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常識で考えて、奴隷に問題があるのは普通だと思う


「――――――お前、地下では大声出すなって何度も言ってたよな?」


とある地下牢。鉄格子の前に立つ残念な少年に向かって、オールバックの男は話しかけていた。


「うん。言ってたね」

「……わかってんなら、何であんな騒いでんだよ?」


その頬を引きつらせながら、残念な少年に向かって言うオールバックの男。少年は先程まで、まるで何かに取り付かれたかのように有頂天になって騒いでいた。


「いや~。薄い本とかでしか見たことのない本物の鬼娘を目の前にしたらつい……」

「……なにがついだよ。……なにが」


残念な少年の言い分を聞き、ため息を溢すオールバックの男。


「…………てか。いい加減こっち向いて話せ!」

「え?」


憤慨するオールバックの男。


彼の怒鳴り声を背に聞きながらも、残念な少年は鉄格子を両手で掴み、牢屋の中をずっと覗き込んでいた。


「ハァ~、ヤレヤレ。大声出すなって言っておいて、自分でさっそく大声を出してるじゃんか」

「……お前、ホントふざけんなよ?」


ようやく振り返った残念な少年は、アメリカのコメディで見そうな誰もがウザい感じるように首を振る仕草をする。


それを、頬をヒクヒクさせながら見るオールバックの男。


「それよりさ。何でこんなに騒いでんのに、この奴隷の子は何も言わないんだ?」


そんな中、疑問に感じたことをそのまま口にする残念な少年。


「……ぷっく。……そりゃ、喋りたくても喋れねぇからだろ」


なぜか笑いを堪えるようとして唾を飲み込み、残念な少年の問いに答えるオールバックの男。


どうやら、顔を痙攣させていたのは怒りからではなく、笑いを堪える為だったようである。


たまたまオールバックの男の横にいたサングラスをかけたディーラーは、そのサングラスを間に挟んでいても分かるように、その笑いのツボが理解できないとでも言いたげな視線を自分の主に向けていた。


「喋れないってなんで?」

「実はこちらの奴隷は、この牢に入るずっと以前から、同じ言葉を口にし続けておりまして、その際に喉を潰しているのです」

「へぇ~、そうなんだ。………………て、それ分かってて何で治療しないの!?」


サングラスのディーラーの丁寧な説明を聞き終え、納得したように頷きながら返事をする残念な少年。


そして、残念な少年は少しの間を開けてから当然の疑問を口にする。


「いや、まあ、なんつーか。しても意味がねぇんだよ」

「え? まさか、奴隷だから治療をしないとか?」


歯切れの悪い返答をするオールバックの男。それに対して、何故か大袈裟に驚愕する残念な少年。


「……う~わ、まさにブラック。奴隷をゴミか道具としか見ていない鬼畜の所業……」

「おいこら、誰が鬼畜だ。言っておくが、治療は何回もしてんだよ」

「ええ? じゃあ、治療のできない不治の病とかなの?」


残念な少年のオーバーなリアクションを前にして、ジトっとした視線を向けながら冷静に対応するオールバックの男。


「いや、そうじゃなくてな。単純に治療はできるんだが、この奴隷は治してもすぐに同じことを繰り返して喉をつぶしちまうんだよ」

「……なぜ?」

「…………」


首を傾げる残念な少年に対して、言いにくそうに視線を逸らすオールバックの男。


「……はぁ。まあ、正直に言っちまうけど。この奴隷はな、ずっと人族への恨み言をボヤいてんだよ……喉が潰れる迄な」

「……マジ?」


諦めた様にため息を溢すオールバックの男。彼の説明を聞き、目を見開く残念な少年。


「はい。加えて、治療を施した後でも、また変わらず恨み言を吐き続けてしまい、すぐに喉を潰してしまうので、これ以上状態を悪化させないためにもそのままの状態にしているのです」

「えぇ~。何でそんなことになってんの?」


サングラスをかけたディーラーの説明を聞き、質問をする残念な少年。


「さあな。ただ、魔族かどうか判断はできなくても、頭に角が生えてる人ってのはどう見てもいい印象は受けねぇだろうからな。ここに来るまでの間に、その異様な見た目から迫害されて、俺達に対して恨みを持つようになっても仕方ないんじゃないか?」


肩をすくめながら言うオールバックの男。その答えを聞き、残念な少年はただ不満そうな顔をしていた。







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