神隠し
それから僕は毎日のように神社に通った。初めて会った日の夕方、帰る頃に彼女は、
「いつでも来てね。私は、いつも此処に居るから。」
と、そう言った。言った通り、いつも僕が着くより先に、彼女は待っていた。どんなに早く来てもだ。不思議がりながらも、彼女と過ごす時間は、あっという間に過ぎていく程楽しかった。そんなある日、彼女がふと、
「貴方と居ると、何だか凄く懐かしい様な気持ちになるの。昔、会ったことがあるのでしょうか。」
と呟いた。否定の言葉が浮かばなかった。僕もそうだと思っていたから。でも、言葉に出来ず、ただ黙っていることしか出来なかった。
その夜、母に、最近何処に行っているのかと追求され、僕は神社に行っていると返答した。すると母は、驚き、
「あそこの神社?あの神社は危ないのよ。17~8年前ぐらいかしら。あそこで一人の少女が行方不明になったの。村の皆は神隠しだと騒いでいたけど、丁度あんたぐらいの年頃の女の子よ。気を付けなさいよ。あの事件以来誰も近寄ってないのよ。」
と説明された。僕は生返事をしながら、明日その事を考えていた。ふと、窓の外から視線を感じた様な気がした。