鬼と悪魔の見分け方? パート2
暫くすると、ゴブリン爺ちゃんの手の平が光り始め。眩い光を放った後、徐々に収まっていった。
「……やはり、予想しておった通り鬼族じゃったか」
「っ!」
「鬼族?」
先程までずっと無表情であった鬼メイドは、ゴブリン爺ちゃんの発言を耳にして急に目を見開いた。
そんな鬼メイドの変化など気にも留めず、残念な少年は首を傾げていた。
「それって確か、魔族によく似ているっていう種族だよな?」
「そうじゃ。その種族の特徴として、人の姿でありながらその額に歪な角を持っていた為に、魔族と混同され今も迫害をされている種族じゃ」
「……あのさ。俺の目には、どっからどう見ても鬼にしか見えないんだけど、どこら辺が魔族と似てんの?」
「っ‼」
ゴブリン爺ちゃんの説明を聞き、顎に手を当てて考え込みながら残念な少年は言った。
その言葉に反応し、バッと勢いよく少年の方に顔を向ける鬼メイド。
「そもそも魔族って、なんか特殊な検査方法じゃないと分からないんだってグラサンの人に習ったんだけど。ちがうの?」
「さあのぅ。お主の言う通り、まんま人と同じ見た目の魔族とかもいるから、儂がさっき行った魔術のように特殊な方法でないと魔族かどうか正確に判別することは、まずできん。まぁ、一般的な解釈としては、大昔に人間に近い見た目なのに角なんて可笑しな物のついてるせいで迫害されたのを契機に、それが時代と共に発展して魔族と一緒くたにされたのかもしれんな」
「……う~わ、この世界の人間ってのも、大概クズだよな~」
「……そのセリフ、人類のクズ代表であるお主にだけは言われとうないわ」
「ヒドッ!」
ゴブリン爺ちゃんの辛辣な発言に対し、大袈裟なリアクションを見せる残念な少年。
「大体さ、こんな美少女を額に角がある程度で迫害するとか、そいつらの頭の方がどうかしてる! そんなのを虐げてる暇があるなら、この街でさえのさばっている白髪の大鬼や小鬼の爺ちゃん、スケルトンといった人間社会に蔓延っている魔物を討伐する方が先じゃないか!」
「……おい。なぜそんなセリフを儂の方を見ながら言うとるんじゃ?」
「……別に、ただ何となく?」
「おいこら、目を逸らすんじゃない! 儂はゴブリンでないと何度言ったらわかるんじゃ‼」
残念な少年の発言を聞き、憤慨するゴブリン爺ちゃん。傍目には、もうすでにコントをしているようにしか見えない。
その間、鬼メイドはただじっと残念な少年の方を見つめたまま硬直していた。
「ん? どうかしたの?」
「っ!」
ようやくメイドの視線に気づき、声をかける残念な少年。
急に声を掛けられたことに驚いた鬼メイドは若干肩を震わせた後、コホンと小さな咳ばらいを一つしてから口を開いた。
「何でもありません。……ただ、ご主人様に対する見解に関しまして、そこらに転がっている畜生共よりかは幾分ましなのだと認識を改めた所です」
「え? それは評価が上がったと考えていいんでしょうか?」
「いや。言い方から察するに、この場合、汚い石ころが綺麗な石ころに変わった程度じゃろうな」
「チクショウ、例えが分かりにくい!」
悔しそうに地団太を踏む残念な少年。それを愉快そうに横で見ているゴブリン爺ちゃん。
そんな楽しそうな空間を作り出している二人の人族を見つめながら、メイド服を着た鬼族の女性は二人に気付かれないよう、ほんの少しだけ口角を上げていた。