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残念な少年とヤクザ風のシスター パート1


「――――――さて、どうするかな」


小高い丘の上にある教会。冒険者や衛兵が木で簡単な囲いを作り、立ち入り禁止になってしまったスケルトンの墓の前に来ていた残念な少年は独り言を呟いていた。


「―――げっ!」


スケルトンの墓の前で残念な少年が考え込んでいると、どこからか喉を詰まらせたような声が聞こえる。


残念な少年が声をする方に視線を向けると、そこには苦虫を嚙み潰したよう顔をしたヤクザ風のシスターが立っていた。


「おぉ! 不良シスター、久しぶり!」

「何でテメェーが、こんなところにいるんだよ!」


能天気な挨拶をする残念な少年に対して、苛立たし気に声を出すヤクザ風のシスター。


「いや~、スケルトンの遺産をどうしようか悩んでさ。結局、あった場所に戻すのが一番いいかなと思ってここまで来たんだ」

「……ホント、どんな思考回路をしてんだよ、テメェ……」


おかしな理屈を言い出す残念な少年に、まるで可哀想な者を見るような目を向けるヤクザ風のシスター。


「てか、何で独り占めにしようとか考えねぇーんだよ」

「なんで?」


ふと浮かんだヤクザ風のシスターの疑問に、疑問で返す残念な少年。


「いや、なんでって。迷宮で見つけた財宝なら持ち主なんて大体わかんねぇーんだし、一生遊んで暮らせるぐらいの額なら、独り占めにしようとすんのが普通じゃねぇか?」

「えぇ~? スケルトンの墓から出てきた遺産だぞ。どんな呪いがかかってるかわかんないじゃんか?」

「あ~……。その理屈がいまいちわかんねぇーっつうか、理解したくねぇっつうか……。とりあえずその呪いってやつを浄化しちまえば問題ねぇんだろ?」


スケルトンの呪いがついてそうだからいらないと言う残念な少年の主張に、額に手を置いて悩むヤクザ風のシスター。


そして、その呪いが無ければ問題ないんじゃないかと残念な少年に尋ねる。


「いやいや。そんな大量のお金なんかあったって、使う予定も使い道も無かったら、持ってても意味ないじゃんか」

「……お前、貯金とか考えた事ねぇーのかよ」


残念な少年の言い分を聞き、顔を引きつらせるヤクザ風のシスター。


「だってさ。お腹すいたら森に入って食料を探せばいいだけだし、ほしい物があったら人に貸してもらうか、自分で作れば大体何とかなるじゃんか?」

「…………お前、今迄どんな生活して来たんだよ」


ついに頭を抱えてしまうヤクザ風のシスター。


「そういう不良シスターは、もしお金があったらどうするんだ?」

「俺か?」


そんな頭を抱えているシスターに向かって、残念な少年が質問を投げかける。因みに、不良シスターという呼び名に対するツッコミは割愛されたようだ。


「そうだな……。俺だったら、とりあえず、この教会を建て直して、子供達が学校に通えるようにして、好きなことが出来るようにした後、美味い物をたくさん食べさせてやりたいな……」

「ふ~ん」


乱暴な口調ながらも、いつも子供達に向けているような優しい微笑みを浮かべながら語るヤクザ風のシスター。


子供達の姿を想像してか、どこか楽しそうに語るヤクザ風のシスターの話を聞いた残念な少年は、教会の方に視線を向けると、そのまま歩き始めた。



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