緊迫する展開なのに、そうできないキャラというのは存在する
「……ハァー。ホント何なんだよお前。普通にしゃべろうとすると死ぬ病気にでも罹ってんのかよ」
大きなため息を溢して冷静になったヤクザ風のシスターが、思ったことを吐露する。
「いや~、これは所謂コミュニケーション技術というものですよ。まあ、友達のいない不良シスターには理解できないかもしれないけど?」
「あ゛?」
「何でもありません!」
アメリカのコメディアンがするような肩をすくめるジェスチャーをする残念な少年に、威嚇するように短く低い声を出すヤクザ風のシスター。
それを聞き、何故かどこかの兵隊のするような敬礼をしてから発言を撤回する残念な少年。
「……まあいい。それで、エレイン教国じゃなかったら、お前は何処でこの銃を見たんだよ?」
気を取り直すようにして、再びその手に持っていた銃を残念な少年に見せながら、ヤクザ風のシスターは尋ねた。
「さっきも言ったけど、俺の生まれた国で軍にいる人とかが愛用している武器だけど……」
ヤクザ風のシスターの問いに、頬を掻きながら答える残念な少年。
「……お前は知らないみたいだが、この銃はエレイン教国でしか流通していない武器で、それ以外の奴らはこの武器の存在どころか、『銃』って呼び名自体知らねぇんだよ」
「へ~、そうなんだ」
ヤクザ風のシスターの説明に対して、感心したように何度も頷く残念な少年。
「カメラなんてのもあるぐらいだから、てっきりこの世界では、俺達の世界のモノを国とか関係なく何でも再現してるのかと思ってた」
「………………テメェ、今なんて言った?」
ポツリと零した残念な少年の何気ない一言に、驚愕して目を丸くするヤクザ風のシスター。
「ん? どうかした?」
「どうかしたじゃねぇーよ! さっきの言い方だと、まるでテメェがここと違う世界から来たみてーじゃねぇーか!」
「……そうだけど?」
「はぁああっ!?」
キョトンとした顔で宣う残念な少年の言葉に、驚きの声を上げるヤクザ風のシスター。
終始、残念な少年に振り回されているヤクザ風のシスター。
この時、ずっと疑問に思っていた銃について漸く尋ねることのできた彼女は、それ以上の面倒な謎を目の前にして困惑してしまうのだった。