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主人公が弱いと認定されるのもある意味お約束です


「今日から皆さんの指導を担当する、ラインハルトと言います。何かわからないことがあれば遠慮なく聞いてください」


城の離れにある訓練場。五人の少年少女を前にして、鎧を着こんだ爽やかな好青年が眩しい笑顔を浮かべて名乗る。


ローマのコロッセオを彷彿とさせる建物に集められた勇者達は、予定されていた通り、国を守る騎士団の代表、騎士団長に戦い方の指導を受けることになった。


早朝。元の世界での習慣が抜けきらず、今も眠気の残る勇者達を前に騎士団長は話を続ける。


「まず、皆さんには自身の潜在能力がどの程度なのか確認するために、検査を受けてもらいます」


騎士団長が訓練場の隅に控える兵士に目配せすると、人の頭位の大きさがある水晶を台車に乗せ、兵士がやって来た。


「それは何ですか?」


勇者を代表して東正義が質問する。


「これは、ステータスと呼ばれる私達の潜在能力を見るための装置だよ。この水晶に触れることで、触れた者の能力を視覚化することが出来るんだ」


騎士団長の説明を受け、身近にあるロールプレイングゲームを想像する五人。


「それでは、一人ずつ前へ出て、水晶に触れてくれ」

「はい!」


気持ちの良い返事と共に、東正義が水晶に手を伸ばす。水晶に触れると、水晶は淡い光を放ち始めた。そして、東正義の目の前に、薄っすらと文字列が浮かび上がる。


「これがステータス」


思わず声を漏らす東正義を尻目に、空中に浮かび上がった文字列を必死で羊皮紙に書く兵士。


「……驚いたな、まさかこれほどとは」


文字列を見つめ感嘆の声を漏らす騎士団長。東正義が水晶から手を離すと、文字列は消え、水晶の光も収まった。


「よし。それでは、次に行こう」










「よし。次で最後だな」


訓練場。勇者四人の検査が終わり、いよいよ最後の検査に差し掛かっていた。


「俺の番だな」

「……何故か、すごく不安なのだけど」


やる気に満ち溢れる青葉春人を見ながら、不安を口にする金髪リア充。周囲の不安を余所に、水晶に手を伸ばす少年。水晶に触れると、水晶は淡い光を放ち、空中に文字列を映し出す。


今迄と何も変わらない検査。だが、既に異変が起きていた。


「……うん?」


逸早く違和感に気付いた騎士団長は、文字列を真剣に書き写す兵士を止める。


「待て、あれはなんだ?」


そう言うと騎士団長は、空中に浮かぶ文字列のある項目を指さす。


それは、固有能力と書かれた項目。異世界に召喚された勇者は、勇者の恩恵と呼ばれる神の力で高い潜在能力と固有の能力を得る。この固有能力は個人によって内容が全く違い、そのすべてが、何らかの形で世界に多大な影響を与える能力であったことが、国の歴史に記されているらしい。


そして、肝心の青葉春人の固有能力の欄は、何故か文字化けしていて読めなかった。


「……何でしょうこれは」

「多くのステータスを見てきたが、こんなことは初めてだ」


動揺する騎士団長と兵士。慌てる二人を見つめ、何故か顔を綻ばせる少年。


「くっくっくっ、この展開は漫画で見たことがあるぞ。如何やらこの世界では俺が主役らしいな」


見たことのある展開に、変な期待感を持ち、胸を膨らませる少年。


「にゃははは、高スペックの美男美女が出た時はどうなることかと思ったが、どうやらこの物語の主人公は俺みたいだな。よっしゃー!」

「潜在能力は赤ん坊と同列なのに、なぜ固有能力だけ読めないのだ」

「…………え?」


喜色満面に喜ぶ青葉春人だったが、ふと聞こえてきた騎士団長の不穏な言葉に、背中に冷たい汗が流れる。


「自分も驚きです。この世界で同い年位の少年なら、彼の数十、いや数百倍は潜在能力があるはずです」

「ああ。むしろ、今まで無事に生きてこられたことが不思議なくらいだ」

「……嘘だろ」


騎士団長達の話を聞き、意気消沈する少年。


「申し訳ないが、今日は訓練を中断させてもらう。勇者諸君は部屋で休息をとってほしい」


皆に指示を出すと、騎士団長は足早に訓練場を後にし、場に静寂が訪れた。




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