最近のメイドというのは、主の命令を無視するのが常識?
「ばれたらヤバイのに、なに平気な顔して連れ歩いてんだよ!」
「いや~、折角こんな可愛いメイドのご主人様になったから、周りに自慢したくて……」
「どこまで非常識なんだよテメェは……」
ついに頭を抱えてしまうヤクザ風のシスター。
「そんなことよりも、鬼族の隠れ住んでいる場所に心当たりない?」
「…………そうですね」
残念な少年の質問を受けて、何かを言いたそうに一瞬だけ鬼メイドの方を見やったスケルトンはそのまま考えこみ始めた。
「……確か、大陸に居場所をなくして、どこか小さい島に移り住んだという話を聞いたことがある気がします」
「島? もう少し具体的な場所は?」
「……申し訳ありませんが、さすがにそこまでは……」
「チッ! スケルトンのくせに使えないな! こんな時くらい、死者の王らしく妖術で解決しろよ!」
「だから私はアンデッドではないと言っているでしょう!?」
残念な少年のメチャクチャな理屈を前に、思わず声を荒げてしますスケルトン。
「……そもそも、詳しい場所が知りたいのなら彼女に聞けばよろしいのでは?」
「ん?」
ため息をつきながらもスケルトンは孤児達と遊ぶ鬼メイドの方を示しながら、残念な少年に尋ねた。
「…………じゃあ、ここで聞いてみようか?」
「……え?」
不満そうにしている残念な少年を見つめて、不思議そうに声を漏らすスケルトン。
そして、徐に孤児達と遊ぶ鬼メイドの元へ近づいていく残念な少年。
「おーい、鬼メ―――」
「申し訳ありませんが、純真な子供達が穢れるのでそこから先に一歩以上近付かないでください」
吞気にしゃべりながら近づいてくる残念な少年の発言をピシャリと遮り、その場に制止させる鬼メイド。
「何の御用でしょうか?」
「……あのさ、鬼族の隠れ住んでいる場所を教えてくれない?」
「…………はぁ」
残念な少年の問いに対して、アンニュイなため息を溢す鬼メイド。
「申し訳ありませんが、それをご主人様にお教えすることはできません。そもそも、前にも言ったはずですが、それを私がご主人様に教えるメリットはあるのですか? 何度も同じ質問を繰り返すゴミ以下の知能しかないご主人様では理解できるかどうかも怪しい上に、私も含め同族にとってデメリットしかないにも関わらずお教えするなど、どう考えてもあり得ないことですよね? そんなこともご理解いただけていないのでしょうか? そもそ―――」
「あ、はい、もういいです。失礼しました」
捲くし立てる様に毒を吐く鬼メイドを前にして、トボトボとスケルトンの方へと後戻りしてきた残念な少年は、そのまま俯いてしまう。
「……なあ、今ならタダであげるからさ。あのメイド、引き取ってくれない?」
「「……結構です」」
見事に声が重なるスケルトンとヤクザ風のシスター。そんな二人同時に貰った拒否の言葉を受けて、残念な少年は半べそをかきながら項垂れるのであった。