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7:王城脱出

 まずは拳銃で室内の敵を一掃することに決めた。

 もちろん個人的な恨みはないが、いま殺さなければ殺される。拘束された時点で脱出する能力はないし、仲間もいなければ政治的後ろ盾もない。いまのところこの世界にいるのは敵だけだ。

 向かってくる兵士ふたりに2連射。ひとりは転がって突っ伏したまま動かなくなったが、もうひとりはコインと甲高い音がして胸甲に弾かれた。


「おふッ! おいマジか」


 胸甲に防御魔法でも掛かっていたのか、角度が悪かったのか、鉛の露出弾頭で貫通力が足りなかったのかは不明だが、この時点でM1911の残弾で解決する見込みは消えた。露出した顔面に撃ち込んで蹴り飛ばし、後続の兵士に銃口を向ける。

 露出部分を狙うか当てるのを優先するか。収納を行っている暇はない。鎧を剥いでも裸の兵士に拘束されたら俺はそこで終わりだ。

 近付いてくるのを幸い、銃弾を顔面に撃ち込む。さらにもうひとり。直近の4名は無力化。残弾2、となれば上階から駆け下りてくる3名への対処は無理だ。

 拳銃を収納してアサルトライフルに切り替える。その瞬間、ベチョリと不快な感触が手のひらに広がる。


「サイモンーッ!!」


 おそらくは保管用なのだろうが、AKMは機関部(レシーバー)も銃床などの木部もそこらじゅうグリスがベットベトで一部は固着しかけている。重たいボルトハンドルを引くと案外動作はスムーズだったのでひと安心といったところ。前端を引っ掛けるようにして湾曲した弾倉を差し込む。レシーバー側面の大きなセレクターレバーを下げて安全装置を解除、全自動射撃(フルオート)からさらに下げて単発射撃(セミオート)に切り替える。


 大口径の7.62ミリ弾は反動が大きすぎて、全自動だと周囲に弾丸をバラ撒く結果にしかならない。AKの実銃は初めて触る俺であればなおさらだ。そういう設計思想だと聞いてはいるが、装弾された弾倉がひとつだけの状況で無意味な弾幕を張る気はない。


 ドンっと重く強烈な発射音と反動。今度は射出エネルギーが4~5倍、弾頭重量も桁違いとあって弾丸は胸甲を軽く打ち抜き背後の兵士まで巻き込んで階段を削った。2名無力化で、あとひとり。しかし安堵するまもなく玄関ドアが開かれ、剣を構えた兵士3名が入ってくる。

 AKMの単射3発で彼らは転がったまま動かなくなる。アサルトライフルの残弾確保のため、階段上のひとりを拳銃の残弾2発で倒す。即死してはいないようだけど胸甲は抜けている。動けはしないし死ぬのも時間の問題だろう。

 増援が来ていないのを確認して、収納からAKの弾倉と7.62ミリ弾の箱を出す。バネが硬いのに苦労しながら装填し30発入った弾倉を4つ確保。

 行きがけの駄賃とばかりに兵士たちの甲冑と室内装飾品を根こそぎ奪う。


「これ……どう考えても俺って、危機を脱したヒーローじゃなく逃走するテロリストだよな」


 俺は溜息を吐いて、ドアから外へと移動を開始する。


 王城の正門は当然ながら衛兵がいる。出て行く商人や貴族の荷物に隠れるか。伝手もなければ知り合いもなく、コネクションも買収するカネもないとなれば脅すしかないが、銃の脅威が理解されないのなら従わせることは難しい。

 いまの俺に足りないのは知識と経験と仲間だ。わかってはいるが、手に入る当てはない。


 銃を使って正面突破でもいいんだけど、その場合はもう弾切れまで戦い続けるアクションムービーみたいな大活劇になる。そして多分、そこで死ぬ。

 剣と魔法の世界、てことは攻撃魔法もあるだろうし、それ以前に弓で矢を射られただけでも、いまの俺には防ぐ手段がない。


「……困ったな」


 お話の流れがテンプレ通りとするならば、序盤で孤児院か奴隷商に行って自分に従い慕ってくれるパーティメンバーを手に入れる流れじゃないのか? もしくは偶然の出会いか開花した才能で従魔を手に入れるか。

 でも、たぶん無理だ。おかしな武器で殺すこと、不思議な魔法で奪うことは可能だとしても、敬意や忠誠を得る種類の能力はない。


名前:タケフヨシアキ

職種:死の商人 テロリスト

階位:01

体力:22

魔力:11

攻撃:24

耐性:49

防御:54

俊敏:43

知力:69

紐帯:01

技能:

 鑑定:78

 転移:05

 収納:108

 市場:09


 新たな職種は無視。見た感じ、紐帯以外はふわっと微増。魔力も少し回復してきたようだし、物陰に隠れて移動しながら距離を測る。城門部分を抜けた先まで短距離転移。そこで魔力は尽きた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] AKMを手にして装填する場面でコッキングレバーを動かした後に安全装置を解除しているけど 実際は安全装置を解除した後じゃないとコッキングレバーは動かないと思いますよ^^ [一言] 気にな…
[良い点] 魔王ターキフが、時々ステータスを確認している描写が挿入されている。 [気になる点] 物語が進むとステータス確認はされなくなってくるが、書籍化されたならば、巻中で少なくとも一回若しくは、二回…
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