再会というのは、突然にやって来る(オッサンも含む)
「――――――はぁ~。何で俺がこんな目に……」
とある船着き場。アルバの街にある港で、全身から汗をダラダラと垂らしながら、忙しそうに大きな荷物を運び続けている人相の悪い男がボソリと小さな声で愚痴る。
「―――コソ泥まがいの事をしてたテメェらの自業自得じゃねぇか」
「……うっせぇ」
そんな人相の悪い男の独り言を聞いたのか、同じように大きな荷物を抱えて偶々横を通りかかった船乗り風の男が、人相の悪い男の方を向きながらニヤニヤと笑う。
その船乗り風の男の言葉に、罰が悪そうにそっぽを向きながら文句を言う人相の悪い男。
この人相の悪い男。実は、行きつけの酒場で知り合った仲間数名と『ダウトワール』という組織を作り、少し前までアルバの街で盗みを働いていたのである。
しかし、ある出来事をきっかけに、盗みを働いていたことを職場の上司に見つかってしまった人相の悪い男は、今ではその罰として下っ端の一人として、タップリこき使われていた。
「……大体、俺は悪くねぇ。今迄は馬鹿な衛兵どもも攪乱できてたし、上手くやれてたんだ。……そう、あのイカレタ餓鬼にさえ出会わなければ―――」
「呼んだ?」
「うぉおぉっ!?」
俯きながらボソボソと自分勝手な言い分を展開させる人相の悪い男。その時、荷物の運搬を続けていた男の横から突然、物凄く見覚えのある少年が顔を出した。
驚きのあまり、その大きな荷物を地面に落としてしまう人相の悪い男。
「テメェ、何やってんだっ‼」
「す、すんません!?」
ドシンッという重厚な音に反応して、頭にバンダナを巻いた筋骨隆々のオッサンが人相の悪い男に向かって怒鳴り声を上げた。
それに、顔に傷のある人相の悪いオッサンは、すぐさま低姿勢で謝罪している。
「ヤレヤレ。汚いオッサンのくせに、自分の仕事も満足にできないとは……」
「テメェのせいだろうが!」
「―――オイ、ナニをくっちゃべってんだ?」
「すんませんっ! すぐ仕事戻りますっ!」
ウザい態度で肩をすくめる残念な少年を前にして、怒りを露わにする人相の悪い男。
しかし、上司と思われるその筋骨隆々のオッサンに睨まれて、すぐに縮こまってしまう。
「……オイ坊主。お前、あいつの知り合いか?」
「ん?」
大きな荷物を抱えて走り去っていく人相の悪い男を眺めていた残念な少年。そこに、その男の上司と思われる筋骨隆々のオッサンが話しかけてくる。
「う~ん。知り合いというか、何というか。簡単に説明しますと、金品を取った側と取られた側の関係です」
「……はぁ。何だ、坊主も、あの馬鹿が起こした事件の被害者かよ……」
残念な少年の発言を聞き、頭痛でも抑えるように額のあたりを手で押さえてため息を吐くバンダナのオッサン。
「ホントすまねぇが、取られた物を取り返しに来たんなら無駄だぜ。あいつら、盗んできた金をすぐ酒やギャンブルで使い切っちまうからな。たぶん坊主が取られた物もなくなっちまってるだろうから、わりぃが諦めてくれ……」
「……え?」
ガタイが良く船乗りらしく如何にも悪そうな顔をしていたバンダナのオッサンは、その怖い人相からは想像もつかない、申し訳なさそうな顔をして、自分とはまったく関係ない筈の事なのに残念な少年に謝罪した。
それに対して、残念な少年は何を言われているのか理解できないとでも言いたげに、キョトンとした顔で首を傾げてみせる。
「何言ってんの? 俺の持ち物をあのオッサンに盗まれたんじゃなくて、あのオッサン達の持ってた金品を俺が強奪したんだけど?」
「…………は?」
残念な少年の発言を耳にし、思わずマヌケな顔を晒すバンダナのオッサン。
その後、しばらく放心していたオッサンが気を取り直すと、詳しい事情を聞きたいと少年は遠くで鬼のメイドが見守る中、複数の船乗りのオッサンに囲まれて連行されていった。
その瞬間、残念な少年は心の中で叫んでいた……。
『チクショウッ! 何で俺の異世界ファンタジーは、オッサンとのエンカウント率だけ、異常にたけぇんだよっ!?』と…………




