ボッチと決めつけるとキレられるのは、世界に関係なく共通する認識のようである
呆れたようにため息を吐くヤクザ風のシスター。
「お子ちゃま達にお小遣いと称して配るのはダメ?」
「額を考えてみろ! ダメに決まってんだろーが!?」
地べたに置いたその小さな袋から金貨を取り出しながら残念な少年は言った。
残念な少年がスケルトンの遺産と呼んでいる、迷宮から見つかった魔族の亡霊の残した金銀財宝は、既に換金がされて金貨に両替されていた。
その半分を教会に住むスケルトンが受け取り、もう半分を発見者であった残念な少年が嫌々受け取っていたのだ。
残念な少年の提案を、全力で否定するヤクザ風のシスター。彼の持っていたスケルトンの遺産は、子供達のお小遣いとして渡すには、貰った人間の金銭感覚が確実にマヒすると思える程、人数分に分配したとしても異常といえる額があった。
孤児として貧しく育ってきた幼い子供なら、なおのこと貰った後に悪影響が予想された。
「ハァ~、ヤレヤレ。我が儘だなぁ~」
「いちいち人の神経逆撫でしねぇーと喋れねぇーのかよ、テメェは!?」
両手を肩幅に開き、首を左右に振る残念な少年。そんな少年を前にして、逆上するヤクザ風のシスター。
「ホント、教会にいる子供達よりも手がかるよな、お前」
呆れたように残念な少年を見つめて言うヤクザ風のシスター。
「……ところでさ。前から気になってたんだけど、不良シスターはこの教会で何してんの?」
「あ゛?」
ある時、ふと疑問に思ったことをヤクザ風のシスターに尋ねる残念な少年。それに嫌そうな顔をするヤクザ風のシスター。
「スケルトンはある意味自分の家みたいなものだし、お子ちゃま達は住むところがないわけだから、ここに住み着いている理由は分かるけど、不良シスターは何でこの教会にいるんだ?」
「…………そんなこと、テメェに関係ねぇーだろ?」
残念な少年の質問に対して、何故か視線を明後日の方に向けて返事をするヤクザ風のシスター。
「……そうか、なるほどな。……泊めてくれる友達がいないのか……」
「……ホント、いい加減にしろよテメェ……。マジでブッ殺すぞ?」
腕を組んで何かに納得したように頻りに頷く残念な少年。そんな彼の発言を聞き、拳を堅く握りプルプルと震わせ始めるヤクザ風のシスター。
「え? もしかして違うの?」
「違うに決まってんだろーが‼」
驚愕する残念な少年に対して、ブチ切れて怒号を上げるヤクザ風のシスター。
「ああもう! ほんとコイツと話してると気が変になりそうだ!」
「いや~、それほどでも……」
「褒めてねぇーよ!?」
頭を抱えてしまうヤクザ風のシスターの言葉を聞き、照れたように頭を掻く残念な少年。
それにすぐさま立ち直ってツッコミを入れるヤクザ風のシスター。だいぶ慣れてきたようである。
「それで、何で不良シスターはこの教会にいるの?」
「………………はぁ~~~~~~~~~~~………………」
またも同じ質問をしてきた残念な少年を前に、長い長い溜息を吐くヤクザ風のシスター。
その少年にもう何を言っても無駄だという事を理解したのか、諦めた様に脱力したヤクザ風のシスターは、近くにあった長椅子の一つにドカッと座り、ゆっくりと背凭れに寄り掛かった。
「……子供達の面倒を見る為だよ。……文句あっか?」
先程までと違う低い声で言うヤクザ風のシスター。
「そもそも、何で不良シスターはこの教会に住み着くようになったんだ?」
「……チッ……」
残念な少年の出してきた疑問に、何故か舌打ちをするヤクザ風のシスター。
「え? 何で舌打ち?」
「……いちいち反応してんじゃねぇーよ」
キョトンとした顔になる残念な少年。それにツッコミを入れるヤクザ風のシスター。気のせいか、ツッコミに、いつもほどの切れがない。
「――――――出だよ……」
「ん? なんて?」
「家出だっつってんだよっ!?」
「っ! み、耳が~……」
先程までの怒号とは打って変わり、ボソボソとか細い声で喋り出すヤクザ風のシスターに、その声を聞き取ろうと耳を澄ませて近づく残念な少年。
聞き取れなかったその声を聞こうと耳に手を添えていた残念な少年は、自棄を起こしたかのように急に発したヤクザ風のシスターの大声で鼓膜にダメージを受け、耳を押さえて蹲ってしまう。
「人がまじめに話してる時に、ふざけてんじゃねぇーよ!」
「ウゥ~……」
少し元気を取り戻したのか、いつものようにツッコミを入れるヤクザ風のシスター。
しかし、残念な少年にリアクションを取る余裕はなく、ただ耳を両手で塞ぐようにして押さえているだけだった。