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時空の箱

作者: toharu

 この世界の果ての向こうにある、言葉では言い表せないほど遠い場所で天から地へと落ち続ける箱があるのはどんな賢者でも知らないことだ。だんだんと天から離れ地へと近づくその箱は黒い木で作られ金で縁取られている。

その箱が最初にたどりついた時空はある王国の古代の地だった。

その時、箱が見た光景は、家が並ぶ村だった。その村の家は星座の模様がありそれは青く光っている。空は紺色で黄色の光がぽつぽつと輝いてる。

箱の前に最初に表れたのは黄土色のあごひげと髪を生やした中年の男だった。中年の男は箱に興味を持ち、持っていた何かの青く光る部品を箱の中に入れ、去って行った。

この興味本位の行動がまさかこの物語を紡ぐことになったとはこの男はみじんも思ってないだろう。

箱は新たな時空のはるか上空に移動した。

 ある森にすむ種族の少年は金で縁取られた黒い木の箱を見つめていた。この時空の地に降りたった時箱が見た光景は夕暮れの美しい森と1人の少年だった。

少年が箱を開け、中を見るとそこには青く光る奇妙な石があった。少年は戸惑いの顔を見せたあと、その石を持ち、村へ帰って行った。

少年は次の日、行商人に出くわした。

少年が行商人に青い奇妙な石を見せるとなんとそれは一生暮らしていけるような大金へと変わった。決して裕福ではなかったこの少年にとってこれには大喜びだった。

 安定した暮らしを送れるようになった少年は、あの箱があるところに訪れ、恩返しのつもりでたくさんの果物を中に入れた。

赤や青など様々な色のこの森でしか取れない果物を大量に詰め込まれた箱は、少年が去るのを見計らって次の時空へと消え去って行った。


時空を超えた先にあった景色は何もないただ広いだけの草原だった。

この時空へ落ちてきた箱を見つけたのは赤茶色の大きなとんがり帽子をかぶった旅人だった。

旅人は黒い木の金で縁取られたその箱を拾い、中を見ようと丁寧に開けた。

その中に入っていたのはどれも自分が欲しかった色鮮やかなフルーツばかりだった。

旅人は大喜びし、すぐにそのフルーツを平らげた。そして、箱への恩返しのつもりで後で売るつもりだったキノコを箱に入れた。そのキノコが腐っているとも知らずに。

腐ったキノコが箱に入った。たったそれだけの出来事でこの物語は大きく動くことになった。

そして箱はまた新たな時空へ消え去って行った。

この次の時空で起こる出来事はまた他の時空で大きな影響を及ぼすこととなる。


とある沼の小屋に住む魔術師は今、あることが原因で怒り狂っていた。その原因とは。それは数日前の話しだ。

数日前、魔術師は薬の材料となる薬草を取りに沼を歩いていた。その時に黒い木で作られ、金で縁取られた箱を見つけた。

魔術師はそれを拾って帰り、中を開けた。その中には魔術師の大好物であるキノコが入っていた。魔術師は腐っているとも知らず、あっという間にキノコを平らげた。

そして案の定、魔術師は数日間寝込んでしまった。

そして今に至るわけだ。魔術師は箱への仕返しのつもりか、小瓶を箱の中に入れた。小瓶の中では赤い液体が揺らめいている。

魔術師は箱を小屋の窓から沼へ投げ、新しい薬の調合を始めた。あの赤い液体でこの物語が終わるとも知らずに。

箱は消え去り新たな時空へと向かった。物語の終わりの地となる時空へ。

とある時空のフィゲイジアと呼ばれる王国では「時空の箱」と呼ばれる箱を神として崇める反乱軍と、その時空の箱を狙う極悪非道な帝国軍の壮絶な戦いが繰り広げられていた。

反乱軍は、箱を神とあがめているが時空の箱が彼らの前に表れたことは一度もない。そもそも実在しないのではないかという者までいた。しかし彼らはいつか箱が現れると信じて帝国の本拠地へ進んでいるのだった。

そして、ついにその時が来た。箱が反乱軍の本拠地に落ちてきたのだ。

その箱は神話で伝えられていた通りの黒い木で作られ、金で縁取られた箱だった。反乱軍は恐れ多かったのか、箱を開けようとしなかった。もしここで反乱軍が箱を開けていたらフィゲイジアは帝国に支配されていただろう。

箱は厳重に保管された。軍の四分の一がこの箱を守る役になった

しかしその努力もむなしく箱は帝国に盗まれてしまった。

反乱軍はその事件で帝王討伐をあきらめていた。

そして箱は帝王の手に渡った。帝王は乱暴に箱を開けた。その中に入っているのはもちろん赤い液体が入った小瓶だ。

帝王はこの薬を飲むときっと最強になれると思いこんだ。

もちろん、魔術師はそんな薬は入れていない。

帝王がその薬を飲むと急に側近がどこかへ走って行ってしまった。帝王は側近を追いかけていると人がどんどん少なくなっていることに気付いた。さっきここにいた護衛も、もういない。

その時、外を見てみると反乱軍が攻めてきている。帝王は訳が分からないまま、フィゲイジアを去ることとなってしまった。

そう、この薬は人に嫌われるようになる薬だったのだ。

こうして帝国は滅び、フィゲイジアは平和になった。

反乱軍も帝国軍が消えたという知らせには驚きだったが、次第にそれも安心感へと変わっていき、簡単に城を攻めることが出来た。  

そのころ時空の箱の中に金の兜を恩返しのつもりで入れた兵士がいた。箱は消え去り、新たな時空へ行ってしまった。こうして時空の箱は良い者には幸運を、悪い者には不幸をもたらすのだった。


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