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残念な少年は、どこまでもブレない!


「……で、どうする? 俺としては、兄ちゃんに買ってもらえるとありがたいんだが、説明した通り色々といわくつきの奴隷だ。ここまで連れてきといてなんだが、別に買わなくてもいいんだぜ?」


どこか諦めた様に残念な少年に話しかけるオールバックの男。正直、彼の真意は分からないが商人としては問題のある態度にも思える。しかし、商売人として相手に損をさせないために取り組んでいる結果ともとれる。


「……一つだけ質問していい?」

「ん? なんだ?」

「この街に娼館ってある?」

「…………は?」


残念な少年の唐突な質問に対して、キョトンとした顔を晒すオールバックの男。


「……えっと。一応あるにはあるが、正直やめといたほうがいいと思うぞ?」

「なんで?」

「基本的にこの国では娼館ってものに力を入れてねぇから、遊女っていうと村の口減らしなんかで身寄りも金もなくなった女が仕方なくするような商売でな。遊女共に相手を楽しませようなんて余裕はねぇし、下手すると病気持ちなんてことも普通にある。だから、王国に属してるこの街で、娼館で楽しむなんてことはまず無理だろうから、もしそうした店に行きたいんなら帝国か教国の方に行った方がいいと思うぜ」

「……ふ~ん」

「他国の娼館だと、特殊な魔術なんかで性行為なんかがあったとしても大丈夫なように国で厳しく管理してあるからな。その代わり、この国の領内では奴隷の売買が他国と比べてある程度発展してるから、こっちでは金はかかるが気に入った女の奴隷を購入して愛玩用にするか、囲い込むって形が一般的なわけだ」

「……なるほどなるほど」


少し戸惑いを見せながらも語り出したオールバックの男の説明を聞き、残念な少年は頻りにうなずく。


そして、急に深刻そうな顔をつくる残念な少年。


「……つまり、俺がこの国にいる間に女の子とイチャイチャする為には、可愛い奴隷を購入するしか方法はないというわけか」

「…………いや、まあ、うん、そうだな?」


真剣な面持ちで言う残念な少年の発言に対し、言葉を濁すオールバックの男。


「すなわち! 俺にはこの奴隷を買う以外の選択肢はないという事だ!」

「いや、ちょっと待て! その理屈はどう考えても可笑しいだろ!?」


握り拳を作りながら力説する残念な少年に、思わずツッコミを入れてしまうオールバックの男。


「いいのか? お前ホントそれでいいのか?」

「もちろん! 未来の酒池肉林の為の投資と思えばメチャクチャ安いですから!」

「…………」


聞き返してくるオールバックの男に向かってサムズアップを決める残念な少年。


そんな妙な場面をただ静かに見守っているサングラスのディーラー。


「……はぁ~、わかったよ。まあ、頼んでるのはこっちだし正直助かるからな。ただし、後で返品したいとか言っても受け付けねぇからな」

「はっはっはっ。返品だなんて、そんなこと考えるわけ無いじゃないですか!」


ため息を溢すオールバックの男。彼の言葉を聞き、そんなことはあり得ないとでも言いたげに愉快そうに笑う残念な少年。


少年の笑い声がうるさく響く中で、サングラスをかけたディーラーは黙々と奴隷購入の為の準備を行っていた。




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