残念な少年とカジノのボス パート1
「―――無駄遣いがしたかっただぁ?」
「うん」
カジノ。VIPカードを持つ一部の客のみが入ることのできる特別室。その奥にあるカジノのオーナーがいる部屋の中で、赤茶色の髪をオールバックにしたマフィアのボスのような男は呆れたように声を出していた。
「だって、ギャンブルっていえば基本的にお金を消費することの代名詞みたいな物じゃん。一気に使い切るには、ここ以上の場所はないと思ってさ」
頭をポリポリと掻きながら説明を始める残念な少年。
トランプゲームが始まってすぐ、目に余る奇行を続けた残念な少年に対して、オールバックの男はゲームを中断して、少年の目的について質問をしていた。
「別にギャンブルでなくても、高額の物を買えばよかったんじゃねぇか?」
「だって、ほしい物とかないし。いらない物は買っちゃダメだって皺くちゃの婆ちゃんに止められてるし」
「……いや、常識で考えて、ギャンブルで使う方がダメだと思うぞ?」
ギャンブルを生業としているカジノのオーナーに常識を諭される残念な少年。
「つーか。ただ単に金を消費したいだけなら、下の階にいた時に、ルーレットで適当な数字に賭けとけばよかったんじゃねぇか?」
「そうしてたけど、全部当たったんだよ!?」
「いや、んなことでキレんなよ。……そういう意味じゃ無くてな。複数の数字に賭けてりゃ、普通に損失出せてただろ?」
「………………あ」
オールバックの男の言葉を聞き、何かに気付いたように小さな声を漏らす残念な少年。
「……おっちゃん、もしかして天才か?」
「いや、これぐらい誰でもすぐに思いつくだろ。……てか、誰がおっちゃんだ」
驚愕する残念な少年を前にして、頬をヒクヒクさせるオールバックの男。
「それよりさ、ゲームを再開しなくていいの?」
「……一応聞いとくが、お前、負けるまで全賭けし続ける気だろ?」
「もちろん!」
「…………」
結果的に中断してしまったゲームを促すように、テーブルを叩いて催促をする残念な少年。それをジトッとした目で見るオールバックの男。
そしてオールバックの男のした質問に対して、サムズアップを決めながら答える残念な少年の姿を目の当たりにし、彼は片手でも目元を覆いながら沈黙してしまった。




