しわす
日に日に朽ちてゆく感じがする。
肉体がではない。心がだ。
ドス黒い何かが重く心にのしかかり僕を壊してゆく。
いつからだろう。どうしてだろ。
今が十二月だと言うことは少なからず関係していると思う。
「師走」とも言われるこの月、ともすれば「死走」とも言い換えられる。
きっと、無意識が迫りくる死を意識して、無為な生を謳歌している僕を殺そうとしているに違いない。
無為な生への焦燥感が僕を激しく掻き立てる。
『汝、罪あり』
と何処かから聞こえて来る。
山にいる。
いや、脈絡がなく申しわけがないが、僕は今山にいる。
僕としては別段おかしいことではない。
何かに駆り立てられた時、僕はよく山に来る。
無為な生への焦燥感は僕を山へと逃避させた。
十二月の山、もちろんだれもいない、動物の気配すら無い。
葉が落ち、死の気配をにじませる絨毯が、寒いにやられた動物の死骸が、恨めしそうに僕を見る。
なるほど「死走」と言われるだけはある。
気を抜くとこの焦燥感は、僕をこの絨毯の中へと誘うだろう。
僕はしばらく歩いた。
ザクザクと絨毯を踏みしめ、一歩一歩確かに歩いていた。
足跡がのびる。
僕の歩いた痕跡が、このおおよそ生命の消え去った空間に刻まれ続けた。
この瞬間、この場所で僕は確かに生きていた。
この空間の誰もが望んだ生を、僕は確かに持っていた。
だが僕の無為な生への焦燥感は僕の心を蝕み続ける。
日に日に朽ちてゆく感じがする。
僕の無為な生への焦燥感が消えることはおそらく無いだろう。
それこそ僕が「死走」に飲み込まれるまで。