幕間 王様の悪だくみ2
「まったく。騎士団長の頭の固さには困ったものよ」
王様の私室。普段は大勢の兵士と家臣が立ち並ぶ広々とした部屋で、王様と側近の家臣は密談していた。
「ええ。あの若さで騎士団長に就任した王国最強の剣士ではありますが、どうも融通が利きません。でも、まさか、訓練内容に関する指示を突き返されるとは予想していませんでした」
前日の夜。王様の側近の家臣は無礼を働いた青葉春人を使い物にならなくするため、騎士団長に勇者達の訓練内容について指示を出したのだが、騎士団長は聞き入れず、正当な理由を付けてから改めてくるように指示を突き返したのだ。
「うむ。しかし、例の細工はうまくいったようだ」
「苦肉の策でしたが、水晶の仕掛けが無事作動して安心しました」
騎士団長の協力を得られなかった王様の側近の家臣は、潜在能力を映し出す水晶に細工をし、青葉春人のステータスだけ通常より弱く表示させるようにしていた。
「奴の潜在能力が低いとなれば、奴の言動も合わさり、自然に風当たりは強くなる」
「現在、勇者召喚は城外に知られていない極秘情報。我が国で行われたこと自体まだ知られておりません。このまま、あの者の存在自体なかったこととして隠蔽すれば、陛下が抱えておられる不安も軽減されるでしょう」
「……お主、本当に悪だな」
「いえいえ、陛下には到底かないません」
王様の私室に、王様と側近の家臣の不気味な笑い声が木霊する。
「しかし、気になることがあるのだが」
「なんでしょうか、陛下?」
「奴の固有能力。なぜ読めなかったのだ」
水晶には青葉春人の潜在能力のみを低く表示する仕掛けを施したが、固有能力に反映されることはなかったはずだ。その疑問がしこりとなって残る。
「水晶に仕掛けをすること自体、あまり前例のないことです。何か誤作動が起きたのでしょう」
「……そうだな」
家臣の言葉に納得し、考えることをやめる王様は、椅子から立つと、美しい貴婦人が描かれた肖像画に向かって歩き出した。