回想シーンというのは、戻すタイミングが難しい
「――――――前々から思っておったが、お主、どうしようもないクズじゃな」
魔道具店の一室。カジノで奴隷を購入した件に関してあらましを聞いた小柄な老人は、テーブルを間に挟んで目の前の席に座っている残念な少年に向かって言った。
「おいこら。仮にも自分の弟子をクズ呼ばわりするなよ」
「それ以外に表現のしようがないじゃろうが‼」
軽い調子で反論する残念な少年に向かって、声を荒げるゴブリン爺ちゃん。
「それより、その奴隷というのはどこにおるんじゃ?」
キョロキョロと周囲を見回すゴブリン爺ちゃん。その部屋には、小柄な老人と残念な少年以外に人の気配はなかった。
「一応鬼メイドなら、この袋の中に入ってもらってるけど」
「……は?」
ゴブリン爺ちゃんの問いに対して、持っていた小さな袋をテーブルに置く残念な少年。キョトンとした顔になるゴブリン爺ちゃん。
「何を言ってとるんじゃ、お主は?」
「何って、だからこの袋の中にメイドを入れてあるんだよ」
「そんなこと出来るわけ無いじゃろうが‼」
テーブルに両手をつきながら憤慨するゴブリン爺ちゃん。
「いやいやいや! 普通に出来てるから!」
「そんな小さな袋に人間一人を入れられるスペースがあると思っておるのか! 仮に空間収納用の魔道具だとしても、生きておる生物を収納することはできん筈じゃ!」
否定する残念な少年に、なおも食い下がるゴブリン爺ちゃん。実は、この世界で流通している多くの物を収納させられる空間収納用の魔道具というのは、本来、素材や道具など死んだものしか収納することのできない仕組みになっていた。
「だってこれ、俺が手作りした魔道具だからそれぐらいできるけど?」
「……はぁ?」
残念な少年の言い分に、当惑するゴブリン爺ちゃん。
「大体、生き物を入れられないとかそんな仕組みなら、森や山とかに潜んでた汚いオッサン達をギルドに突き出すこともできないじゃんか」
「…………何してくれとんじゃ、お主は……」