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部下の責任をとれる上司というのは、異世界でもなかなかいない


「――――――頼んますから、毎回思い付きで妙な行動を起こすのだけは勘弁して下さいよ」


そうこうしているうちに、集められた船乗りたちの中でも偉い立場なのか、バンダナを頭に巻いた一際厳つい顔の男が一番上の上司である色黒のイケメンを前にして泣き言を言っていた。


「まあ、いいじゃないか。どの道、王国や魚人族からの支援は期待できそうもないんだ。結局は、この海の最大派閥でもある我が商会でどうにかするしかないだろ?」

「自分に都合のいい解釈して、勝手に結論を言わないでもらえますかねぇっ!?」

「アッハッハッハッ!」


厳つい顔をした船乗りの言葉に、なんとも爽やかな笑い声で答える色黒のイケメン。


そのあまりにも自然で似合い過ぎる反応に、笑いに対しての反論の声すら上がらなかった。


「……それで、何でこの少年はここに居るんですか?」

「ん?」


頭を抱えてしまった厳つい顔の船乗りは、すぐそばでボケーッと突っ立っていた残念な少年を指差して尋ねた。


「ああ。聞くところによると、彼らは例の海域にある島に用があるらしくてね。冒険者でもあるらしいから、化物の討伐に協力してもらうことにしたんだよ」

「……したんだよって、勝手に決めないでもらえますかっ!?」

「アッハッハッハッ!」


憤慨する厳つい顔の船乗りに対して、朗らかな笑みを零す色黒のイケメン。


その時、騒がしくしている船乗りたちの中から、顔に傷のある男が声を上げた。


「そいつに関わるのだけは、断固反対ですっ!」


過去、路地裏にて残念な少年に襲撃され、空き巣やスリで集めた金品を強奪されたことのある人相の悪い男が、鼻息を荒くしながら叫んだ。


「その餓鬼は災厄の化身です! 俺達はもうすでに体験しています! どんな理由であれ、そいつに関わると絶対にろくなことになりやせんっ‼」

「……そうは言ってもな」


まるで、これから退治しに行くという化物以上の存在でも見ているかのように、残念な少年の方を見ながら捲くし立てる顔に傷のある男。


それを聞き、困ったように頬のあたりを掻く色黒のイケメン。


「一応、彼もお前らが起こした事件の被害者なんだろ? お前も含めた身内のもんがこの街で迷惑を掛けちまってるから、この化物の討伐はその詫びみたいな意味もあるんだよ。だから、あまりそのことで私から口出しはできないんだ」

「そうだぞ! お前らから強奪した金品のせいで、俺は衛兵さんのご厄介になって一日牢屋の中で過ごしたんだからな! ちゃんと責任をとれ‼」

「それに関してはテメェの自業自得じゃねぇか!?」


今回、ある海域に住み着いた化物の討伐を計画した理由について簡単に述べる色黒のイケメン。どうやら、街の方で問題を起こした部下たちの尻拭いという側面もあるようである。


そんなことを、苦笑いを浮かべながら言う色黒のイケメンの横で、残念な少年はまたも自分勝手な発言を口にする。


それを聞いて、怒りを露わにして反論する顔に傷のある男。その時、若頭の言葉を聞き、周囲にいた船乗りたちが一斉に「お前のせいかよ!」とでも言いたげな視線を彼に向けている事には気づかなかったようである。


「とにかく、これは決定事項だ。出発の日時や人員など詳しい内容を決めるから、幹部は後で集まってくれ」

「「「「…………へい」」」」


無理やり話を終わらせた若頭にどこが歯切れの悪い返事をする船乗りたち。


そんな光景に一抹の不安を覚えながらも、紫色の髪をしたメイドはその場に積まれていた荷物の陰に隠れながら、船乗りたちの成り行きを遠くから見守っていた。




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