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とある魔道具店での日常? パート4


「何言ってんだよ、爺ちゃん。ほしいって言ったのは爺ちゃんのくせに、折角の施しを俺に突き返す気か?」

「……いや、だからのぅ。それは誤解で―――」

「言い訳ばっかり言うんじゃねぇ! このクソ豆爺っ‼」

「なっ! この餓鬼、言わせておけば……」

「お、お爺さん、落ち着いて……」


訳の分からないことを吐いた後、いきなり老人の方を指差しながら叫ぶ残念な少年。それに反応して、怒りでプルプルと震えながら拳を堅く握る小柄な老人。


怒りで頬をヒクヒクさせている老人の横に立ち、皺くちゃの魔女はすぐさま宥めにかかる。


「大体、なにが『旅の資金として大事に使え』だよ。老い先短い年寄りのくせして、偉そうに言いやがって。爺は爺らしく若者から金を恵んでもらって、余生を謳歌してればいいんだよ!」

「な、ん、だ、と、っ‼」

「ぼ、坊やもきっと悪気はないんです! だから、落ち着いてください、お爺さん!」


ビシッと老人の方に突き付けた人差し指をそのままに、また相手を煽るような発言をする残念な少年。


蟀谷に青筋を浮かべたゴブリン爺ちゃんの横に立ち、必死で宥めにかかっている皺くちゃの魔女。


「それに、どうせいくら金があったって、ゴブリン爺ちゃんの秘密の部屋にある新しいエロ本の資金にしたらすぐに消えるんだから、こんな端金なんか素直にもらっておけばいいじゃんか。スケベ爺め」

「この餓鬼め、言わせて「その秘密の部屋について詳しく聞かせてもらえますか?」………………へ?」


両手を肩のあたりで開いて、首を左右に振るウザい仕草をする残念な少年。


どこまでも相手を煽ってくる残念の想念の発言にゴブリン爺ちゃんが怒りの声を上げようとした瞬間、それを遮るようにして老婆の冷え冷えとした声が周囲に響き渡る。


「……ば、婆さん?」

「何ですか? お爺さん?」


どこか怯えた様子で徐に発した小柄な老人の言葉に、老婆は満面の笑みを浮かべて答えた。


その笑顔は、先程までの優しい笑顔とは全くの別物で、笑っている筈なのに見ているだけで背筋が寒くなるような恐怖を呼び起こさせるような代物であった。


「……いや、あの、えっと、なんというか、急に大事なようを思い出してしもうてな。スマンがちょっと出かけて――――――」

「その前に秘密の部屋に関して、ちゃんと説明してもらえますか?」

「…………」


オロオロと落ち着かない様子で目を左右に動かすゴブリン爺ちゃん。目の前でパチパチの周囲に火花を発生させている皺くちゃの魔女に向かって、何とか逃げるための口実を発するも、あっさりと無力化されている。


沈黙してしまったゴブリン爺ちゃんは、そのまま高速で周囲を確認するが、すでに残念な少年や白髪オーガ、毒舌鬼メイドの姿さえ消えていた。


どうやら、老婆の発する異様な空気の変化に逸早く気付き、いつの間にかその場から退避していたようである。


「お爺さん?」

「…………なんで、……儂ばかりがこんな目に……」


どういった原理なのか、その周囲をスパークさせている皺くちゃの魔女を横目に、諦めた様に放心してしまうゴブリン爺ちゃん。


残念な少年の旅立ちだとか、海に住む化物だとか、渡された大量の金貨だとか。


そういった今迄の流れを全てぶち壊して、なぜかいつものように理不尽な状況に立たされていることを小さな小さな声で嘆くゴブリン爺ちゃん。そして、次の瞬間には小柄な老人の視界を眩い光が包み込む。






その日、とある魔道具店の一室からは閃光と共に老人の断末魔の叫びが木霊し、すでに街の恒例行事とされている『雲一つない昼間でも見られる雷』が落ちたそうだ。



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