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神魔喰いの人外達  作者: 神食狼
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孤児の少年

永続王国『ヴァルハラ』。


それがこの王国につけられた名だ。貿易によって得られる枯渇することのない資源と七業権力者の能力によって未来永劫に発展する、無限に続く神の王国。それが王国に住む人たちの評価だった。


しかしそれは少年―イオンにとっては到底納得のできるような評価ではなかった。


確かに貿易や商業によって、街はすごい賑わいと熱気を見せている。しかし政府の権力者はそれを利用して私服を肥やすために堅苦しい圧政を敷いているし、街の人はそれを当たり前だと信じて疑っていない。


永続狂気帝国『ヴァルハラ』。


そっちの言い方の方がしっくり来てしまうようで笑えてしまう。


「おいネオン。聞いてるか?」


「またボケッとして。そんなんだから、生きてるかって言われんだよ。」




―――――――




7つに区切られたヴァルハラ王国の西武に位置する小さな街『アーケア』。

七業権力者の『傲慢』の名を背負った女性権力者が支配する街で、都会好きな彼女の性格が反映されたような、背の高い石作りの建物が多い。


今作の主人公でもあるネオンは、現在その街中にある古びた教会の屋根の上でボケッとしていたが、隣から聞きなれた声が聞こえてきて、我に帰った。


「コリン、シリル……わりぃ、聞いてなかった。」


ネオンのこの発現に栗色の髪の少年、コリン・バチスと赤髪の少女、シリル・トリニティは呆れ顔でため息を着いた。


二人はネオンの幼馴染であり、あまり人と友人関係を持ちたがらないネオンにとっては唯一親友と呼べる仲の人間であった。


「騎士団への入団。お前も行かないかって話。」


「騎士団……因みに二人は本当に行くのか?」


「当たり前だ!あたしだって、戦えるんだからな!」


この王国には、王国を警備するための騎士団が地域に1つは必ず存在している。主な仕事は王国の警備など常に危険が伴う物がほとんどだが、こな王国に住む住民達には人気がある職であった。


実際に二人は幼い頃からこの騎士団への入団を目標としており、事あるごとにネオンにも入団を進めていたのだ。


だが、当のネオンはと言うと―


「誘ってくれるのは嬉しい事なんだが……わりぃ、やっぱ興味ねぇわ。」


騎士団の主な定義は『王国のために命を捧げ、命を賭して王国を守る』である。こんな王国のためにわざわざ命を捧げたくないと言うのがネオンの考えであったし、なにより……


「命を賭しても守りたい物が見つからないんだ。」


「なんだよぉ、連れないなぁ…。給料良いのによ。それに、王国中から感謝されるぜ!」


「相変わらず騎士団に興味がないのは昔から変わってないみたいだな。おいコリン、そう言うお前は入団手続きを済ませたのか?確か締め切りは今日の5時までだったはず―」


「…へ?」


シリルの発現に、コリンの顔が一気に青ざめた。この調子だと、入団手続きを忘れていたようである。因みに、現在時刻は午後4時30分である。


「やばい!忘れてた!時間がねぇ!急がねぇと!」


「はぁ…はいはい、付き合ってやろう。という事でネオン。あたし達は今日は帰るからな。」


「おう、またなネオン!絶対に騎士団で偉くなって、お前を強制的にスカウトしてやるからな!」


最後まで騒がしいコリンのケツを蹴りながら去っていくシリルの姿を、ネオンはまじまじと見つめていた。


シリルにもコリンにも、守りたい物がある。兄弟がいる、親がいる、家族がいる、友達がいる。それを全てひっくるめて、この王国を守りたいと思っているのだろう。


しかし自分にはそれがない。物心着いたときから孤児だった自分には、命を賭してまで守りたいと思える物が存在しない。


「眩しいな…。」


そう呟きながら、ネオンは夕日が照らす中を帰っていった。




―――――――


「結局今回も駄目だったな、あいつを騎士団に連れだそう作戦…。」


「昔から堅苦しい事に興味がないやつだ。まあ仕方ないんじゃないのか?」


所変わって、こちらはコリンとシリル。あのあと全力で騎士団の拠点に乗り込んだお陰で、なんとか入団手続きを済ませる事が出来たのだ。


「でもよ!考えてみろよシリル!あいつなら、もしかしたら騎士団の上の方まで上り詰めれるかも知れないんだぜ!あの才能をこのまま放置するなんて勿体ないぜ!」


昔からの友人だからと言うこともあるが、コリンがネオンをしつこく勧誘していたのはそのためだ。そこまで言えてしまうほどに、ネオンの戦闘センスはずば抜けていたのだ。


「………確かに、勿体ない気もする。でもな、あたしは、一番重要なのは本人の意思だと思っているんだ。ネオンにその気がないのなら、誘っても無駄だと思う。」


シリルの言葉に、コリンも押し黙るしかなかった。苦り切らない思いを抱えたまま、2人は帰路についた。

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