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三章12話 向かう者

 フツバとアトラは獣魔雨に備えて追加の買い出しから帰ってきてパナセアに頼まれた夜ご飯の用意をしている。

 今は夕方、空はほんのりとオレンジがかっている。

 

「姫さん、調子はどうだ?」


 勉強も一度一段落つき今は休憩時間のようだ。

 

「まぁそこそこね」


 ライラが顔に冷えたタオルを被せながら答える。

 フツバがその返答を聞き、パナセアに目をやる。


「全然、正直言って想像以上に早く進んでる。というか説明時間がほとんどで覚える時間が異次元に短いな。ヴェーラでここまで変わるとは。小さい頃の私が泣いてるよ」


 パナセアが期待以上の進行速度に驚きの念を表す。

 するとその言葉を聞いたライラが飛び起きる。


「そうなんですか⁉︎てっきり私は遅れてるかと思ってました」


 ライラは本心で思っていたらしい。

 ヴェーラのせいで感覚がイカれてしまったのかもしれない。

 

「それでも早いに越した事はない。この調子でドンドン行くぞ」


 フツバはその時に気づいたがどうやらライラの焦りの勘違いはパナセアにあったようだ。

 パナセアの様子は確かに少し早口で、酒に酔っているせいで怒ってるようにさえ見える。

 それをライラは遅れていると勘違いしてしまったのだろう。

 きっとパナセアは獣魔雨の方を焦っているのだろう。


「パナセアさん、一個薬学とは全く関係ない質問良いですか」


 ライラが椅子に座りそう切り出す。


「私は薬以外のことはよく知らないから聞いても答えられないかもしれないぞ。それより後ろのそいつに聞いた方が早いんじゃ」


「五英傑じゃないと答えれないんです。五英傑に会える事があったら聞いてみようってずっっと思ってたんです」


 ライラの口調が明るくなっていく。


「言ってみろ」


 パナセアもその様子を見ては師匠として答えないと言う訳にはいかないと思う。


「五英傑が思う、五英傑の中で一番強い人って誰なんですか?」


 ライラは興味津々のようだ。

 後ろでアトラも手を止めてる所から見てこちらも気になっているようだった。


「五英傑の中でって言われてもまず根本的な話として私を含めた二人は戦闘向きではないからな」


「分かってます。それじゃあ三人の中だと」


「そりゃあ決まってる」


 考える様子は無く、答えは元々決まっている様子だった。

 パナセアが名前を続けようとしたその時。

 カーン、カーン、カーンと鐘の横槍が入った。

 第一にフツバとパナセアが反応しすぐに外へ向かう。

 それに続く形で二人もついていく。


「ねぇ、アトラ。この鐘って何なの?」


 ライラの疑問にアトラは動揺した素振りを見せる。

 どうやらこれは常識だったようでお姫様属性が出てしまったらしい。


「これを知らないって……そうですよね。仕方ないですよね。これはですね緊急時に村や街に危険を伝える鐘なんです。つまり今外では何か危険がこちらに向かってきていると言う訳です」


 外は風がいつの間にか強くなっており真っ直ぐ走る事は困難になっている。

 アトラ達が止まって空を見上げるフツバ達に追いつく。


「その危険ってやっぱり」


 ライラも空を見上げる。

 鐘が置いてある建物の屋上には拡声器のような物を使って中年の男が喋っている。


「皆さん!今この街に魔獣警報が出ました!今すぐ重要なものを持って避難してください!ここに到着するのは約一時間後との事です!」


「やっぱり来たか」


 パナセアが空を片目で睨み、強堅な佇まいで立っている。

 その横に立つフツバもパナセアには見劣りしておらず逞しい。

 二人は本気でやる気になったようだった。


「パナセアさん、俺は絶対無茶をしますから治療は頼みましたよ」


 フツバが視線の先は一切変えずそう呟く。


「私を誰だと思っている。アンタの師匠と共に戦ってたんだぞ。任せておけ」


「真正面から迎え撃つか」


 フツバが意志を固める。

 もちろんやられる気はないらしい。

 黒い雲はズンズン大きくなり、この街の空さえ黒で包む。


「二十分後、俺は出発するよ」


 フツバが颯爽と振り返り、後ろの二人にそう伝える。


「私たちは何をすれば?」


「そうだな。俺が逃しちゃった分を片付けてくれ。俺も一人だからな見逃す事もあるだろうしな」


 フツバが不安にさせない為か優しく微笑んでそう伝える。

 

「分かりました」


 アトラは心配なのを言葉で伝えたいが、フツバの意志を感じて何も言えなかった。

 

 二十分後、フツバは準備やアップをした末出かけようとしていた。


「それじゃあ行ってくる」


 フツバの背中を三人の視線が信頼の眼差しで見つめる。

 一つは自分を助けてくた恩人への眼差し、二つ目は思い人への眼差し、三つ目は自分の親友の弟子を信ずる眼差し。

この日はフツバ達の逃亡生活を語る上で欠かせないものになる。


読んで頂きありがとうございました。

ここからやっと戦闘が始まります。

最近、前書きの大変さに気づきましてこれからは前書きで書きたいことがなければ書かないことが増えるかもしれません。

それではまた次話でお会いしましょう。

良ければ感想、アドバイス、質問よろしくお願いします。

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