残念な少年と教会に住み着くスケルトン? パート1
「――――――くらえ、悪霊!」
「ぎゃあ! 目、目がぁあぁぁ……」
とある教会の一室。残念な少年がその手に持ったお祓い用の塩を投げつけられ、苦しさのあまり目元を押さえるスケルトン。
スケルトンが苦しんでいるのは、なにも本物のアンデッドであるからと言うわけではない。
残念な少年にアンデッド扱いされているだけで、正真正銘の人間であるはずの彼が苦しんでいるのは、大量の塩を至近距離から顔面に叩きつけられたためである。そんなことをされれば、誰であっても痛がるはずだ。
「…………うぅ。部屋に入って来るなり、いきなり塩を投げつけてくるなんて、一体どうしたんですか?」
徐に、懐から水の入った瓶を取り出して目元を洗ったスケルトンが、残念な少年に尋ねる。
どうやら、自分をアンデッド扱いし、なぜか成仏させようとお清めの塩や聖水をいつもかけてくる残念な少年の対応に慣れているようで、聖水を拭くための布と目に入った塩を洗い流すための水を常備していたらしい。
そんな準備をさせてしまう程にあたり前の行為ではあっても、出会い頭にいきなり塩を掛けられたことは珍しく感じたようで、スケルトンは残念な少年に問いかけたようだ。
「自分の胸に手を当てて考えてみろ!」
「…………はい?」
いつもと様子の違う残念な少年に問いかけスケルトン。しかし、返ってきたのはよくわからない答えであり、スケルトンは首を傾げる。
「……それはどういう意味でしょうか?」
「どういう意味かだと? いいかよく聞け! お前が押し付けたスケルトンの遺産のせいで、俺は呪われちまったんだよ‼」
「…………はい??」
スケルトンの遺産のせいで呪われたと叫ぶ残念な少年。ますます訳が分からなくなり、そのまま腕を組んで考え込み始めてしまうスケルトン。
「……呪いですか?」
「そうだ! お前の遺産からきた呪いのせいで、俺はカジノで幼気な男子高校生の心を容赦なく抉る毒舌鬼メイドを購入することになるし、旅に出ようとすれば必ず化物と遭遇するようになるし、なにより、この街に来てから異常な数のオッサンとエンカウントしてしまっているんだよ! どうしてくれる‼」
「……いや、それ、どう考えてもあなた自身の責任でしょうがっ!?」
明らかにスケルトンの遺産を手に入れる前の事象さえ呪いのせいにしようとしている残念な少年。
そんな少年に向かって、大きな声で正論を投げかけるスケルトン。
「うるさい! 変な言いがかりをするんじゃない!」
「……だから、それはあなたでしょうが‼」
目を吊り上げて叫ぶ残念な少年。それに対して、頭を抱えてしまうスケルトン。
残念な少年の訳の分からない言動に慣れてきてようだが、それでも耐えられなかったらしい。
「……まさか、そんなことを言いにわざわざ来たのですか?」
「まあ、一応それもある。……あとは、ちょっと航海に出る前に別れの挨拶に回ってるついでだな」
「……航海?」
残念な少年の発言を聞き、不思議そうな顔をするスケルトン。
「……もしかすると、例の島の場所が分かったのですか?」
顎に手をやって少しばかり考えたスケルトンは、前に残念な少年が鬼族の隠れ住んでいる島を探していたことを思い出して尋ねた。
「おぉ! 流石スケルトン、よくわかったな! 実は、ようやく鬼ヶ島の場所が分かったから、あの毒舌鬼メイドを返品しに行くところなんだよ!」
「……………………そうですか」
サムズアップを決めながら言った残念な少年のメチャクチャな言葉に、長い長い間と共に色々と言いたくなった気持ちをグッと堪えるスケルトン。
今迄の経験から、口にすれば余計にややこしくなると理解していたためである。
「……ところで、そのメイドはどちらに?」
その時、ふと残念な少年が最近は連れ歩いていた筈の紫色の髪をしたメイドの姿がない事に気付いたスケルトンは、メイドの事に関して少年に聞いた。