男であっても、年を気にするヤツは普通にいる
「あと、単純にそれなりに高価で数に限りのある貴重な魔道具だからな、おいそれと奴隷につけるわけにはいかねぇし、つけてた奴隷自身に壊されちまう可能性もあるからな。……つっても、うちの店ではそうしてるってだけで、他では違う方法取ってるかもしれねぇがな」
「なるほどな。おっちゃんもいろいろ考えてんだな……」
「……お前、ホントいい加減にしろよ。俺はおっちゃんじゃねぇ!」
腕を組んで納得したように声を漏らす残念な少年に、目を吊り上げながら反論するオールバックの男。『おっちゃん』扱いされるのが余程嫌なようである。
「それはともかくとして、何でメイドの服を着せられてるの?」
「おいこら、簡単に流すんじゃねぇ!」
「ええぇ~……」
よっぽど気になるのか、自分の呼び方に関して食い下がるオールバックの男に、とても嫌そうな顔をする残念な少年。
「別に呼び方なんて何でもいいじゃんか。おっちゃんがおっちゃんである事実は変わらないんだからさ?」
「うるせぇ! まだ若いのに年寄り扱いされる大人の気持ちがテメェにわかんのか!?」
「ええええぇぇ~、逆ギレ……」
オールバックの男の激しい剣幕に、ドン引きしてしまう残念な少年。少年の方が押されている場面と言うのは、いつも問題ばかり起こす中心人物であった残念な少年にしては珍しいとさえ思える光景であった。
「しょうがないな。じゃあ、なんて呼べば納得するの?」
「あ? ん~、そうだな。とりあえず『ボス』とでも呼んでくれ」
「え? マフィアの?」
「誰がギャングだ!」
小気味のいいコントを繰り広げる二人。その間にも、サングラスのディーラーとメイド服を着た奴隷は、ただ静かに待っていた。
「……ていうか、無口なグラサンの人はともかくとして、こんなに騒がしくしてるのに、なんで鬼の美女は一言もしゃべらないの?」
その時、またも論点を変える残念な少年。
「お前、またか……」
「いや、ごめんごめん、でも気になるからさ。喉の治療はもうしてあるんだよね、ボス?」
「……はぁ。さあな、多分終わってると思うが、どうだ?」
態度を変えない残念な少年を前にして、ため息をつきながらもオールバックの男はサングラスのディーラに短く質問を投げかける。
「はい。既に終わっています」
それに、すぐさま返事をするサングラスのディーラー。
「じゃあ、何で?」
「はい。現在、こちらの奴隷には同じような暴走をすぐに起こさないよう、一時的に抑えるため、魔術による奴隷契約を施した際に声を出せなくするなどの制約を施してあります」
「へぇ、奴隷契約ってそんなこともできるんだ」
サングラスをかけたディーラーの説明を聞き、勉強になったとでも言いたげに声を漏らす残念な少年。