Off-the-shelf paranoia.
紺野卵衣は浸っている。
何にと問われれば妄想に、としか言えないが。
「悲しみを打ち消す魔法が_________!」
ヒートアップし過ぎた、とキョロキョロと周りを見渡せば四ッ谷だけが紺野を見ていた。
その瞳は不思議と羞恥心が消える。…………とも思ったがやっぱり恥ずかしかった、他人に見られるのはやはり慣れていない。
「卵衣ちゃん?」
「え、ぁ、みんな……。」
刻乃龍、胡桃沢絢葉。
両名とも紺野のクラスメイトであり友人だが、なんだか今の状況は見て欲しくなかった。
「どうしたの?」
「な、なんでもない!大丈夫だよ。」
ちらりと視線を送るとまだにこにこと笑いながらそこに立っている四ッ谷言ノ葉と目が合った。
「!」
「四ッ谷?」
「ふふ、やっほ刻乃先輩。」
刻乃は確か交流があると言っていた気がする。後輩にしてはやけに馴れ馴れしく挨拶をした四ッ谷はぎゅ、と自分の手を握る。
「紺野、卵衣先輩?」
「え、はい……ういに何か用が…………?」
「とても素敵だなと思っただけ!ふふ、ふふ!!なんでもないよ!」
そのまま四ッ谷はどこかへ消えていく。…………あっちは中等部の校舎のはずだけど………………
「あの人、本当に根本がイカれたヤバい人だからあんまり関わらない方がいいよって龍君言ってなかったっけ?」
「嗚呼、関わらない方がいいぞ。いずれ酷い目に遭う。」
それは、こちらが?
「…………まぁ、あの人本当にいつかやらかしそうだからねぇ。」
この言われようである。
既製のパラノイア