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プロローグ 謎の青年
ここは東の国「ラーズウェル」
今日もこの国の王都には平穏な時間が流れていた。
ただこの国が、世界が大きく動き出す事をまだ誰も知らない。
これはたった一人の青年と好奇心旺盛なお姫様の旅物語である。
ー王都騎士団西エリア基地ー
一人の青年の登場に部屋全体が静まり返る。
髪も目も黒く、この国では珍しい風貌だ。
イケメンでもなくブサイクでもない平凡な顔である。
腰には愛剣を携えられており、その愛剣には貫禄がある。
片方だけに生えた八重歯が特徴的だ。
「おい、あれが入団試験で三星を倒したとかいう化け物か」
「あぁ、あいつだよ。会場で見てたんだけど凄かったんだぜ。三星の剣戟を受けても普通に反撃するんだからな。あいつは破格級に強いぞ。きっといつか騎士団長とかになるやつだ」
ヒソヒソと喋る。
「確か、名前はえっと……」
「オトメ・フツバだよ」
「そうだった、そうだった。変な名前だよな」
そう、この男『音女二葉』は入団早々三星の中佐を倒した謎の男である。