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残念な少年とヤクザ風のシスター パート4


静かに腰に下げた銃に手を伸ばし始めるヤクザ風のシスター。もう、完全にキレていた。


「……折角の機会だ。そのふざけた頭ん中を医者に見せる前に、ここでその頭に風穴開けて、風通しを良くしてやるよ……」

「へ?」


その瞬間、パンッという炸裂音が周囲に響き渡る。残念な少年の方にヤクザ風のシスターが向けている銃の先から、煙のようなものが出ている。


真っ直ぐに向けられている銃口の先から少し逸れるように体をひねっている残念な少年。先程まで残念な少年の頭のあった場所の先にあった木には、ポッカリと小さな穴が開いていた。


「……あっぶなぁ~」

「チッ!」


自分の後ろにあった木に穿たれた穴を見やり、目を瞬く残念な少年。


そんな少年を前にして、銃を構えたまま大きな舌打ちをするヤクザ風のシスター。


「おい、人様に向けて撃ったらダメだって親に教わらなかったのか! 不良シスター!」

「うるせぇ! 誰が不良シスターだ、コラッ!」


残念な少年の言い分を聞きながら、またも引き金に指を添えるヤクザ風のシスター。


「ていうかテメェ、何でさっき避けれたんだよ?」

「避けられなかったら死ぬじゃんか!」

「そういうこと聞いてんじゃねぇーよ!?」


ヤクザ風のシスターの疑問に、憤慨して答える残念な少年。


彼女の質問は、なぜ球が飛んでくるというこの世界で知られていない筈の武器である『銃』の作用を予想し、初見で避けられたのかと言う事と、地球でさえ発射されたならまず避けることが不可能なはずの銃弾を躱せたのかという事であった。


「前から気にはなってたが、テメェ、この武器の事を知ってんのか?」

「え? 知ってるも何も、俺がいた所で軍が使っている武器だけど?」

「……はぁ?」


残念な少年の吐いた予想外の答えに、マヌケな表情をしてしまうヤクザ風のシスター。


「……まさか、お前もエレイン教国から来たのか?」

「はい? 違うけど?」

「…………」


何かに気付いたように目を見開いてから質問を投げかけるヤクザ風のシスター。どこか緊張感を臭わせていたその質問をキョトンとした顔で否定する残念な少年。


あまりにもあっさり答えた残念な少年を前にして、沈黙してしまうヤクザ風のシスター。しばらく間を開けた後、再び銃を構えたヤクザ風のシスターは、そのまま引き金を引いた。


「うおぉ! あっぶねぇ~」

「…………テメェ~。ホントいい加減にしろよ! どこまでふざける気だ!」


乾いた音と共に、また同じ木に穴が開いた。後ろを振り向く残念な少年を前にして、目を吊り上げて声を上げるヤクザ風のシスター。


「失敬な! 俺がいつふざけた!」

「どの口でほざいてんだよ! 現在進行形でふざけてるだろぉーが!?」


何故か逆ギレしている残念な少年に、それ以上の怒りを込めて応戦するヤクザ風のシスター。


「よく聞け! 俺はいつも真剣に生きている!」

「……よし分かった。だったら、この場でテメェの息の根を止めてやる……」

「…………調子乗ってすいませんでした!?」


人差し指を突き付けて宣言する残念な少年。それに対して、まるで殺人鬼のように瞳をぎらつかせながら、ヤクザ風のシスターはいつもより低いトーンで言った。


そこに今までと違う真剣味を感じたのか、態度を翻してゴブリン爺ちゃん譲りの土下座を決める残念な少年。……誰がどう見てもコントである。



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