詳しい経歴を知られることもなく魔族はお亡くなりになりました(泣)
「ぎぃやぁぁあぁぁあぁぁあぁあぁ―――」
迷宮の最奥にある部屋。眩い光が周囲を白く塗りつぶし、断末魔の叫びが木霊する部屋の中で、二人の幼い少年は両手で耳を塞ぎ、必死になって目をぎゅっと瞑っていた。
暫くして、悪魔の発していた悍ましい叫びと、部屋の中を白く塗りつぶしていた光が徐々に収まっていった。
「よし、もう目を開けていいぞ、お子ちゃま共!」
掛けていたサングラスを外した残念な少年は、目を瞑っていた二人の幼い少年に話しかける。
「……うぅ、眩しかった」
「……何これ?」
目を瞑っていても感じた眩しさに目をこすっている幼い少年の横で、ポカンとした顔で周囲を見回す冒険者志望の少年。
「ん? どうかしたか?」
「…………ハルト兄ちゃん。ここどこ?」
首を傾げる残念な少年に対して、思わず自分達の居る場所について質問してしまう冒険者志望の少年。
鎖に繫がれ一歩も動けなかったはずの少年がそんな疑問を持ってしまっても無理はない。なぜなら、目を開けてから彼が見た光景は、先程までいた筈の部屋とまるで別物になっていたからだ。
薄暗く、相手の足元さえはっきり見えないような部屋だった場所は、今では、キラキラと辺りを照らすしっかりとした光源と、その天井からくる光を反射するかのように磨き上げられた白い石の壁の広がる、まるで貴族でも住んでいそうな部屋になっていた。
「どこって、迷宮の奥にある自称悪魔の住んでいた部屋だけど?」
「…………」
「ねぇ、それより、その悪魔はどこ行ったの?」
迷宮に封印されていた魔族の亡霊を『自称悪魔』と表現する残念な少年。もし本人が生きていたなら、また憤慨していたことであろう。
キョトンとした顔で言った残念な少年の言葉を聞き、言葉を失ってしまう冒険者志望の少年。それほど、彼にとってはその部屋の変化は異常であったらしい。
その横で、部屋の変化など気に留めずに悪魔について尋ねる幼い少年。
「ああ、あいつなら無事に成仏したぞ」
「……なんか、スゴイ悲鳴が聞こえたんだけど、あれって無事なのかな?」
「さあな。これ使って成仏させた時、悲鳴を上げたアンデッドはアイツだけだから、何とも言えないな」
断末魔の叫びを上げていた悪魔の姿を想像し疑問を口にする冒険者志望の少年。それに対して、懐から白い謎の球体を取り出して見つめだす残念な少年。
その時、二人の幼い少年の視線がその謎の球体に集まる。
「「それ何?」」
ほぼ二人同時に指差して尋ねる少年達。
「これか? 俺が対スケルトン用に開発した超強力なお祓いグッズだ!」
幼い少年たちの疑問に対して、謎の球体を掲げて胸を張りながら答える残念な少年。
「ひょっとして、さっきの眩しい光ってそれから出たの?」
「そうだ。お子ちゃまのくせによくわかったな!」
「えへへ」
残念な少年に褒められ、お子ちゃま呼ばわりされているにも関わらず照れている幼い少年。その横でムッとする冒険者志望の少年。
「それって、どういう仕組みになってるの?」
「ふっふっふっ。それは企業秘密だ」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる残念な少年に、知りたかったことが聞けずに少しシュンとしてしまう冒険者志望の少年。
「ヤレヤレ、しょうがないな。じゃあ、お前らにだけ特別に、このお祓いグッズの隠し機能を教えてやる」
「ホント!」
しょげている冒険者志望の少年に目を向けた残念な少年は、ヤレヤレと首を振りながら二人に話しかけた。