物が選ばれた。

 薄くはなるだろうが音声さえ流せれば、生々しい音声からこの映像が悲惨な物である事は脳内で補完してくれるだろう。

 フツバの時間稼ぎも要らなくなるがだからといってすぐに背中を向けられるほどセバルドも甘くない。

 フツバは大きな一手を打つ。

 それはフツバの知る限り最もシンプルな「戦」である。

 

「竹の一『ゼツ』」


 体の中心を通るように綺麗に剣を脳天の上まで持ち上げる。

 そして静かにその件を振り下ろす、ただそれだけの技。

 この技は師曰く、剣の全面での切れる力を一点だけに集中させるイメージ、なんだそうだ。

 セメラルト社の一面に大きな傷跡を残し、その攻撃により装飾品やガラスが割れ、下へ落ちてくる。

 それを避けるために騎士達は自分の安全を確保する事を最優先する。

 それはフツバの狙い通りであり、フツバはすかさずその場から逃げ出す。

 フツバが逃げ出したところで映像が流れだす。

 大音量で流れる映像に騎士達は足を止めて見入ってしまう。

 その鮮血と共に叫ばれる悲鳴は人の心を震わせる。

 フツバはその間も構う事なく走り続け、ライラ達に追いつく。

 フツバはすぐに二人を抱えるとカルロ達に別れの言葉を言う暇なくその場から逃げる。

 そんなフツバの前に怪我をした騎士達が道を塞ぎ妨害してくる。

 メルトの部下達という事にフツバはすぐ気づく。

 その努力だけは認め、フツバは屋根の上へ登り戦う事なく突破する。

 しかし、その屋根の上の景色からカルロ達が捕まっているのが見えた。

 フツバは来た道を逆走し、自分の声の精一杯が届く距離まで走る。

 そして腹の底から声を出し、


「おい!桃色髪のゴミども!預かっていたお前達の子どもだがな、もう殺して処分してある。お前達の子はもう帰ってこない!」


 カルロ達は困惑し、完全に固まっている。

 カルロ達がフツバ達に協力させられていたのならカルロ達が捕まる必要はなくなる。

 フツバはカルロにウィンクして理解してもらおうとする。

 カルロは頭の回転が速く、すぐにフツバの意図に気づく。

 そして感謝の涙を流しながら、フツバを追いかけ始める。


「お前達!よくも、よくも、我らの大事な子ども達を‼︎許さんぞ!返せ!あの子達を返せ!」


 カルロが涙いっぱいにしながら叫び続ける。

 カルロの様子を見てより困惑しているほかの者達にも分かるように、


「俺はちょーー悪い奴だって言ったよなぁ!」


 フツバのその言葉でほとんどの者が思い出す。

 フツバが別れの時に言った言葉を。

 全員が泣き叫びながらフツバ達を追いかけ始め、フツバが大方理解してくれた事がわかる。

 そしてフツバも向きを変え、走り始める。

 新しい小さな仲間を手の中にフツバは走る。

 例え濡れ衣を着ようともいつかこれを脱げるように、これを適当な相手にぶつけられるように今はフツバが背負っておく。

 トローノ・アトラが仲間になった。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ