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【完結&書籍化】スキル『市場』で異世界から繋がったのは地球のブラックマーケットでした  作者: 石和¥
8:帰るべき場所

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410/422

410:迷走パーリー

……まずい、八月中に終わらん……

 翌朝から始まった話し合いは、昼過ぎまで続いた。

「……ここ、何気にエルフ率が高いな」

「好んで政治に関わるのは、たいがい人間かエルフじゃからのう」

 会議場の大テーブルを囲んで、並んでいるのはエファンの代表が四名。皇国では亜人迫害があったせいか、みな人間の中年男性だ。対する共和国は理事として魔女エクラさんと元南領主のマッキン氏、商業ギルドを牛耳る重鎮ローリンゲン氏と、有事の対応を協議するため“機動衛兵隊”のファーナス隊長。共和国の港町キャスマイアの衛兵隊副長さんだったが、中央に栄転され現在は精鋭警備部隊の長を務める。

 オブザーバーとして先代理事のイリダフ翁、王国の外交担当執政官としてエルケル侯爵、そして魔王領ケースマイアンの代表として俺とミルリルだ。

「奇しくも……か意図的か知らんが、みんな俺と面識あるひとたちばっかりだな」

「どう見ても紐帯(なかよし)を狙った人選じゃ。大方、あのメルローいうやつの差し金じゃな」

 ケル・メルロー。共和国の評議会理事長、若いのに政治家としての手腕は一流だ。正直あんまり親しくなりたくないタイプではある。

 あれこれ交渉を優位に進めたい“商人”や“政治家”たちとは違い、俺たちふたりは、いまひとつ他人事というか利害関係にあまり関心がないせいで気が散りがちだった。

ケースマイアン(わらわたち)は、港が使えればそれで良いんじゃがのう」

「そうね。ぶっちゃけ浜だけでも良いくらいだ」

 始めのうち、議題は俺たちが皇国軍から――成り行き上ではあるが――解放した港町エファンの今後について、だったのだが。中途半端に長引いたのは紛糾したとかではなく、単に脱線しまくりで本題を見失っていただけなのだ。

「ケースマイアンに移住できる人数に制限はあるんでしょうか」

「特にないのう。大人数となれば用意に時間は掛かるので、事前に申請でもしてくれたら対応できるはずじゃ」

「おお……では、商用や短期滞在では」

「往来や宿泊は自由じゃ。それは構わんが、最短距離で“暗黒の森”を越えるにせよ共和国の西部から“狭間の荒野”を越えるにせよ、陸路で三百(ミレ)以上あるが、おぬしらどう移動するつもりじゃ?」

「え? それは、魔法陣で行けるのでは?」

 イマイチ噛み合わないミルリルとエファン代表の会話にエクラさんが口を挟む。それもまた本来の立場だけでいえば妙な話なのだが。

「いや、ちょっと待ちな。転送魔法陣は設置するがね。スールーズの村がある辺りにだよ。住人の自由な往来は考えてないよ」

「「「そんな」」」

「行き来する人間を限定しなけりゃ、双方とも安全が確保できないんだよ。それに、もし使用許可を出したとして、魔法陣の消費魔力を誰が支えるんだい?」

「……それは、そうですが」

「いずれケースマイアンの側で、道と移動手段を整備する予定なので、しばらく待ってください」

 俺の提案で、エファンの代表は不承不承、納得したようだ。

「さすがに引き際は心得ておるようじゃな」

「飛行船に乗せろとか、ケースマイアンとの航空航路を開けとかいってくるかと思ったんだけどな。もしかして、誰も見てないとか?」

「そんなわけなかろう。最初にファーナス殿から釘差しがあったからじゃ」

 くぎ? なんだっけ?

「なんじゃヨシュア、覚えとらんのか。“戦時下では、軍事協定が商業協定に優先する。こちらの項目については交渉除外だ”みたいなことを、いうておったじゃろうが」

 共和国と王国、ケースマイアンの軍事協定。うん、どっかで結んだ気もする。事前協議の合意だけだったっけ。

「除外項目に飛行船が入ってたの?」

「入っとらん方がおかしかろう。前にエクラ殿がいうた通り、あれは戦略的優位を形にしたようなものじゃ。呆れるほど無防備なリンコたちとて、さすがに他国の者を乗せてはおらんぞ」

「そうね。あんま自覚なかったけど」

 こそっと囁き合っていると、意見がまとまったらしくエクラさんが俺とミルリルに確認してきた。

「では、魔王陛下。エファンはケースマイアンの飛び地という扱いで領土編入、で問題ないかい?」

「はい、こちらは構いません」

 最大の争点は、意外なことに旗印だった。どこの国の領土になるか。気にしていないと聞いていた俺には想定外だったのだが……

「どこの統治下に入るかで利害が大きく変わるとなれば当然じゃな」

「え」

「たとえば、皇国の旗を立てよといわれた時点で街の未来は潰えたも同然じゃ。もう実体がないので有り得ん喩えじゃがの」

「共和国の統治でも問題はないと思うけど」

「経緯を考えれば順当かもしれんがの。いまの共和国では管理に割けるカネも人材も関心もなかろう。そんなものがあれば皇国に占領されたままにしておらん」

「……まあ、そうね」

 そもそもの話でいえば、俺たちが引っ掻き回すより前、共和国の戦力と政治力が万全のときですら、長年奪還せず放置されていたのだ。その状況を見るだけで、優先順位(プライオリティ)の低さは一目瞭然である。

「さて、これで体裁は整ったじゃろ。宴の用意じゃ」

 そう。俺たちはスールーズの村に戻って、パーティーの準備をするのだ。ケースマイアンとの転移魔法陣開通を祝い、友好関係樹立を祝い……


 そして、ミードを送るための。

「ご愛読ありがとうございました! 石和¥先生の次回作にご期待ください!」

……的な感じで新作を紹介する予定だったんですが、もうチョイ続きます。


とはいえ、新作は明日(9月1日)正午スタート!

「マグナム・ブラッドバス ――ガールズ&リボルバー――」

https://ncode.syosetu.com/n5356fp/


ご期待ください!

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