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残念な少年とカジノのボス パート2


「…………」

「……おっちゃん?」


暫くの間、項垂れたまま無言になるオールバックの男。それを心配してか、声をかける残念な少年。


そんな自分達のボスを黙って見守っているサングラスのディーラーやタキシードの男達。


そして、周囲の人間が見守る中、漸くオールバックの男は口を開く。


「――――――ぷ……」

「「「…………」」」

「……だはははははははははははははっはは―――」


腹を抱えて笑い始めるオールバックの男。残念な少年の方を指差しながら大笑いするボスを見て、どよめき始めるタキシードの男達。


先程まで水を打ったように静かだった部屋は、オールバックの男の笑い声をきっかけに、急に騒がしくなった。


「馬鹿だ、本物の馬鹿がいる! ギャンブルにはまる奴なんて基本頭のネジぶっ飛んだ奴ばかりだと思ってたが、ここまでイカれてるのは久しぶりに見たぜ!」

「…………」


ゲラゲラ笑いながら、バンッバンッと膝を何度も叩くオールバックの男。


それを、頬を掻きながら黙って見守っている残念な少年。


「……ヒィ~、可笑しかった! 悪い悪い、つい我慢できなくてな!」


笑い過ぎて出ていた涙を指で拭いながら、残念な少年に話しかけるオールバックの男。


「わりぃが、ゲームの続きは無しだ。負ける気しかない奴とやっても面白くねぇからな」

「ええぇ~……」


笑いながら言ったオールバックの男の言葉に、嫌そうな顔をする残念な少年。


「まあ、そう拗ねんなよ。その代わりと言っちゃなんだが、もっといい金の使い道を教えてやるよ」


子供のようにふてくされている残念な少年に、オールバックの男はその見た目にあった悪そうな笑みを浮かべる。


「もっといい使い道?」

「ああ。因みに、お前って女には興味あるか?」

「メチャクチャあります‼」

「そ、そうか……」


オールバックの男の質問に対し、食い気味に答える残念な少年。少年の勢いに押され、思わず悪い顔をしていたオールバックの男はたじろいで、その表情を元に戻していた。


「実はな、ウチじゃカジノ以外でも手広く商売をしてるんだが、その一つでちょっと扱いに困る奴隷が出ちまってな……」

「奴隷?」


説明を始めるオールバックの男の言葉を聞き、首を傾げる残念な少年。


「え? 奴隷って違法じゃないの?」

「何言ってんだお前? 奴隷なんざそこらの店にでも普通に働いてるじゃねぇか?」

「……あ。そういえば、ゴブリン爺ちゃんの店でも奴隷雇ってたな……」


訝し気な目を向けるオールバックの男の答えに、ふと思い出したように独り言を漏らす残念な少年


実は、この世界では、奴隷は違法なものではなく、社会を成り立たせるシステムの一つとして機能していた。


一般的に、国の許可さえもらえれば奴隷を管理する奴隷商という仕事を行うことが出来、犯罪を犯し捕まった者や、金に困った貧しい村などが口減らしのために売った者などが奴隷にされている。


そして、奴隷は奴隷商の下で管理されながら、奴隷商の斡旋してくれる仕事を熟したり、身柄そのものを雇い入れようとする人物に買われたりすることで、賠償金や借金などを返済しようとするシステムになっていた。


「まあ。お前が言うみたいに、違法なことを平気でしてる奴も確かにいるが、そんなのは基本的に国の許可自体もらってねぇ奴らだ。そもそも、ウチみたいにちゃんと許可を取ってやってるところなら、上の目が厳しいから絶対にそんなマネできねぇよ」

「…………」

「……おい、なんか言いたい事でもあんのか?」

「いえ、別に」


オールバックの男の説明を聞きながら、そのマフィアのボスのような容姿を見つめる残念な少年。その見た目からは、真っ当な商売をしていると、どうしても信じられない。


そんな残念な少年の内心を見透かしてか、少年に疑わし気な目を向けてくるオールバックの男。


それに素早く首を横に振って答える残念な少年。


「……まあいい。それでだ、その奴隷ってのがちょっと特殊でな。下手に仕事の斡旋なんて出来ねぇから、そいつを買ってくれる奴がいないかずっと探してたんだが。……お前、その奴隷を買う気ねぇか?」

「……特殊って、何か問題でもあるの?」


オールバックの男の問いに対して、気になったことを尋ねる残念な少年。


「あ~、ちょっと見た目に問題があるってだけで、別に大したことじゃねぇよ。買う気があるんなら、その奴隷の所に連れて行く間にもうちょい詳しく説明するぜ」

「……う~ん」


少年の問いに対して、なぜか言葉を濁すオールバックの男。


そんな男の怪しい態度に、残念な少年は腕を組んで考え込み始めた。






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