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三章6話 無理難題

どうもビタミンです。

今回は長めです。

何だか最近は特に伸びもせず、ダラダラとやっています。

やはり調べても引っかからない題名が問題なのでしょうか。いや、内容ですよね。正直言ってまだ面白くないですからね。

五英傑が出てきた事により話は進んでいきます。

 街は祭の片付けに追われる朝。

 フツバ達は指定された西の森に来た。

 五英傑は基本こういった隠れやすい場所に住むらしい。

 ガーリンもそうだった。


「着いたはいいけど、あの人いねぇぞ」

 

 フツバが辺りを見回し呟く。

 空気は澄んでいて、そしてなんといってもさわやかな木々の香りが堪らない。

 そんな待たされることにストレスを感じない場所で待たされること三十分、パナセアは現れた。

 フツバ達はてっきり森の方から迎えに来るのかと思っていたがパナセアは街の方から出てきた。


「こっちでーす。ってなんかフラついてない」


 フツバが明らかに足取りがおかしいパナセアに異変を感じる。

 

「確かに変ね」


 ライラも同意する。


「もしかして!」


 フツバ達に正体をバラしたのを誰かに聞かれてしまい、何かされたのではないかと懸念してフツバが駆け寄る。

 フツバが近づくとパナセアは倒れ込む。

 フツバが抱き上げるとパナセアがカスカスになった声でこう囁く。


「み、みずぅ。水持ってきてぇ」


 フツバはパナセアの体全体を視認して気づく、パナセアに一切の外傷はない。

 そうなると毒の類と予測される。

 薬の街だ無理もない。


「大丈夫ですか⁉︎解毒剤をすぐに持ってきますから。もう少し、べフォ!」


 フツバの頬にグーパンチが飛んでくる。


「水持ってこいってんだろが‼︎」


「へ?」


 フツバは何が起きたのか理解が追いつかない。

 

「今、俺、殴られたのか?」


 後ろの二人も唖然として身動きがとれない。

 そして殴ったパナセアがダルそうにムクッと立ち上がる。

 そして後ろの二人を睨みつけ


「ちっとも動かねぇじゃねぇか。水持ってこいっていってんのに。こちとら飲み過ぎて肝臓が過重労働で死にそうなんだよ。早くしろ!」


 昨夜とはあまりに変わった風貌と言葉遣い。

 昨夜は一本に結んでいた髪がボサボサになっている。

 

「おい!フツバ!お前もぼさっとしてないで私を家まで手伝え!ガーリンの野郎の弟子なんだろ!」

 

「は、はい!」


 フツバはあり得ないほど鋭い視線に背筋が凍る。

 凍りながらも支えて指図されるままに森の中へと入っていく。

 アトラが近くで水を汲んでくる。

 だが、良く考えてみたらこれが正解の姿さえしてきてしまう。

 最初で会ったのもよく考えれば酒場。

 ガーリンから聞いてた印象とも合致する。


「いっつもこんな感じなんですか?」


 フツバが恐れながら聞く。

 

「あぁ、そうだよ。お姫様もいるらしいから昨日の晩は我慢したんだけどね。深夜二時までが限界だったよ」


 パナセアは歯と歯の間に挟まった何かを舌で取ろうとしながらそう話す。

 やはり本当はこっちだった。

 どうもおかしいと思っていたのである。

 パナセアを介護しながらもなんとか家までは着く。

 家に着くや否やパナセアは棚から酒を取り蓋を親指だけで開け、また飲み始める。


「それで、何?」


「何じゃなくてそっちが呼んだんでしょうが」


 パナセアひ完全に記憶が飛んでいるらしい。


「え?そうだっけ。忘れちゃったな。……そうか、そうだったな」


 酔って頭が痛いのか思い出そうとしてなのかずっと頭を押さえている。

 しかしいざ話すとなると視線は真剣な物に変わる。

 四つ配置されている椅子にフツバとライラが机を挟んでパナセアと向き合う位置に座る。

 アトラがパナセアの横の椅子が空いてるのに気づいて取りに行こうとするとパナセアが片足をその椅子に乗せ態勢を崩す。

 酔っ払いの悪意なき嫌がらせである。

 アトラが無言で落胆する。

 

「いいぞ、俺は立って話すから」

 

 フツバが立ち上がりアトラに椅子を譲る。

 アトラが嬉しそうに遠慮なしに座る。

 パナセアがそれをみて驚いた表情をしている。


「へぇ、ガーリンとは違って譲るっていう優しさはあるらしいね」


「弟子なだけあの人になったわけではないですからね」


 フツバが笑いながらそう返す。


「ふん、まぁいい。それで本題なんだがまずフツバ、アンタがここまで来たって事はアイツは、」


「えぇ、死にましたよ。というより殺されましたよ」


 フツバが食い気味に答える。

 フツバはもうこの事実に悲しんだりはしない。

 悲しみ過ぎたのだから。

 少し顔を暗くするパナセア。


「ねぇ、ちょっと待ってよ⁉︎」


 ライラが立ち上がる。


「どうした?」


 フツバが急に立ち上がったライラがこちら見てきて不気味に思う。

 

「殺されたって今言ったの?」


 ライラがそう聞く。

 よく見るとアトラも驚いた表情をしている。

 フツバは何故そんなに驚くのか分からなかったが自分の言動を振り返って理解する。


「そっか、俺あんたらに何でガーリンが死んだか言ってなかったけ⁉︎」


 フツバが痛恨のミスに気づく。

 というよりもある種の価値観の違いだろう。

 

「てっきり私達は四百年近く生きたから寿命なのかと」


 フツバとパナセアがその言葉を聞いた瞬間目を合わせ笑い出す。

 

「アハハーー、あの人が寿命で死んだなんて面白いこと考えるな」


「アイツは寿命何かじゃ死ぬ奴じゃあないからな!でも、普通なら勘違いしちまうのも無理はねぇか‼︎これはフツバ、お前が悪いぞ!」


 どうやら二人には寿命で死ぬのがツボらしい。

 それほどに生命力に溢れた強い人だったのだろう。


「じゃ、じゃあ死因は何なんですか?」


 アトラが声を少し震わせながら聞く。


「それはあれだろう?」


 パナセアがフツバを見ながら曖昧な表現で聞く。

 フツバは一度首を縦に振ると


「大丈夫ですよ。アイツのことは姫さん達に言っても。何てってたってついて来てる理由がそれなんですから」


 フツバがそう言うとパナセアとライラ達はそれぞれが理解した。


「理由って事はじゃああの悪魔みたいな奴が」


「そうだよ。だから俺はアイツを追ってるし、知ってたんだよ」


 横でパナセアがため息を吐く。


「この子達も大変な道を歩む事になりそうだな」


 そう言うとクイッと一度喉に酒を流した。

 今は狼狽えてはいないがフツバには分かっていた。

 心の中ではとても悲しんでいる事に。

 きっとガーリンがフツバを連れ回してここに来た時に覚悟をしていたのかもしれない。

 あの人をフツバよりも知っている人たちなら察せられない訳はない。

 

「全く、アイツが死んだって聞いたせいで酔いが覚めそうだ。ちょっと休憩させてくれ」


 そう言ってパナセアは椅子から立ち上がり外の空気を吸いに行った。


「まさか一番最初に死ぬのがアンタとはね、ガーリン」


 そう誰も聞いていない場所で呟く声は森の中に静かに木霊した。


ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーー


「さぁ、弟子の件だがね、昨日も言ったが私は一人も作っちゃいないんだよ」


 パナセアが申し訳なさそうする。


「約束忘れないでくれよぉ。これじゃあこっからどうすれば良いんだよ。ここで新しい人員補充しようとしてたのに」


 フツバがそう言って机に顔を伏せる。

 フツバの脳内の算段が無茶苦茶になってしまったらしい。


「すまないね。四百年間もあったんだがどうもコイツだ!って奴がいなくって。それにやる事もあったしな」


 パナセアは笑いながらそう呟く。

 パナセアは大した問題だと思ってないらしい。


「五英傑との約束よりも大事な事なんて無いだろそうそう。何かこの村にいないのめっちゃ凄い人」


 フツバが妥協も妥協の薬の街の人から探そうとする。

 それきパナセアは首を横に振る。


「第一にお前達は指名手配なんだからいる訳もない。それにお前が求めているような凄腕は私しかいないよ、この街には」


 パナセアがそう強く断言する。

 その言葉でフツバが閃いたような顔をするがどんな考えがぐらい誰にだって分かってしまう。


「私は行かないよ‼︎ここでしないといけない事があるからね」


 フツバがまた落ち込み顔を机に伏せる。

 フツバが次の妥協案を考えていると横でライラが手を挙げる。


「すいません、あのぉ」


「何⁉︎何か妥協案思いついた⁉︎」


 フツバがライラに期待を寄せる。


「何だ?言ってみろ」


 パナセアが遠慮してなかなか言わないライラに許可を出す。


「凄い無茶な事言ってるかもしれませんけど、」


 ライラが緊張しながらゆっくりと話し出す。

 三人はそんなライラに注目している。


「私を弟子にしてくれませんか‼︎」


 ライラが顔を赤らめながらそう叫ぶ。


「……」

「……」

「……」


 三人とも黙って見つめてピクリとも動かない。

 外の静かな微風がうるさく感じさえする。


「お前、馬鹿だろ?」


 パナセアが半笑いでそう言って酒をグビッと飲むと瓶一本が丁度空になった。

 空になった瓶をパナセアは後ろに放り投げる。

 瓶は綺麗に元あった棚へと割れずに着地する。


「おい、フツバ。このお姫様に言ってやれ。五英傑の弟子ってのはそんなに楽になれるもんじゃねぇって」


「お願いします!私は、何か役に立ちたいんです。戦うことも、考える事も何も出来ない私には何かできる事が必要なんです‼︎別に軽い気持ちでなろうとしてる訳じゃありません!」


 ライラが久しぶりに真剣に大きな声で喋っている。


「あのなぁ……いや、分かったよ。それじゃあ課題を出す。それが出来たら弟子にしてやる」


 パナセアが何を思ったのか急に意見を変える。

 フツバもその言葉に驚くが、顔を見て何を考えているのか分かった。

 チャンスをあげると思わせて無理難題押し付けて逆に不可能にしようとしている。


「どんな課題ですか?」


 ライラが恐る恐る慎重に聞く。


「あぁ、それはなその後ろにあるクソ分厚い本があるだろ」

 

 ライラ達の後ろの本棚で一際目立つ分厚い本を指さす。

 

「それを明日までに全部覚えてこい」


(やっぱりな、あの広辞苑三冊分ぐらいのやつを一日って、露骨だな)


 フツバも分かってはいたがあまりの露骨さに苦笑するしかない。

 

「分かりました。あれを全部ですね」


 ライラは立ち上がるとその本棚へと駆け出し、その本を読み始めようとする。


「おい、嘘だろ姫さん!いくらなんでも、」


「フツバは黙ってて!私はやるって決めたんだから。五英傑の弟子になるんならこんぐらいやってやるわよ」


 何故か絶望せずに希望に満ち溢れた眼差しのライラ。

 その姿を三人は不気味に思う。


「あの子、流石に純粋過ぎやしないか?」


「知りませんよ。どうします、本当に覚えてきたら?」


 フツバが悪そうに笑いながら聞く。


「ありゃあ無理だよ。出来たら本当に弟子にしてやっていいぐらいだよ」


 パナセアは期待をこれっぽっちもしていない。

 アトラもゾーンに入ったライラを止めようとはしないらしい。


「俺達は姫さんに懸けてみるか?」


「そうですね、あの人ならもしかしたら」


 フツバとアトラは根拠のない希望をライラに見出す。

 どうやら弟子問題はこれ以上特に進展は無さそうだ。

 パナセアも何だか機嫌が悪そうだ。

 二人は椅子に座り、必至に読み込むライラを黙って眺めていた。

 パナセアが黙って街の方へと出て行く。


「無理だ、絶対に。だって私も覚えてないんだからな」


 パナセアは自分で無理難題だとした課題に何故か心の片隅で不安を感じていた。

 そう感じさせる物がライラには何処かあった。

 

読んで頂きありがとうございました。

今回は長かったですね。

いつもなら二分割する所を一つにしてみました。

時にはこのぐらいでもいいでしょ。

さぁ、ライラがパナセアの弟子になろうとしている訳ですが果たしてなれるのか。

常人には不可能ですがもしかするともしかするかもしれません。

ていうかパナセアはめちゃくちゃ酒飲みのガサツな言葉遣いの方が素です。

それではまた次話でお会いしましょう。

良ければ、感想、アドバイス、質問、お願いします

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