あ
天気は晴れ。澄み渡る快晴の空はじつにすがすがしい。
そのすがすがしさを堪能しながら長い坂道を自転車を転がしながら登っていく。
自宅から正味20分かかるこの通学路の約10分はこの坂道との戦いである。
事前に嫌々歩いたこの道もこれから3年間お世話になると思えば足腰に感じる
疲労も少し心地いい気がする。
いや嘘である。
そもそも家から一番近いという理由でこの学校を選んだ俺にそんな情緒など
初めから持ち合わせていないのである。
歴史を振り返れば人は便利な方へ、すなわちより楽な方へとその文明を発展させてきた。
いかに自分自身に負担を掛けないか―その命題に不断の努力を続けるこの俺こそ
人類の最終形態といっても過言ではない。最先端に立つ男それこそが俺こと○○○○である。
しかして今生の人生において初めての敗北ともいえるこの体たらく、全く自分が情けない。
地図上での直線距離を確認したのが中学2年生の3学期。それから第一志望はこの高校と決めていた。
偏差値に関しても親に言い訳が立つ程度の受験生風の姿を見せていれば十分に合格をねらえる範囲ではあったし、そこそこの大学にも進学できると聞いて他に高校という選択肢など当時の俺にはなかった。
公立天神学校―それが今日から通う高校の名前である。