5:報いた一矢
俺が引き金を引くたびに、騎士たちはバタバタと弾かれたように転がる。まあ実際、弾かれたわけだが。
まずは、5発で5人。
銃弾はひとつずつ胸の中心に吸い込まれて、彼らの背中から血飛沫を吹き出しながら飛び去る。弾頭の種類までは確認していないが、被覆された通常弾でないことは明白だ。射出孔が酷過ぎる。体内で潰れて広がり致命傷を与えるタイプの弾丸だろう。こんな弾丸を装填した拳銃を持ち歩いている奴なんて、碌なもんじゃない。
「お前、その拳銃どこから」
「企業秘密だ。俺は、商人だからな。隠し玉は、まだまだあるぞ?」
勇者だか賢者だか細マッチョの問いに、俺は笑顔でハッタリをかます。
頭のなかでは、残り2発をどいつにどう撃ち込むかで迷っていた。どいつも無傷で残すと厄介だ。ポケットに入った弾丸を追加で装填する間があればいいんだけど。
無理だろな。
「王族や勇者に銃を向けるなんて、そんなことが許されるとでも……」
「思ってるよ。始めたのはそっちだ。俺を生きて帰さないっていうなら、殺し合いだろうが。なあ、逆に訊くけど。お前、この状況が殺し合い以外のなんだと思ってたんだ?」
死角から踏み込んできたゴリマッチョの胸元に銃弾を撃ち込む。
格闘技のガードなのか両腕を交差して、突っ込んできた巨体は前のめりに倒れる。弾丸は背中側に抜けていない。透明な壁に弾かれたような妙な感触があった。とどめを刺すかどうか迷ったが、俺は銃口を細マッチョに向けた。イケメンな顔が恐怖と屈辱に歪む。
「死ね!」
後方に逃れようとする相手の動きは無視して、そのまま銃口を振って最後の1発を魔導師に撃ち込む。
魔法で何か勇者たちを守る防壁を組もうとしていたのか、魔導師は意外そうな顔で棒立ちになる。彼の額に当たった弾丸は後頭部を吹き飛ばして背後の王族たちに脳漿をぶちまけていた。一度にふたつの魔法発動が出来ないのか単なる優先順位か、自分を守る手段は用意していなかったようだ。
全弾撃ち尽くした拳銃は、スライドが下がったホールドオープン状態。日本の一般人が見て弾切れに気付く可能性は低いが、念のため収納しておく。
「ひゃああああぁ……!!」
悲鳴と怒号を無視して俺は部屋の外へと走り出す。生きて出られるかどうかは、五分といったところ。ということはつまり、危機的状況からは大きく一歩前進ということだ。